飛行機を使って韓国に行くことを想像してみてください。飛行機に乗るには空港に行かなければいけませんね。
ほとんどの方は地図アプリを使って道や所要時間を調べるでしょう。
空港まで新幹線と電車で行くとしたら、空港近くまで行く新幹線をアプリで調べて、予約サイトまたは現地で切符を買い新幹線に乗り、改めて空港行きの電車の切符を買います。
実際はICカードを使う方が多いので現地で切符を買わないかもしれませんが、空港まで行くのに「行き方を調べる」「切符を買う」の2段階を踏まなくてはいけません。
こんな面倒を変える概念が「MaaS(Mobility as a Service)」です。
自家用車以外の移動を単なる移動ではなくひとつのサービスとして捉えた、次世代の交通サービスといわれています。
先ほどの例だと、MaaSの考え方は「行き方を調べる」「切符を買う」をひとつのサイトで一括でおこなうということです。
今回はMaaSについて基本的な知識から3種類の取り組み方、MaaSが交通事情に与える影響、そして日本と世界の具体例を紹介します。
もうMaaSのサービスは日本でもあらゆるところで利用できます。
うまく使って快適な移動を実現してください。
MaaS(マース)とは?
MaaSとはなにか、以下の4項目に分けて解説します。
- MaaS(マース)とは?
- MaaSが注目されている理由
- MaaSの歴史
- CASEとの関連性
MaaS(マース)とは?
MaaSとは「Mobility as a Service」の略で、日本語で直訳すると「サービスとしての乗り物」という意味です。
国土交通省のHPから引用すると
地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス
です。
言葉にすると少々難しいですが、例を出すと簡単です。
例えばタクシーアプリの「GO」はアプリ上で目的地を選択するとタクシーの配車から支払いまで完結できます。
このように移動に必要な複数なステップを滑らかにつなぎひとつのサービスにするイメージがMaaSです。
また、MaaSはその到達度によって以下の4つのレベルに分けられます。
- レベル1:情報の統合(複数モードの交通提案、価格情報)
- レベル2:予約、決済の統合(トリップの検索、予約、支払)
- レベル3:サービス提供の統合(公共交通に加えてレンタカーなども統合)
- レベル4:政策の統合(データ分析による政策)
先ほどの「GO」では一つの公共交通機関(タクシー)のみ取り扱っているのでレベル2です。
MaaSが注目されている理由
再び国土交通省のHPから引用すると、MaaSは
観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となる
という理由から注目されています。
例えば、免許を返納したMaaSによって高齢者が乗り合いタクシーやバスをもっと手軽に使えるようになれば、地域の課題解決に繋がります。
MaaSの歴史
MaaSという概念は2014年のヨーロッパで生まれました。
環境問題に敏感なヨーロッパだからこそ、環境への負担を軽減するために自家用車を持たずに移動するMaaSが注目されたということです。
2016年のフィンランドで「Whim」という複数の公共交通機関やシェアリングサービスをアプリひとつで予約、乗車、決済が済ませられるアプリが登場しました。
この世界初の複数交通を連携するMaaSのおかげでフィンランドでは公共交通機関の利用率が向上しました。
世界でMaaSは取り入れられはじめ、日本では2017年ごろから検討されています。
そして、2019年ごろには国がMaaSを後押しするようになりました。
CASEとの関連性
CASEとは「Connected(繋がる)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリングとサービス)」「Electric(電動化)」の頭文字を並べた造語です。
2016年にメルセデス・ベンツが作り出した言葉で、他の自動車会社も採用するようになりました。
CASEもMaaSも便利で環境に優しい移動手段を実現するという方向性は同じで、CASEをもっと進化させたものがMaaSという関係です。
MaaSの取り組みは3種類
一口にMaaSといえど、その目的や取り組み方は以下の3種類あります。
- 大都市近郊型・地方都市型
- 地方郊外・過疎地型
- 観光地型
大都市近郊型・地方都市型のMaaS
大都市近郊や地方都市は、渋滞や満員電車のように混雑が問題です。
また、駅と住宅地を結ぶ「ラストワンマイル交通手段」が不足している点も見受けられます。
交通網自体は発達しているため、それらをうまく結ぶことでより利便性の高い交通が実現できるとされています。
鉄道、バス、タクシーといった公共交通機関を始めカーシェアやオンデマンドバスも大都市近郊型・地方都市型MaaSに組み込むべきサービスです。
地方郊外・過疎地型のMaaS
地方郊外、過疎地の問題点は自家用車への依存や交通網の貧弱さです。
人が少ないから公共交通機関が発達せず自動車への依存度が高まり、さらに公共交通機関が衰退していく、という悪いスパイラルを起こしています。
地方郊外・過疎地型のMaaSでは、電車やバスに加えて自由度の高いタクシーやオンデマンドバスをうまく組み合わせて利便性をアップさせる効果があります。
それでもカバーしきれないときは、地方住民の互助や商業施設の無料送迎を利用することもMaaSの一角です。
それら公共交通機関と互助・無料送迎を組み合わせて予約できるサービスが期待されています。
観光地型のMaaS
観光地型は他のMaaSと少し毛色が違います。
例えば水族館に行くとします、電車に乗り、水族館についたら入場料を支払うでしょう。帰りはレストランによって食事をし、ホテルに泊まることもあるでしょう。
これらを考えて、電車と観光地、レストラン、ホテルをアプリでまとめて支払えたり予約できる考え方が観光地型のMaaSです。
滑らかな移動やサービスの享受はユーザーの満足度をぐんと押し上げ、観光地の活性化につながります。
Maasで交通事情はどう変化するの?
MaaSが浸透すると交通事情は下のように変化します。
- 車を所有しなくてよくなる
- 移動が効率的にできるようになる
- 交通渋滞や事故が減少する
- 高齢者や地方の交通手段が確保できる
- SDGsに繋がる
車を所有しなくてよくなる
MaaSは自家用車以外の移動手段を連携させて利便性を高めることです。
公共交通機関やシェアリングサービスなどがより便利になったら車を所有する必要がなくなります。
ユーザーにとって車にかかるお金を削減できるので、うれしいメリットでしょう。
移動が効率的にできるようになる
今まで電車、バス、飛行機などそれぞれ予約や支払いをしていたものが一括でできるようになります。
移動を効率化し労力を減らせるメリットがあります。
交通渋滞や事故が減少する
自家用車が減るため、交通渋滞や事故が減少します。
長期連休のたびに決まって渋滞する高速道路があります。あなたの周りにも、毎日のように渋滞している道路があるかもしれません。
MaaSによって自動車が減り渋滞が緩和されることは、経済の活性化にも繋がるといわれています。
高齢者や地方の交通手段が確保できる
地方の深刻な問題として、よく足の確保の難しさが挙げられます。
公共交通機関が発達しないため、高齢者がいつまでも車を運転しなくてはいけない状況です。
MaaSでオンデマンドバスや相乗り、無料送迎などをシームレスに繋げられば自由度の高い足を確保できます。
SDGsに繋がる
MaaSを運用する上で得たデータを活用すれば、よりレベルの高いサービスを実現できSDGsにつながります。
人が多い時間帯から年齢別の乗車状況、乗車・降車前後の行動まであらゆるデータが手に入ります。
それらを駆使することでバリアフリー化や交通機関の利便性向上に有効利用できることでしょう。
Maasのデメリット
MaaSはいいことばかりでなく、下のデメリットもあります。
- サイバー攻撃の被害が大きい
- 自動車業界の負担が大きい
- 過疎地へ移動がしにくくなる
サイバー攻撃の被害が大きい
MaaSで全ての交通機関がシステム的に繋がっていると、一箇所ハッキングやマルウェアの被害を受けただけで全てに影響が出ます。
もしもの時に交通機関が使いにくくなってしまうかもしれません。
自動車業界の負担が大きい
自動運転やEVなどMaaSに適合するために自動車業界は変化を余儀なくされています。
トヨタやホンダなどの自動車メーカーだけでなく、そこに部品を供給する部品メーカーも新部品の開発などで負担が大きくなっていくことでしょう。
過疎地へ移動がしにくくなる
MaaSで自家用車が少なくなると、過疎地への移動がしにくくなります。
過疎地も過疎地型のMaaSがあるとはいえ、そのために足が充実しているとはいえません。
行動範囲が狭くなってしまう可能性があります。
日本でのMaasの取り組み事例
MaaSの具体例として日本での事例を紹介します。
- タクシーアプリ:GO
- ららぽーと福岡の無料送迎バス予約:&MOVE
- 伊豆旅行専用アプリ:Izuko
タクシーアプリ:GO
本記事の上の方でも例に出したGOは、タクシーの予約、配車、支払いをアプリ上で完結できます。
日本におけるMaaSの先駆けです。
複数の公共交通機関ではなくタクシーだけを取り扱っているため、レベルは2とされています。
ららぽーと福岡の無料送迎バス予約:&MOVE
ららぽーと福岡は&MOVEというアプリを利用して、スマホで無料送迎バスの予約をできるようにしました。
&MOVEはフィンランド産のMaaSアプリである「Whim」を活用して三井不動産が提供しているMaaSです。
ららぽーとという大きな商業施設ができるとなると渋滞が懸念されましたが、&MOVEを活用によって解消に一役を買ったとされています。
GOと同じく、ららぽーと福岡においては無料送迎バスのみを対象としているのでレベル2です。
伊豆旅行専用アプリ:Izuko
Izukoは伊豆旅行に特化した専用アプリです。
公共交通機関から観光施設、レストランまで一括で予約や決算できます。
まだ正式な実装はされておらず、2021年に3回目の実証実験が終わった段階です。
複数の交通機関や施設を横断して取り扱えるということで、レベルは3に該当します。
世界でのMaasの取り組み事例
続いて、世界でのMaaSの取り組み事例を紹介します。
- 配車アプリ:Uber
- 自転車シェアリングサービス:mobike
- 複数の公共交通機関を取り扱える:Whim
配車アプリ:Uber
日本ではフードデリバリーで有名なUberですが、世界的に見ると配車サービスが盛んです。
空き時間を使って車で配車サービスをしたいユーザーと、サービスを受けたいユーザーをアプリで繋げます。
国によっては電動キックボードや電動自転車のシェアリングサービスもUberが担っています。
複数の公共交通機関をつなぐことはできませんが、配車から支払いまでアプリ上で決算できる、レベル2のMaaSだといえるでしょう。
自転車シェアリングサービス:mobike
mobikeは中国のシェアサイクルの企業で、2015年に設立されました。
日本でも札幌や福岡、神奈川県大磯町で事業をしていたことがありますが、今は撤退して中国国内のみのサービス運用となっています。
シェアリング自転車をスマホで予約し決済できる、レベル2のMaaSです。
複数の公共交通機関を取り扱える:Whim
Whimはフィンランドのベンチャー企業が開発運用しているアプリです。
Whimのアプリ上で公共交通機関からレンタカー、相乗りまでを組み合わせて移動手段を選び決算までできます。
最大の特徴は定額制のプランがあることです。
範囲や時間の制限があるものの、公共交通機関やタクシー、レンタカー、シェアサイクルが定額で利用できます。
複数の乗り物を横断して予約や決算できるので、レベルは3に該当します。
まとめ
MaaSとは何か、導入することで交通事情がどう変わるのかについて解説しました。
MaaSとは、自家用車以外の移動を単なる移動ではなくひとつのサービスとして捉えた、次世代の交通サービスのことです。
MaaSがあれば、旅行ならスマホ一つで電車とバスとレストラン、ホテルまでも横断して予約できます。
都市部ならシェアサイクルやタクシーの利用が盛んになり自家用車が減り、事故や渋滞が減っていきます。
日本では「Izuko」という伊豆専門で複数の公共交通機関や施設を横断して予約・決算できるサービスが実証実験されました。
世界的に見ると、アメリカの配車サービスアプリUber、中国のシェアサイクルアプリmobike、フィンランドのモビリティアプリWhimなど優れたMaaSのサービスが複数展開されています。
MaaSにより、移動自体をサービスとして捉え効率よく楽しくできる未来がすぐそこにあるのかもしれません。
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