みなさまは、黒以外の色をしたタイヤをはいた車を見たことがありますか。改めて考えると、赤や白、青のタイヤを見たことがないとハッとする方も多いはずです。
かつては車用のカラータイヤもありましたが、2024年3月現在で一般販売されている大部分のタイヤが真っ黒です。タイヤの性能を向上させるために、黒い成分をゴムに混ぜる必要があるためです。
本記事では、車のタイヤがなぜ黒いのかの詳細をタイヤの歴史を交えながら解説します。
車のタイヤが黒いのはなぜ?
車のタイヤがなぜ黒いのか、カラータイヤがあまり存在しない理由、タイヤの歴史を解説します。
車のタイヤが黒い理由
車のタイヤが黒い理由は、主成分であるゴムに「カーボンブラック」が添加されているためです。
カーボンブラックはとても細かい炭素の粒子で、その名の通り非常に黒い色をしています。プリンターのトナーやマスカラにも、着色剤として使われます。
タイヤにカーボンブラックを混ぜる理由は、以下の性能を向上させるためです。
- 耐久性、耐摩耗性
- 熱伝導性
- UV(紫外線)耐性
これらが向上するとどううれしいのかの詳細は後述しますが、タイヤの性能をアップさせるためにタイヤは黒である必要があるのです。
カラータイヤがあまり存在しない理由
カラータイヤは、黒いタイヤに比べて以下の性能が劣るためあまり存在していません。
- 耐久性に優れない
- 製造コストが高い
- 市場の需要が少ない
カラータイヤは黒色を付けられないので、カーボンブラックは添加できません。そのため、どうしても耐久性や耐摩耗性などの性能が劣ります。
近年ではカーボンブラックの代わりに白いシリカを含めて強化する製法も研究されていますが、シリカ添加はカーボン添加より製造が難しくコストがかさむことが現実です。
また、タイヤは黒いもの、というイメージがあるため、高いコストでカラータイヤを製造しても市場で売れるかは疑問が残ります。
ただ、現在販売されているほぼすべてのタイヤは上記の理由で黒色ですが、かつてはカラータイヤは存在していました。
タイヤの着色方法は「着色したシリカを添付してゴム自体に色を付ける」「タイヤに塗料を塗り表面だけ色を付ける」の2パターンあります。
タイヤメーカー最大手のブリヂストンが後者の方法で2013年にカラータイヤを販売しましたが、2015年に販売停止。2024年3月現在でも再登場はしていません。
1912年以前の車のタイヤは白だった
1912年以前のタイヤの色は白でした。その理由は、ゴム本来の色は白いためです。
1920年代にタイヤの性能強化のためゴムにカーボンブラックを混ぜることが提案され、普及していきました。
ただ、白がまったくなくなったわけではありません。1960年代~1980年代くらいには「リボンタイヤ」という側面に白のラインが入ったタイヤをファッション性を求めて取り入れるユーザーが数多くいました。
ただ、年月が過ぎより高い性能のタイヤを求めリボンタイヤの需要は一部のファンに限定されるようになり、今は黒いタイヤばかりになったという経緯があります。
車のタイヤに使用されるカーボンブラックとは?
カーボンブラックの役割、代替になりえるシリカについて解説します。
カーボンブラックの役割
カーボンブラックはゴム粒子とゴム粒子をつなぐ役割があります。
ゴムはミクロな視点で見ると、網目のような構造をしており伸縮性があります。一方、カーボンブラックはいくつかの炭素の粒が連なった構造をしており伸びることはありません。
網目のようなゴムの隙間にカーボンブラックの塊が入り込むと、ゴムの伸びが制限されるので、硬さが向上します。
このように、カーボンブラックはゴムの性質を変化させる役割があります。
カーボンブラックに変わるシリカとは?
タイヤの強化のために添加される成分として、カーボンブラックだけででなくシリカも挙げられます。
シリカはケイ素と酸素からなる透明な化合物です。シリカを添加したタイヤは、カーボンブラック添加のものよりも低燃費であるといわれています。色が透明なので、着色することも可能です。
ただ、ゴムとシリカは化学的に直接結びつかないので、高度な技術を用いてシランカップリング材という添加物を加える必要があります。そのため、コスト面でカーボンブラックに劣る可能性があります。
車のタイヤにおけるカーボンブラックとシリカのメリット・デメリット
カーボンブラックまたはシリカを添加したゴムを車のタイヤに使うメリット・デメリットを解説します。
カーボンブラックのメリット・デメリット
改めての説明になりますが、ゴムにカーボンブラックを混ぜると、たとえば以下の性能が向上します。
- 耐久性、耐摩耗性
- 熱伝導性
- UV(紫外線)耐性
カーボンブラックはゴムをより強固に、つまり耐久性と耐摩耗性がアップさせます。カーボンブラックのおかげで、走行中の激しい衝撃や擦れに強い丈夫なゴムが出来上がるということです。
また、タイヤは地面との摩擦で非常に高温になります。屋外で使うため多くの時間を紫外線にさらされます。カーボンブラックを混ぜたタイヤは、これらふたつへの耐性も強化されます。
ただ、カーボンブラックをタイヤに入れると、黒色以外の色で製造できないのはデメリットといえるでしょう。
シリカのメリット・デメリット
シリカを添加するメリットは以下の通りです。
- 転がり抵抗が小さい
- カラータイヤが作れる
転がり抵抗は、円筒状のものが転がるときに進行方向とは逆方向に働く抵抗力のこと。転がり抵抗が大きいと燃費が悪くなります。
シリカを混合したタイヤはカーボンブラックのものより転がり抵抗が小さいため、燃費がよいエコなタイヤといえます。
また、シリカは透明なため色を付けられるのもメリットです。
しかし、シリカはゴムに混ぜるのがカーボンブラックより難しく高度な技術が必要なため、製造コストがかさみます。耐摩擦性が劣ることも、ユーザーのコスト面でデメリットです。
まとめ
タイヤが黒いのはなぜなのか、昔のタイヤは白かったことを解説しました。
ゴムの色はもともと白く、昔はタイヤも白でした。しかし、1920年代くらいから性能アップの目的でタイヤにカーボンブラックを添加することが提案され、それ以来はカーボンの黒色がついたタイヤがスタンダードになりました。
現代では、添加物はカーボンブラックだけでなくシリカも使われています。シリカ入りタイヤはカーボンブラック添加のものより低燃費でエコだといわれています。
タイヤも年を経るごとに進化しています。カラータイヤが主流になる将来も、もしかしたら到来するかもしれません。
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