「スープラ」の名を持つクルマが約17年の時を経て復活することは、車好きの間ではホットな話題かもしれません。上級モデルには直6のエンジンも用意されるとの噂で、かつての正統派スポーツカーの流れを漂わせています。
そんなスープラ、日本国内では1986年発売の「A70型」と「A80型」が有名ですが、北米におけるスープラの歴史は1978年に始まりました。ご存知の方も多いかと思いますが、日本における初代と2代目のセリカXX(ダブルエックス)の輸出名称がスープラだったからです。
トヨタにおけるGTカーの歴史に名を刻んだセリカXXとスープラは、ロングノーズのワイドアンドローなスタイリングを持つFRスポーツカーらしいスタイリングから世界中で人気となり、今も熱いファが多く存在します。今回、ご紹介するオーナーさんも、そんな熱狂的XXファンのひとりです。
父から受け継ぎし、スペシャリティーカーへの熱きハート
「この車はトヨタ・セリカXX 2000GT TWINCAM24。1984年式の後期型です」。そう語るのはオーナーの辻村さん、36歳。購入して約12年が経とうとしています。「物心ついたばかりのこと、家には現在、乗っているのと同じ2代目のセリカXXがありました。自分が小学校1年生のころまで共に過ごしていたのでその影響か、クルマといえばクーペでリトラクタブルランプといった印象を持っていました」
ヘッドランプは格納式のリトラクタブルヘッドランプ。日本ではトヨタ2000GTを皮切りに採用され始めた。現在では安全基準の観点から採用は困難となっている
「このXXは、人生で購入した中で2台目のクルマです。社会人になって少しずつ金銭的な余裕も出てきたころ、それまでずっと欲しかった3代目セリカ(A60型)を探し始めました。そんな中、雑誌の個人売買欄で2代目セリカXXを見つけて、幼いころに父が運転していたセリカXXの姿を思い出して、売主に連絡を取ってみたんです」
しかし、連絡してから乗り出すまでにはそれなりの時間がかかったそうです。
「売主の方に問い合わせると、『すでに買い手が付いている。でも、連絡が取れないので少し待ってほしい』と言われました。実車を見に行ったのは、それから約2か月後。久しぶりに見るXXの姿、そして父が乗っていた仕様に近いツートーンカラーに舞い上がってしまい、すぐに購入を決めました」
「2000GT TWINCAM24」までがグレード名。名称にもハイテックなメカへのこだわりが感じられる
「このクルマはワンオーナーで、個人売買欄には『程度:中の上』と記されていました。でも、実車を見てみると部分的に塗装は剥げ、トランクの内張りなどボロボロな個所がありました。それでも購入してからは少しずつリペアを施し、現在の姿を保っています」
13万キロを超える走行距離は、年式を考えればまずまずといったところ。しかし、ボディの隅々まで美しさを放ち、辻村さんの手入れのよさが伺えます。
セリカXXと歩むカーライフ!
「このセリカXXは、希望ナンバーで当時、父が乗っていたのと同じナンバーしました。クルマを通じて少しだけ親孝行のつもりです(笑)。このクルマをフェリーに乗せて、名古屋港から北海道の旭川まで、ドライブ旅行にも出かけました。30年以上前のクルマですが、トラブルなく走り切ることができましたね」
トラブルフリーで走れるのは、日ごろのメンテナンスの賜物でしょう。続いてお気に入りのポイントを聞いてみました。
「お気に入りは、このスタイルに尽きます。ロングノーズ・ショートデッキ。FRらしいプロポーションに惚れています。内装でいうと“エレクトロニックディスプレイメーター”です。子供のころに観た『ナイトライダー』の内装のように、デジタル表示で気が散るくらい光るのが良いんです!」
1980年代の国産車における最先端装備、デジタルメーターは、回転数も点灯で知らせる仕組み。ワイパー類の一部スイッチはメーター周りに集約される。インパネやステアリングのステッチなども、品質の高さを感じさせる意匠だ。
一日でも長く走らせることができるように
お父様との思い出も蘇るセリカXXを所有した辻村さんに、愛車との“これから”」を聞いてみると……。「1日でもセリカXXを長生きさせたいと思っています。ついてる機能が使えて、走る・、曲がる・止まるがしっかりできること。そのために日常点検やオイルなどは、特にマメに面倒を見たいですね」
かつて助手席から眺めた父親のクルマの記憶。それを新たに所有し未来へと紡いでいく。辻村さんが当時と同色の個体に出会ったのは、きっと必然だったのでしょう。セリカXXとともに、新しい思い出を作っていってほしいですね。手入れの行き届いたセリカXXの走る姿に、トヨタの歴史の中に連綿と受け継がれるスポーツカーの文脈を感じることができました。
text & photo by TUNA edit by 木谷宗義
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