その時代の変化は、自動車の塗装関係にも確実に影響を及ぼしています。
今回の記事は、現在の自動車塗装が抱える問題点と、今後どう変わっていくかをまとめました。
近年、自動車を取り巻く環境は大幅に変わってきています。
例えば電気自動車。
数十年前は未来の乗り物でしたが、今となっては街中を普通に走っています。
オランダやノルウェーといった諸外国では、ガソリン車を完全に撤廃するなんて動きもありますね。
ぜひ、最後までご覧になってください。
現在の自動車塗装が抱える問題点
自動車塗装が抱える問題点としては、例えば以下の3つが挙げられます。
- 塗装工程における有害ガスの発生
- 高い製造コスト
- 作業の一般化の難しさ
それぞれ、解説していきます。
塗装工程における有害ガスの発生
一般的に、自動車の塗装は以下の工程を踏みます。
- 1.下塗り
- 2.焼き付け
- 3.中塗り
- 4.焼き付け
- 5.上塗り
- 6.焼き付け
- 7.仕上げ
このように、塗装は三層からできており、塗料を塗るたびに高温での焼き付けを行ない、塗料を乾かしています。
高温で焼き付けをするためには、それだけ多くのエネルギーが必要で、二酸化炭素の排出量も比例して大きくなります。
現在のエコな流れには逆行していることが分かるでしょう。
そして、塗料はVOC(希釈性有機化合物)、つまりシンナーを使って希釈するため、光化学スモッグの原因になったり大気汚染も引き起こします。
出典:環境省
このように、VOC排出量の半分以上は塗料に由来しています。
自動車のみならず、塗装は環境に優しい技法とは決して言えません。
高い製造コスト
塗装は、自動車を丸ごと沈める塗料プール、吹き付けをするためのロボット、焼き付けるための乾燥ブースなど、製造のために必要なコストが高いです。
例えば、各自動車メーカーに数万円高価な特別色が設定してあるのをご存知でしょうか?
あの色は、通常1回の上塗りを複数回行なって色に深みを持たせているのです。
上塗り回数を数回増やすだけで、数万円の上乗せ。塗装コストが高いことが分かりますね。
作業の一般化の難しさ
自動車塗装はドアなど大きな部分はロボットで塗りますが、車内の細かな部分などロボットが入れない狭い場所は人力で塗ります。
塗装は難易度が高く、熟練の作業者ではないとムラができたりして品質が落ちてしまいます。
マニュアルを見て今からやりましょう!とすぐにできる作業ではないことも、塗装のネックのひとつ。
技術の習得に時間がかかります。
自動車塗装の今後
自動車塗装について、今後は以下のような流れになっていくでしょう。
- 塗料および有機溶剤使用量の低減
- 色付きバンパーの使用
- フィルムによるラッピングの活用
それぞれ、解説していきます。
塗料および有機溶剤使用量の低減
環境保護のために、塗料自体と有機溶剤の使用量を少なくしていく流れになっています。
例えば、マツダの3ウェットオン塗装という塗装技術。
中塗りの機能を上塗りに集約することで、中塗りレスを実現するという技術です。
出典:公益社団法人 発明協会
中塗りがないということは、上の画像のように、従来3回あった焼き付けを2回に減らせます。
そして、使用する塗料は水性塗料。
有機溶剤ではなく水で希釈をする塗料であるためシンナーの使用も少ないので、環境に優しい技術です。
色付きバンパーの使用
樹脂部品は、色付きのもの使うことで塗装レスを実現しています。
例えば、スズキのハスラーのバンパーは無塗装です。
塗装レスにすることで、単純に塗装の手間がなくなるためコストも削減できますし、有害物質の発生も抑制できます。
そして、外板に使われている金属パーツの樹脂化も進んでいます。
外板の樹脂化が最も進んでいるメーカーは、ダイハツでしょう。
コペンのドア以外の外板は全て樹脂製。
今は樹脂に塗装をしていますが、今後は色付きの樹脂や下に紹介するラッピングを使う可能性もあるかと思います。
フィルムによるラッピングの活用
自動車の塗装をやめて、フィルムによるラッピングにしてしまおうという流れもあります。
現状、自動車へのラッピングは、アニメキャラを絵柄にする痛車を作ったり、バスなどへの広告を貼り付けたり、あくまで一時的な装飾になっています。
しかし、ラッピングは塗料を使った従来の塗装よりもコストが安く済む、大気に有害な物質を放出しないなどといった理由により、研究が進められている分野です。
出典:日本経済新聞
上の写真のように、凹凸のある面にもぴったりとラッピングできます。
フィルム自体の耐候性や耐チッピング性など問題はありますが、今後は台頭してくる技術かもしれません。
まとめ
自動車の塗装の現状の問題点と今後についてお話ししてきました。
自動車の変革といえば、ガソリン車が電気自動車になるなど、分かりやすい変化ばかりが取り上げられがちです。
しかし、塗装のように自動車としての性能には影響を及ぼさない、サブ的な分野の発達もめまぐるしいものがあります。
今後の世の中と自動車業界の動向は、私たちの生活に密に関わる、注目せざるをえない事柄と言えるでしょう。