車はとても複雑な機構を持っており、多くのパーツが噛み合って走る・曲がる・止まるという基本的な動きを実現しています。
トランスミッション(変速機)も車の複雑なパーツのひとつで、それを摩擦や高負荷から守るために使われるオイルがミッションオイルです。
車を使ううちに汚れていく消耗品であり、MT車本来の性能を保つためには定期的な交換が必要です。
今回はミッションオイルの基本情報とほかのオイルとの違い、交換方法を解説します。
最近、変速時にガタつきを感じるなと思う方はぜひミッションオイルの交換も検討してみてください。
ミッションオイルとは?
ミッションオイルとは何か、その役割と種類、粘度の観点から解説します。
ミッションオイルの役割
ミッションオイルの主な役割はMT車のギアチェンジをスムーズにすることです。
トランスミッション内では複数のギア(歯車)が複雑に絡み合っており、それぞれに大きな負荷がかかっています。
ギアを切り替えるときに摩擦があると、ギアチェンジするときにその摩擦に負けないだけの力を加える必要があり非常に苦労します。
そこでトランスミッションに注入されたミッションオイルが負荷と摩擦を低減し、ギアの保護とギアチェンジの快適性アップに一躍を買っているということです。
また、ミッションオイルには防錆材が添加されており錆の防止にも役立っています。
ミッションオイルの種類
ミッションオイルはAPI(米国石油協会)によってGL規格(Gear Lubricant:ギア用潤滑油)という規格が定められています。
GL規格は大きく以下の6つに分けられ、数字が上がるほど極厚剤(焼付き防止のための添加物)の量が増え、用途も異なります。
- API GL-1:軽負荷用。車では使われない。
- API GL-2:中程度の負荷用。車では使われない。
- API GL-3:少々過酷な条件用。車ではほぼ使われない。
- API GL-4:過酷な条件用。車で使うこともある。
- API GL-5:とても過酷な条件用。車で一般的に使われる。
- API GL-6:5より過酷な条件用。車ではほぼ使われない。
車ではGL-4またはGL-5が使われますが、最近の車の多くがGL-5です。
なおGL-4が指定されている車にGL-5を入れるような「大は小を兼ねる」ことはありません。
推奨されるグレードのオイルを使うこととされています。
ミッションオイルの粘度
ミッションオイルの粘度は「75W-90」のように示され、前の数字が低温時、後ろの数字が高温時の粘度規格です。
ちなみに、WはwinterのWなので低温時だとわかりやすいかと思います。
こちらも車ごとに推奨の範囲があるため、それに準じたものを使ってください。
ミッションオイルと他オイルの違いとは?
続いて、ミッションオイルと以下のオイルの違いを紹介します。
- エンジンオイルとの違い
- デフオイルとの違い
- クラッチオイルとの違い
- ギアオイルとの違い
エンジンオイルはエンジン内部に封入されるオイルのことです。
エンジンのクランクシャフトやピストンを保護するためのもので、守るものが異なるだけでミッションオイルと同じような働きをしています。
ただ、ミッションオイルのほうが大量の極厚剤が入って高負荷に耐えられるなど、成分が異なります。
デフオイルはディファレンシャルギア(通称デフ)を保護するために使われるオイルです。
デフはトランスミッションから伝わる動力を車輪を回転させる力に変えるためのパーツです。
FF車はミッションオイルとデフオイルが同じで、FR車は異なる場合が多いです。
ただ、車種によってはこれに当てはまらない場合もあることに注意してください。
クラッチオイルはクラッチで発生した油圧をミッションに伝える役割なので、ミッションオイルとは全く異なります。
クラッチオイルは「クラッチフルード」と呼ばれます。
フルードは作動液のことで、オイルである必要もありません。
事実、クラッチオイルはアルコールを主成分としたグリコール。クラッチオイルというのはあくまで俗称なのです。
ミッションオイルとギアオイルは同じものです。
ミッションオイルと呼ぶ人もギアオイルと呼ぶ人もいるくらいの違いで、モノに違いはありません。
ミッションオイルの交換について
ミッションオイルの交換について、頻度、費用、方法を解説します。
ミッションオイルの交換頻度
ミッションオイルは一般的に2~3万km走行したら交換時期だといわれています
ただ、これはあくまで目安なので、期間や状況によっても異なります。
走行距離が2~3万kmに満たなくても、ミッションオイルを入れてから2年経過したら交換を検討してください。
また、悪路や坂道、ストップアンドゴーが多い環境など車の負担が大きい状況(シビアコンディション)ならもっと交換頻度は高まります。
さらに新車だと慣らし運転が必要で、最初の1,000kmでミッションオイルの交換が推奨されています。
このように、車ごとに走っている環境が異なるため交換時期を一概に定めることは困難です。
走行距離が少なくてもギアチェンジがぎこちなくなってきたと感じたら交換を検討してもよいでしょう。
ミッションオイルの交換費用
ミッションオイルの交換はディーラーやカー用品店でも、DIYでもできます。
場所によってはガソリンスタンドでも受け付けてくれます。
- 業者に頼む場合:5,000円程度から
- DIY:3,000円程度から
ミッションオイルの交換方法
ミッションオイルの交換はディーラー、カー用品店、整備工場、一部のガソリンスタンドで依頼できます。
馴染みのお店やお近くのお店やに問い合わせてみてください。
自分でやる場合は以下の手順で交換できます。
- 1. 車をジャッキアップし、ウマなどで固定する
- 2. トランスミッションケースのフィラーボルトを開ける
- 3. ドレンボルトを開けて古いオイルを出す
- 4. ドレンボルトを閉める
- 5. サクションガンを使いフィラーから新しいオイルを入れる
- 6. フィラープラグを閉める
- 7. ジャッキを下す
フィラーはオイルを入れる口のことで、サクションガンは狭い場所にもオイルを入れられる専用の道具です。
道具がそろっていないと初期投資が必要なため、業者に頼むより高額になることに気を付けてください。
まとめ
ミッションオイルの基本情報からほかのオイルとの違い、交換頻度や費用について解説しました。
ミッションオイルはトランスミッションを滑らかにしたり保護したりするためのオイルで、高負荷に耐えられるよう他のオイルとは成分が異なります。
交換自体は難しくありませんが、道具をそろえるのに初期投資がかかるため、業者に頼むのもよい選択でしょう。
ギアチェンジがぎこちなくかんじてきた方は、ぜひミッションオイルの交換を検討してみてください。
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