自動車を製造する技術は年々上がっており、塗装技術も例に漏れず進化・改善を続けています。しかし、よく見たら新車にも関わらずボディとバンパーの色が若干違うことに気が付いた方もいるのではないでしょうか。
上の写真は特に色がズレやすい「パールホワイト」で、車両前方左側のボディ(画面右)とバンパー(画面左)の境目の写真。若干ボディの方が青みがかかっているのがお分かりでしょうか?
また、バンパーやボディを何らかの理由で再塗装した際も、色ズレが発生しがちです。
この記事では、なぜボディとバンパーの色がズレてしまうのか、ズレやすい色、そして出来るだけ色を揃える再塗装の手法も解説していきます。
新車でもボディとバンパーの色がズレる理由
新車にも関わらず色ズレが発生する理由は、自動車の塗装方法にあります。
自動車のボディは金属で、バンパーは樹脂でできており、それぞれ違う塗料を使って塗装しています。2種類の塗料を全く同じ色にすることは不可能なので多少なり差が出てしまうというのが、ボディとバンパーの色がズレる原因です。
ここで、もう少し詳しく、ボディとバンパーの塗装方法の違いから色ズレを見ていきましょう。
メーカーのボディ塗装方法
メーカーでのボディの基本的な塗装方法は以下のステップです。
- 1. 電着塗装
- 2. シーラー塗布
- 3. 本塗装
- 4. 塗装検査
電着塗装はボディのサビを防ぐ目的で、その名の通り電気の力を借りて塗装する方法です。
出典:公益社団法人 自動車技術会
具体的には画像のように、プラスに帯電した電着液プールの中に、マイナスに帯電した自動車のボディを沈めて、磁石のように塗料をくっつけるという塗装方法。
電着塗装は塗装対象が帯電可能であることが条件なので、樹脂を使っているバンパーには不向き。なので、バンパーには樹脂用の違う塗料を使う必要があるのです。
2番目のシーラー塗装でボディの微細な隙間をなくして水やホコリのボディ内への侵入を防ぎます。
3番目の本塗装で、塗料を何重かに重ねて塗り見た目を整えます。
最後、4番目の塗装検査で色ムラなどを修正していきます。
メーカーのバンパー塗装方法
続いて、バンパーの基本的な塗装方法を紹介していきます。
- 1. 下塗り(プライマー)
- 2. 本塗装
- 3. 塗装検査
バンパーは樹脂部品なので、ボディのように帯電させて塗料をくっつける手法が使えません。なので、樹脂と塗料の仲介役となるプライマーを塗り両者を密着させます。
2番目, 3番目の本塗装と塗装検査はボディと同じ要領です。出荷できる状態になるまで外観を整えていきます。
ボディーとバンパーでズレが発生しやすい色
続いて、色ズレが発生しやすい色を紹介していきます。
自動車の塗料には以下のような3種類あります。
- ソリッド系(黄色などの単色)
- メタリック系(アルミが配合されているため輝く)
- パール系(雲母配合塗料で輝く。有料色に指定されている)
ズレやすい色はメタリックとパールで、その理由は塗料の成分であるアルミや雲母にあります。
アルミや雲母の向きや量、深度(塗料表面から何μmにあるか)などで光の反射具合が変わるので、色ズレなどの塗装不良が起こりやすいです。
出典:日本塗装機械工業会
例えば、上の画像は「アルミ浮き」という塗装不良で、メタリック層にあるべきアルミ粒子がクリアー層にはみ出ています。
塗料の希釈が不足していたり、被塗物の温度が高すぎることなどが原因です。アルミ浮きが起こると色が明るすぎたり、表面がザラつくといった不良が起こります。
メーカーは、塗装ロボットの塗料噴出量・角度・強度を始め塗料の乾燥温度や時間など、細かなパラメータを操作して望む色を出しています。わずかなパラメータ変化で色が変わるため、塗装は安定しないというわけです。
また、ソリッドでも例外として、赤色は日光によって退色しやすい色です。ボディとバンパーの退色度合いが異なり、顕著な色ズレが発生することも。
赤色は日光のエネルギーを吸収しやすいので、色を構成する分子を破壊されやすいのがその理由。ただ、最近の塗装技術の発展により、赤色でも退色がかなり抑えられているため、気にする必要はないかもしれません。
中古車を買う際にだけ、赤は退色しやすいと頭の片隅に置いておいてください。
再塗装時に出来るだけ色ズレを抑える方法
車を再塗装する状況で一番多いのは、ボディやバンパーを擦ってしまったときでしょう。
再塗装の手段はディーラー、板金塗装屋、DIYの3種類があリますが、色ズレを最も抑えられる方法はどれでしょうか?
全て色がズレる可能性がありますが、DIYよりディーラーや塗装工場に依頼しプロに塗装してもらう方が色ズレを抑えられるでしょう。
それぞれの一長一短なポイントを解説していきます。
ディーラーや板金塗装屋の塗装方法
ディーラーや板金屋に再塗装を依頼すると、できるだけ同じ色の塗料を使い塗装してくれます。
塗料は吹き付ける量や角度などによって色が変わってしまいますが、プロの手によって最適に修正してくれるでしょう。
ただ、どうしてもDIYより高価になってしまうことに注意してください。
DIYの塗装方法
DIYではホームセンターなどで買ってきた塗料を使うことになります。
同じ色の塗料が手に入るとは限らず、そして塗装者の技術も劣ることが多いので色合わせは非常に難しいです。
圧倒的に安く仕上げられるのはうれしいですが、目立たない箇所の局所的な塗装にとどめておくのが無難でしょう。
まとめ
自動車のボディとバンパーの色ズレについて、塗装方法から解説しました。
色をぴったりと合わせることは不可能なので諦めるしかありませんが、できるだけ合わせたいと思うのが普通ですよね。
再塗装する場合は、複数の業者から見積もりを取って、お値段と相談しながら塗装方法を選択してください!