車はスピードに合わせてギアを切り替えながら走行します。
そのギアを切り替えることをシフトといい、ドライバーがシフトを切り替えるためのレバーをシフトレバーといいます。
ただ、シフトレバーのことを単にシフトと呼ぶことも一般的になっています。
車には必ず付いているシフトですが、5種類あることをご存じでしょうか?
それぞれにメリット・デメリットもあります。
そこで今回は、車のシフトの役割から5種類の特徴、そしてそれぞれの代表的な車種を解説します。
車のシフトの基本情報
車のシフトとは?
車のシフトは運転席と助手席の間やハンドルの付け根、インパネからでているレバーのことをいいます。
まずは、シフトの役割とどんな種類があるかを解説します。
車のシフトの役割
車のシフトの役割はギアを選択すること。
そしてギアはエンジンの動力をタイヤに伝えるための歯車のことです。
ATやMTは複数枚の大きさのギアを持っており、速度に合わせて自動または手動で適切なギアを切り替えて効率よくタイヤを動かします。
自転車のギアを思い出してみれば分かりやすいでしょう。
1速のような高速ギアは軽いですが、たくさん漕がなくてはいけません。6速のような低速ギアは重いですが、漕ぐ量は少なくてすみます。
自転車のハンドルにある変速機が、車でいうシフトということです。
車を快適に走らせるために欠かせないものがシフトだといえます。
車のシフトは全部で5種類
車のシフトは機構や仕組みで以下の5種類に分けられます。
- フロアシフト
- コラムシフト
- インパネシフト
- 電制シフト
- パドルシフト
次の項目でそれぞれどんなものなのか、どんな特徴があるのかを紹介します。
車のシフトの種類ごとの特徴
車の5種類のシフトごとの特徴を紹介します。
フロアシフトの特徴
フロア、つまり運転席と助手席の間の床に設置されているシフトがフロアシフトです。
自動車教習所の教習者はフロアシフトであることが多いため、ほとんどの方は一度は運転したことがあるでしょう。
最もたくさんの車に採用されているシフトの形態です。
ハンドル周りがすっきりしてハンドル操作、シフト操作ともにやりやすいことがメリットです。
デメリットとしては、運転席や助手席が隔てられてしまうため席の移動がしにくく、収納スペースも少なくなってしまうことが挙げられます。
コラムシフトの特徴
コラム(column)とは日本語で柱のこと。
コラムシフトはステアリングコラムというハンドルの軸をカバーしている部分に設置されているシフトです。
レバーがハンドル近くにあるため操作性に優れ、運転席と助手席の間の空間も確保できることがメリットです。
ただ、レバー自体を目視しにくいため、今どのギアに入っているか分かりにくいという欠点もあります。
1990年代のミニバンや商用車などに多く採用されていましたが、今ではほとんどコラムシフトの車を見ることはありません。
コラムシフトが消えていった理由は電子化の波に飲まれたことです。
コラムシフト全盛期の時代はレバーを操作して物理的にシフトを変えなければいけませんでしたが、技術が進んだ今は電気的にシフトチェンジができます。
今でも多くの車でレバーが付いていてシフト操作しますが、実はレバーでなくてもスイッチでもなんでもよいのです。
なので、視認性が悪いコラムシフトは廃止され、フロアシフトや次に紹介するインパネシフトに移っていったという経緯があります。
インパネシフトの特徴
現在多くの車に採用されているシフト形式がインパネシフトです。
インパネとはメーター類やダッシュボードなど車内前面の場所を意味する言葉です。
運転席と助手席の間が広く使えたり、何速に入っているか分かりやすいメリットがあります。
一方、今までの主流であるフロアシフトから移行したユーザーにとって、操作性に違和感があるかもしれません。
ただ、慣れてしまえばフロアシフトと同じように問題なく使えるはずです。
電制シフトの特徴
電制シフトとは2003年9月に発売されたプリウスに初めて搭載されたシフト形式です。
シフトレバーの操作を電気的に処理し、それに基づきギアの切り替えをします。
電制シフトを採用している多くの車は省スペースが実現できるインパネに取り付けられています。
そのため、インパネシフトかつ電制シフトという言い方も正解です。
電気的な処理でよいため形状や取付位置が自由でデザイン性が高いことがメリットです。
ただ、物理的なシフトと比べて操作感が軽く手ごたえがないことが多いため、慣れるまで違和感があるでしょう。
電制シフトはレバーというよりレバー型のスイッチのような感覚です。
パドルシフトの特徴
パドルとはカヌーを漕ぐための木の棒のこと。
そして、パドルシフトはステアリングの裏側や左右に取り付けられているシフトです。
パドルシフトはF1用の車から生まれたシフトで、ステアリングを握りながら指先だけでギアチェンジできるため操作性に優れています。
デメリットとしては、自分の手のサイズにパドルの位置が合っていないと使いにくいことです。
車のシフトの種類ごとの代表車種
最後に、車のシフトの種類ごとの代表車種を紹介します。
- フロアシフトの代表車種:トヨタ ヤリス
- コラムシフトの代表車種:シトロエン グランドC4 スペースツアラー
- インパネシフトの代表車種:ホンダ N-ONE
- 電制シフトの代表車種:トヨタ プリウス
- パドルシフトの代表車種:スズキ スイフト
フロアシフトの代表車種:トヨタ ヤリス
フロアシフトの車種として、トヨタからコンパクトカーのヤリスを紹介します。
2020年にヴィッツの4代目がヤリスに生まれ変わりました。
ハンドルから手を下ろした自然な位置にシフトレバーがあり、万人に操作しやすい車になっています。
コラムシフトの代表車種:シトロエン グランドC4 ピカソ
コラムシフトの代表車種はフランス発祥の自動車メーカーであるシトロエンより、グランドC4 スペースツアラーです。
コラムシフトを採用している現行車種は数えるほどしかなく、スペースツアラーもそのひとつ。
ディーゼルかつコラムシフトというとても個性的な作りになっています。
しかし、市場の変化により2022年7月に生産中止になると公式により発表されました。
インパネシフトの代表車種:ホンダ N-ONE
ホンダの大人気軽自動車NシリーズよりコンパクトなN-ONEをインパネシフトの代表車種として取り上げます。
N-ONEはインパネシフトを採用しているため運転席と助手席の間が広く使えます。
軽自動車の中でもコンパクトなN-ONEですが、足元がすっきりして思った以上に室内が広く感じられるでしょう。
電制シフトの代表車種:トヨタ プリウス
電制シフトの代表車種はトヨタよりプリウスです。
電制シフトはプリウスをはじめとしたハイブリット車や電気自動車に採用されることが多くあります。
プリウスのシフトは電子制御されていますが、ユーザーが使い慣れているレバーで操作する方式です。
一方、例えばホンダのCR-Vのようにボタンでシフトを操作できる車種もあります。
レバーとボタン、どちらが優れているというものはありません。
ユーザーごとの好みの問題でしょう。
パドルシフトの代表車種:スズキ スイフト
最後に、パドルシフトの代表車種としてスズキのスイフトを紹介します。
パドルシフトはスポーティな車に装備されることが多く、スイフトもそのひとつです。
スズキお得意の軽量化技術のおかげでキビキビと走る、運転して楽しい車です。
上位グレードのスイフトスポーツは運動性能からインテリア、エクステリアまでグレードアップしており、よりドライブが楽しめる車となっています。
まとめ
車のシフトの種類とそれぞれのメリット・デメリット、代表車種を紹介しました。
5種類のシフトのうち、コラムシフトは今はほぼ採用されていません。
シトロエンなどの外国車でわずかに見られるくらいです。
今は大部分の車種がフロアシフト、インパネシフト、電制シフト、パドルシフトのどれかを採用しているでしょう。
試乗車やレンタカーで未経験のシフトを体感してみるのも、おもしろいかもしれませんね。
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