みなさまは最近、デコトラを目にしましたか。
デコトラとは、派手なイラストやイルミネーションで装飾されたトラックのことです。
一時期はブームを起こすほどの人気を誇りましたが、近年はあまり見かけません。ただ、一部のファンによる根強い人気はまだまだ健在です。
本記事では、デコトラの概要や、近年見かけなくなった理由、車検事情を解説します。
デコトラとは?
デコトラの概要、ブームを起こした理由、歴史と現状を解説します。
デコトラってなに?
デコトラとは、「デコレーション・トラック」の略称で、派手なイラスト、イルミネーション、メッキパーツなどで飾り付けられたトラックのことです。
「アート・トラック」とも呼ばれています。
豪華絢爛な印象のイラストが特徴です。
イラストのモチーフは主に、能や歌舞伎といった日本の伝統芸能、富士山や神社仏閣といった日本の風景、龍や鳳凰といった伝説の動物です。
ディズニーやジブリ、ガンダムのイラストも用いられています。
「行灯(アンドン)」と呼ばれる、ガラスやアクリルを加工して文字やイラストを入れ、中に照明を組み込んだ箱が、代表的な電飾です。
マーカーランプも、大小さまざまなものが多く取り付けられています。
照明は、軽量化と省電力化のために、LEDが主流です。
外装だけでなく、内装も飾り付けられます。
凝ったデザインのシートカバー、ハンドルカバー、布団やカーテンが採用される傾向にあります。
水中花入りのシフトノブも人気です。
デコトラがブームを起こした理由
1970年代に、デコトラの豪華さを競うグループが結成され、全国的に認知され始めました。
テレビで取り扱われたこともあります。
デコトラを題材にしたロードムービー的な映画作品「トラック野郎」シリーズが大ヒットしたことで、認知がさらに広まり、トラックに装飾をする人が急増しました。
映画の主人公に憧れてトラック業界に入った人も多くいます。中には法律に違反する装飾をしたデコトラもありました。
不正改造に対する警察の取り締まり強化により、デコトラブームは下火になりますが、1984年にデコトラ専門誌「カミオン」が創刊され、年齢・職業を問わず、再び注目が増えました。
デコトラのイベントに子供が来場するようになったり、自転車にデコトラのような装飾を施す「デコチャリ」が流行ったりしました。
デコトラの歴史
主に水産業で用いられた「オート三輪」と呼ばれる三輪のトラックに、塩害や融雪剤の影響で錆び付くのを防ぐため、ステンレスパーツを取り付けたのがデコトラの発祥といわれています。
鱗模様に加工された通称「ウロコステン」というステンレスパーツは、現在も主流の材料です。
「デコトラ」という名称は、1976年に、プラモデルメーカーである「青島文化教材社」が登録商標を取得し、実際にプラモデル化しています。
デコトラの今
全盛期ほどではありませんが、デコトラの愛好者は今もいます。
控えめな装飾を施した業務用のデコトラと、きらびやかな装飾を施したイベント専用のデコトラに二極化しているのが現状です。
全国各地で、自慢のデコトラを展示するイベントが年に数回開催されています。
規制の厳しい外装ではなく、内装に力を入れているケースが増えました。
内装の例として、荷室にシャンデリアを設置したもの、キャンピングカーのように冷蔵庫や電子レンジを載せたものなどがあります。
軽トラックに装飾を施した例もあります。
デコトラをあまり見なくなった理由とは?
デコトラをあまり見なくなった主な理由を2つ解説します。
理由1.規制が厳しくなったから
警察の取り締まり強化により、デコトラは減りました。
イラスト程度なら問題ありませんが、イルミネーションの点灯、車両寸法の大きな変更、大きすぎるマフラー音などは、取り締まりの対象です。
装飾が合法的であっても、デコトラは威圧的だとして、荷主からの苦情が多くありました。
クレーム対応のため、多くの企業が自主的に装飾を規制しています。
昨今見られるデコトラは、個人所有のもの、装飾を規制していない小規模な会社のもの、業務では使わずイベントで展示する目的のものが多数です。
理由2.お金がかかるから
トラックを装飾するのに多額の費用がかかることも、デコトラが減った理由のひとつです。
荷台にイラストを描く場合、一面だけで数十万円かかります。
バンパーの改造に50万円程度、ミラーやバイザーは10万円程度です。
電飾パーツの取り付けは、簡単なものでも10万円以上かかります。
トラックをデコレーションするのにかかる総額は数百万円はかかるのが相場です。
凝ったデザインにすると1千万円を超えることも珍しくありません。
デコトラの車検事情とは?
デコトラの車検事情を解説します。
デコトラは車検に通る?
デコトラは、規定の範囲内で装飾すれば車検に通ります。
車検に通った後に、別のパーツに取り替える人もいますが、安全基準を逸脱するパーツの取付により思わぬ事故につながる恐れがあるので、やめましょう。
改造車に関する知識をあまり持っていない業者も多く、デコトラの車検を受け付けていない業者もあります。
一方で、本来なら不合格でも合格にしてしまう「ペーパー車検」をする業者も存在し、場合によっては依頼主も罰則を受けることがあるので、要注意です。
インターネット検索やデコレーション業者からの紹介などで、デコトラでも適切に車検をしてくれる業者を探して依頼しましょう。
車検に通らないデコトラの特徴
車のサイズ、ガラスの透過率、灯火類、音で車検に通らないケースが多数です。
車検証に記載された車のサイズと、実際のサイズが合致する必要があります。
バンパーやバイザー、ミラーを大きなものに取り替えると、車検証に記載されたサイズと合わなくなり、車検に通りません。
事前に運輸支局に「構造変更」の申請をすれば問題ありません。
フロントガラス、運転席・助手席窓ガラスは、可視光透過率が70%以上と規定されています。
フィルムを貼り付ける際は、可視光透過率が70%未満にならないよう気を付けなければなりません。
ライトの色や個数、明るさにも規定があります。
過度なイルミネーションは、車検に通らない可能性があります。
騒音に関する規定もあるので、あまりにも大きな音が出るマフラーを取り付けると、車検に通りません。
まとめ
デコトラの概要や、近年見かけなくなった理由、車検事情を解説しました。
近年はデコトラが減りましたが、根強い人気があります。
既定の範囲内であれば、車検にも通ります。
デコトラが気になった人は、展示イベントに足を運んではいかがでしょうか。
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