【カーライフ】ネオクラシックと暮らす ―サーブ900 ターボ16S―

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新車と違って1台1台の仕様や状態がすべて異なる中古車は、言ってみれば一品物。探していても見つからないこともあれば、探していないのに“出会ってしまう”こともあります。

千葉県に住む野中崇史さんが1991年式「サーブ900 ターボ16S」に乗るのも、“出会ってしまった”から。最初は「趣味のクルマ」として手に入れたものの、所有してみると予想以上に実用性が高く自身のライフスタイルにピッタリで、すっかりハマってしまったのだと言います。

目次

オリジナルは1960年代。生まれながらにクラシック

まずは、サーブ900についておさらいしておきましょう。サーブ900は、スウェーデン「サーブ自動車」の主力車種だったモデル。今回、取り上げる初代900(通称:クラシックサーブ)は、1967年にデビューした「サーブ99」のアップデート版として1978年に発表され、1993年まで生産されたもの。

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直線で構成されるボディと、切り立ったフロントウィンドウが特徴的

その特長は、航空機メーカーならではのユニークなメカニズムとスタイリング。特にスタイリングは、1960年代にデビューした99のボディを流用して開発されたため当時からすでにクラシックの風格があり、日本でも人気を博しました。メルセデス・ベンツやBMWとともに、バブル期に憧れの対象となった外車(当時、輸入車とは呼ばなかった)のひとつです。

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インテリアは明るく開放的。このターボ16Sはグレーのレザーシートが装備される

2ドア/4ドアのセダン、2ドア/4ドアのハッチバック、そしてカブリオレとバリエーションがある中で、野中さんのクルマは2ドアハッチバックの「ターボ16S」というスポーツモデル。160PSを発生する4気筒2.0Lターボエンジンを搭載します。

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お気に入りは、意外に高い実用性

野中さんがこのクラシックサーブを手に入れたのは、2013年のこと。購入時の話を伺うと、当時クルマを所有していなかった野中さんは、サーブを探していたわけでもなければ、そもそもクルマを買うつもりもなかったのだそうです。

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野中さんは1981年生まれの37歳。1991年式サーブのオーナーとしては若い

「学生時代に買ったボルボ940ターボエステートを手放して5年。クルマを持たない暮らしをしていたとき、なにげなく中古車情報サイトを見ていて目についたのがこのクルマです。このとき『今乗らなければ二度と乗れないのではないか?』と思って、すぐに横浜のショップに見に行きました。2回見に行って購入を決めましたね」

晴れて1991年式「サーブ900 ターボ16S」のオーナーとなった野中さんは、実際に乗ってみて実用性の高さに驚いたと言います。

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長いオーバーハングのおかげで荷室の奥行が深く、ちょっとしたワゴンを凌ぐ広さを持つ

「大人4人がゆったり乗れるのはもちろん、荷物もたくさん載せられるんです。荷室の広さは前に乗っていたボルボのワゴンと感覚的には変わりません。『趣味グルマ』と割り切って買ったのですが、思いのほか実用的なので日常的に乗っています」

購入時、すでに20年を経過していたクルマだけに、ゴムホースの劣化によるアイドリング不調やエンスト、電動ファンの故障を始めとした電装系のトラブルはあったというものの、大きな故障は経験していないそう。整備はもっぱら、「近所のタイヤ屋」にお願いしているのだと教えてくれました。

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4気筒エンジンは斜めに傾けられて搭載される。縦置きながらFF(前輪駆動)だ

「ここの店長が親切で、普通ならアッセンブリー交換するような部分でも、パーツ単位で直してくれるんです。この店長がいるから、安心して乗っていられるのはありますね」

できればずっと乗り続けたい。でも……

サーブを手に入れて5年。野中さんは、サーブのデザイン、走り、そして実用性に惚れ込んでおり、「できればずっと乗り続けたい」と言います。しかし……。

「クルマは、洋服のように自分を表現するアイテムのひとつ。そういう意味で、サーブは自分に合っていると思うし、クルマそのものもとても気に入っています。でも、ボランティアで地域おこしにプロジェクトに携わるようになって、荷物を載せる機会が増えました。また、ずっと乗り続けたい気持ちがある反面、ほかのクルマにも乗ってみたい気持ちもあって、もう少し大きなクルマに乗り換えようかなと揺れているところです」

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ArtekのクッションにKlippanのブランケットと、車内に置くアイテムも北欧製で統一

野中さんがボランティアで企画から携わっているという地域おこしプロジェクトは、千葉県白井市の特産品である梨のブランド化だそう。

「実は、東京から電車で約40分の白井市は、梨の生産量が日本一なんです。だけど、あまり知名度がない上に、梨が注目されるのは夏だけ。そこで、シーズン以外にも販売できるよう、ソースやドレッシングなどの加工品の企画・販売を『こなすや』として行っています。梨農家は高齢化が進んでいて、後継者不足が問題に。梨を加工して年中販売できるようしてブランド力を高めることで、この問題を解決する手伝いができればと考えています」

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ダッシュボード上にはサーブの木製ミニチュアカーが

どれだけ気に入っていてもクルマは「あくまでもツール」というのが、野中さんのスタンス。仮にサーブを手放すことになったとしても、思い出は残るものですし、また別の世界や暮らしが待っていると考えればきっといい選択となるでしょう。地域おこしのプロジェクトが成功したとき、その裏にクラシックサーブの活躍があったとすれば、それもまた素敵なエピソードになりそうですね。

▼こなすや公式Webサイト
https://konasuya.official.ec/about

▼ふるさと納税「お礼の品」ページ
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/12232/361266

今、見直したいクラシックサーブの価値

1990年頃の“ちょっと古いクルマ”が「ネオクラシック」と呼ばれるようになって、どれぐらいになるでしょうか。ネオクラシックとカテゴライズされることによって、「W124型」メルセデス・ベンツEクラスや「E30型」BMW3シリーズなどは、ヒストリックカーの仲間入りを果たし、それまでよりも大切に扱われるようになった気がします。

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もちろん、メルセデス・ベンツやBMWと違って、ブランドそのものがなくなっているサーブを維持するのは、楽なことではないでしょう。それでも、ネオクラシックというカテゴリーが確立された今、ユニークなデザインやメカニズムを持つクラシックサーブは、その価値を見直すべきときにきているような気がします。この大切にされているターボ16Sを見て、その思いを新たにしました。

text & photo by 木谷宗義

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