不定期に行われております「イラストで語るクルマと民族衣装のナショナリズム」、「チェコ×シュコダ105/120」「アメリカ×フォードF150」に続く3回目となる今回は、ドイツを舞台にお送りします。
クルマは、1980年代に生まれた世界でも有数の美しいスタイリングのクーペとして知られるBMWのクーペ、6シリーズ(型式番号E24)の高性能モデル「M635CSi」です。
15年にわたって生産されたBMWの高級クーペ
「クルマと衣装」に行く前に、まずは簡単にBMW 6シリーズについて触れておきましょう。
6シリーズは、「3.0CS]の後継機として1976年に630CS/633CSiとしてデビュー。その2年後に、3.5Lエンジンを積んだ635CSiが追加され、さらに1983年には、BMW初のミドシップマシン「BMW M1」のエンジンを移植した「M635CSi」が登場し、ラインナップが完成します(翌年、同じM88エンジンを搭載する『M5(E28)』のデビューと同時に「M6」と名称変更)。
1980年代の日本では好景気を背景に高級外車、とりわけドイツ車が大変な人気を博しまして、3シリーズ(E30)はあまりの人気と東京都心での台数から「六本木カローラ」と揶揄されるほどでしたが、そんな中にあっても6シリーズは、異彩を放つスタイルと人気を保ち、1990年に850i(8シリーズ)がデビューするまで、実に15年にわたりBMWの高級クーペとして君臨しました。
衣装は「レーダーホーゼン」。BMWと音楽の意外な関係とは?
それでは本題「クルマと衣装」の方へ。BMWの本拠地は、南ドイツ・バイエルンです。当然今回は衣装も南ドイツから。オクトーバーフェストでも知られるように、「ティアンドル」のような女性用の衣装を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、そこは少し置いておきまして、今回は男性用の衣装で「レーダーホーゼン」という衣装です(今回も少年に着てもらいました)。
オクトーバーフェストをはじめとするお祭りやパレードでは、この衣装で音楽隊が編成されて行進する姿が見られます。そこに今回の衣装の意味がありまして、あまり知られていない音楽とクルマの関係のお話をしたいと思います。
皆さんは「スタインウェイ・アンド・サンズ」という会社をご存知でしょうか? もしも存じ上げている方がいましたら、その方は音楽関係それもピアノに強く関わりのある方かと思われます。そう、スタインウェイ・アンド・サンズはドイツが誇る高級ピアノメーカーです。
「それとクルマ、BMWと何の関係が?」と思われるかもしれませんが、それがあるのです。実は2010年に、BMWではスタンウェイとコラボした7シリーズ「インディビジュアル7シリーズコンポジション」を発表しています。これはスタンウェイをイメージした内装やカラーを用意した特別なモデルでした。同時にスタンウェイからも、コラボモデルのピアノが発表されます。こちらは当時のBMWデザインチームの手によってデザインが行われたピアノでした。
この「デザインby BMW」のグランドピアノが世に出されたのは、わずか3台ほどだそうですが、これが多いのかどうかは筆者にはわかりません。しかし、過去にポルシェやメルセデス・ベンツとのコラボピアノはあっても、「Steinway & Sons」の名がつくモデルを出した自動車メーカーはBMWだけだったようです。
音楽とクルマ、旋律とエキゾーストノート、遠いようでも案外、人の心を震わせる点では似ているのかもしれませんね。
text & photo by きもだこよし, edit by 木谷宗義+Bucket
<関連記事>
クルマと衣装のナショナリズム・バックナンバー
https://car-days.fun/blog/tag/クルマと衣装のナショナリズム
きもだこよしの記事
https://car-days.fun/blog/tag/きもだこよし