2022年10月13日、静岡県小山町にてツアー客を乗せた観光バスの横転事故が発生しました。
この事故により乗員1名の死亡、35名が怪我を負いました。
記憶されている読者の方も多くいらっしゃることでしょう。
横転したバスの映像は強烈な印象を与え、事故の原因とされる「フェード現象」についてもスポットが当たりました。
今回の記事では、そのフェード現象の原因と対処法やベーパーロック現象との違い、ブレーキの仕組みについてご紹介します。
フェード現象とは?
フェード現象とベーパーロック現象について、あまり気にせず運転しているドライバーも多いかもしれません。
まずこの項でフェード現象が何故起きるのか、原因について覚えていきましょう。
同時によく混同されるベーパーロック現象もご説明いたします。
どのようなシチュエーションで起きやすく注意が必要なのか、そういった面についても覚えて頂ければと思います。
フェード現象の原因
フェード現象は摩擦を利用したブレーキシステムの使い過ぎによって、ブレーキの効きが悪くなる現象です。
一般的に車両においてはフットブレーキを指し、ディスクブレーキ・ドラムブレーキのことをいいます。
フェード現象のメカニズムは、フットブレーキを使うことで摩擦熱が発生、ブレーキが加熱され摩擦材のゴムや樹脂等の構成素材が分解・ガス化します。
ガス化した摩擦材がブレーキローターの間に入り込み、摩擦力が低下しブレーキが効きにくい、又は効かない状態になります。
特に下り坂を長時間エンジンブレーキ等を利用することなく、フットブレーキを使用し続けることで起きやすくなります。
また構造上、摩擦材が大きく熱がこもりやすいドラムブレーキで起きやすいとされます。
べーパーロック現象との違い
ベーパーロック現象もまた、坂道を下るなどのタイミングでフットブレーキの使い過ぎによって起きる現象です。
フェード現象と違い、ベーパーロック現象はブレーキフルード(ブレーキ液)に原因があります。
こちらのメカニズムとしては摩擦熱がブレーキフルードに伝わり、沸騰し気泡が発生することがポイントです。
結果ブレーキを踏むことで発生する油圧が、気泡に阻害されブレーキフルードに伝わらなくなり、ブレーキが効かなくなります。
フェード現象もベーパーロック現象もブレーキの使い過ぎによるものですが、フェード現象はブレーキの摩擦面に起因し、ベーパーロック現象はブレーキフルードに起因するという違いがあるのです。
フェード現象に関わるブレーキのしくみと役割とは?
フェード現象の原因にフットブレーキが関わっています。
せっかくですので、フットブレーキの仕組みと役割についても理解を深めてましょう。
またエンジンブレーキについても、ご説明します。
エンジンブレーキについては次の項でも触れますが、フェード現象の予防に非常に大きな役割を担うことになります。
フットブレーキのしくみと役割
フットブレーキの役割はペダルを踏むことで車の速度を低下させ速度を制御する、又は停止させることです。
フットブレーキはペダル操作により、タイヤの回転数を減速させるシステムであり、踏み込みの強弱で調整可能です。
ディスク式もドラム式も共通して回転部に摩擦材を押し付け、タイヤの回転数を低下させることで速度を落とすことが出来ます。
フットブレーキはペダルを踏み込み、油圧を摩擦材に伝え、その摩擦材がディスクやドラムに押し付けられることで制動力を発揮します。
多くは油圧ディスクブレーキと油圧ドラムブレーキの2種類が採用されます。
基本的にはドライバーの足元、アクセルペダルと並び配置されています。
エンジンブレーキのしくみと役割
エンジンブレーキはエンジン出力を絞ることで、エンジンの抵抗によって生じる制動のことです。
その抵抗により車両の速度を低下させたり、速度上昇を防いだり、安全運行に利用します。
まずアクセルペダルを踏むとエンジンに燃料が送られ、その動力により車は動きます。
アクセルペダルから足を離せば燃料が送られず、タイヤの回転する惰力によりエンジンは動きます。
しかしエンジンの抵抗により自動車は減速することになり、さらに抵抗力はギアが低くなるほど大きくなります。
これがエンジンブレーキの仕組みです。
ブレーキペダルは存在しませんので、アクセルペダルを離す、シフトチェンジをすることで作用を発生させるのです。
またエンジンブレーキを利用しても、ブレーキランプが点灯することはありません。
フェード現象の対処法と事前対策とは?
ここまでフェード現象とブレーキの種類や効果について、お話ししました。
その上で、フェード現象への対処法と、現象を起こさない為の事前対策について考えていきましょう。
フェード現象が起きた時の対処法
現象が起きるとフットブレーキは効かなくなります。
また即回復は期待できません。
つまりフットブレーキ以外の方法で、車両を減速又は停止させる必要があります。
ここで先ほど説明したエンジンブレーキを活用しましょう。
エンジンの回転数を上げ、速度が上がらないようにします。
減速が必要になってくれば、さらにギアを下げエンジンの抵抗力を上げることで、速度を下げるようにしましょう。
フェード現象を防ぐための事前対策
特に下り坂が続くのであればフットブレーキを使い続けるのではなく、エンジンブレーキを積極的に利用するようにしましょう。
エンジンブレーキの効きを良くする為に、シフトダウンを積極的に利用します。
マニュアル車ならばシフトチェンジを常用しているかと思いますので、エンジンブレーキが感じられる低いシフトギアの選択を意識します。
オートマチック車ならば、車種によるもののDレンジの下、セカンド・ロー・スポーツ(S)モードを利用します。
ローギアは車種によっては効きが強いので、ある程度フットブレーキで速度を落とし、セカンドギアを経由してから使用しましょう。
エンジンブレーキを効かすことで、下り坂の惰性で速度が上がってしまわないよう調整し、必要に応じフットブレーキも使います。
エンジンブレーキを適宜使用すれば、フェード現象が起きる心配は少なくなり、フットブレーキもしっかり利用できるのです。
まとめ
フェード現象は非常に恐ろしいですが、エンジンブレーキとフットブレーキをバランスよく使用することで防ぐことができます。
日常的にエンジンブレーキの使い心地を確かめておくことで、不意のトラブルでも運用できるようにしておきましょう。
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