みなさまは交通事故の過失割合を詳しくご存じでしょうか。過失割合は、損害賠償額を左右する非常に重要なものです。
本記事では、交通事故の過失割合の概要、決定方法を解説します。
過失割合に関するよくある質問にも回答するので、いざ交通事故に遭ったときに備えて、本記事の内容を覚えておいてください。
交通事故の過失割合ってなに?
交通事故の過失割合の概要、示談交渉との関係性、過失相殺について解説します。
交通事故の過失割合とは?
交通事故の過失割合とは、事故の当事者それぞれの責任がどのくらいあるかを数値で示したものです。
たとえば、相手が7割、自分が3割というように割合で表されます。
損害賠償額は、過失割合に応じて決定され、相手と自分が分担して負担します。
過失割合は、自分が受け取る額、支払う額に直接影響する重要なものです。
示談交渉との関係性
示談交渉の主な目的のひとつは過失割合の変更です。
過失割合に応じて損害賠償額が決まるため、お互いに少しでも有利になるよう交渉が進められます。
過失相殺とは?
当事者双方に過失があった場合、加害者がすべての損害賠償を負担するのは公平ではありません。
加害者に対する損害賠償請求額から、被害者の過失の割合に応じた額を差し引くことを「過失相殺」といいます。
たとえば、過失割合が被害者1割、加害者9割で、被害者の損害が100万円、加害者の損害が10万円だとします。
被害者は1割の過失があるため、被害者の損害額100万円の1割を差し引いた90万円を請求できる一方で、加害者の損害額10万円の1割である1万円を支払わなければなりません。
最終的には、以下の額を加害者が支払います。
被害者への元の賠償:90万円(100万円から1割を差し引いた額)
加害者への元の賠償:1万円(10万円の1割の額)
最終的な賠償責任支払額:89万円(90万円 – 1万円)
交通事故の過失割合の決まり方とは?
交通事故の過失割合はどのように決まるのか解説します。
交通事故の過失割合を決めるのは当事者同士
交通事故の過失割合を決めるのは、当事者同士です。
事故の発生連絡により警察が現場に来て、現場検証、状況の聞き取り確認などがされますが、警察は過失割合の決定には関わりません。
当事者双方が加入している保険会社が、事故の調査、協議を代行して過失割合を決定するのが一般的です。
過失割合が10割対0割だと思われる場合、被害者側の保険会社は介入できません。弁護士法の非弁行為に当たるためです。
被害者本人と相手側の保険会社とで協議し、過失割合を決定します。
当事者双方に過失があると判断される場合でも、一方または両者が保険に加入していなかったとき、当事者本人同士、もしくは当事者と保険会社で話し合います。
自身で交渉するのが不安ならば、弁護士に依頼して交渉してもらうことも可能です。
自動車保険の弁護士費用特約に加入していれば、弁護士を雇う費用が補填されます。
協議が難航した場合、最終的には調停や裁判で過失割合が決定されます。
交通事故の過失割合が決定するまでの流れ
以下の流れで交通事故の過失割合が決まります。
- 1. 事故状況の確認
- 2. 過去の判例や専門書籍の参照
- 3. 双方の話し合い
- 4. 過失割合の確定
警察の資料、車の損害状況、双方の証言、当事者が撮影した現場写真などを基に、事故の状況を確認します。
ドライブレコーダーの映像のような客観的な証拠があるとスムーズに話し合いが進みます。
次に、過去の判例や法律の専門書籍などの資料を参照し、当該事故の類型を確認します。
該当する類型が見つかったら、その類型の過失割合を出します。
最後に、該当する類型の過失割合を基に、双方が話し合って過失割合を修正します。
修正した過失割合に双方の合意が得られれば、過失割合が確定し、一連の流れが終了です。
交通事故の過失割合でよくある質問
交通事故の過失割合に関するよくある質問に回答します。
交通事故証明書で過失割合の確認はできる?
交通事故証明書には、交通事故が発生した日時、場所、当事者などの情報が記載されていますが、過失割合は記載されていません。
過失割合を決定するための材料として用いられます。
各都道府県にある交通安全運転センターで発行できます。
一般的に、加入している自動車保険会社が取得するので、自分で取得する必要はありません。
少しでも動いていたら過失有りになるって本当?
被害者が動いていても、過失有りになるとは限りません。
加害者の赤信号の無視やセンターラインの逸脱による事故で、被害者の車が動いていても、被害者の過失がゼロとなった判例があります。
交通事故の過失割合に納得がいかない場合はどうする?
交通事故の過失割合に納得がいかない場合、いくつかの手段があります。
まずは、過失割合の変更のために示談交渉をしましょう。
示談交渉に費用はかかりませんが、相手が納得する証拠を提出したり、説明をしたりしなければなりません。
損害賠償の交渉の約90%は、示談で済むといわれています。
示談交渉では合意を得られなかった場合、ADR機関を利用できます。
ADRとは、裁判外紛争解決(Alternative Dispute Resolution)の略で、裁判をせずにトラブルを解決する方法の総称です。
ADR機関は、日弁連交通事故相談センターや交通事故紛争処理センターといった、紛争解決のサポートをしてくれる機関です。
ADR機関の利用は、安価もしくは無料ですが、あくまでも中立なので、自分に有利な交渉をしてくれるわけではありません。
他にも、裁判所が第三者として介入し、トラブルの解決を図る調停も利用可能です。
裁判官と調停委員によって組織された調停委員会が、当事者に事情聴取し、調停案を作成します。
調停案に当事者双方が合意すれば、過失割合が決定します。
調停の申し立てに費用がかかること、当事者双方の合意が必要であることがデメリットです。
過失割合の交渉がどうしてもまとまらない場合、最後の手段が裁判です。
裁判官の判決によって過失割合が決定されます。
多くの費用と時間がかかること、納得のいかない判決が出るケースもあることを念頭に置いて、裁判をする必要があります。
まとめ
交通事故の過失割合の概要、決定方法、過失割合に関するよくある質問を解説しました。
過失割合とは、事故の当事者それぞれの責任がどのくらいあるかを割合の数値で示したもので、損害賠償額を決める重要な要素です。
提示された過失割合に不服がある場合は、示談交渉や調停、裁判などが実施されます。
本記事の内容を頭の片隅に置いておいて、いざ交通事故に遭ったときに、納得できる損害賠償額を得られるよう適切に対処しましょう。