チューニングブランドというと、どういったイメージをお持ちですか?例えばレーシングカーを設計、開発を行いレースへ参戦するイメージする方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は多くの国内自動車メーカーは子会社や関連会社としてチューニングブランドを保有しており、一般のカスタマーやオーナー向けの車両チューニングやコンプリートカーの製造、カスタムパーツの販売もおこなっています。
カスタムというと社外品のパーツを取り付けるケースも少なくないため、購入する側もそれなりの知識や整備力も求められたり、モータースポーツに知見のあるお店と付き合いを持つことが必要があったりすると感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は身近な存在なのです。
メーカー系チューナーが発売するコンプリートカーやカスタムパーツを選ぶメリットの一つは、きちんと保証が受けられる純正品という点です。部品だけでなく、整備後の不具合も対応してもらえるでしょう。
また何より車両を一から作っている大企業が、技術を提供してくれる安心感はカスタムパーツに不慣れなオーナーにとっては代えがたいものでしょう。
もちろんブランド数に限りがあるのでその中から選ぶという制約は発生しますが、モータースポーツで活躍しているチューナー名が冠された車やパーツを付けた車両を所有できることは、オーナーの喜びです。
それでは各社のチューニングブランドをいくつかご紹介しましょう。
TOYOTA
トヨタ自動車グループ内のトヨタクラフト株式会社が所有したチューニングブランドです。トヨタクラフト株式会社はあまり馴染みがないかもしれません。主に特装車や架装事業を専門にしているため、業界のプロの為の車両を作成する会社です。
TRDはレーシングカーの開発はもとより、カスタムパーツの開発と販売もしています。ワンメイクレースのベースモデルからレーシングカーまで供給を行っています。プレミアムなコンプリートカーを手掛けることもあり、憧れた方も多いのではないでしょうか。
一般的にはTRDより知名度が高いかもしれません。主に一般車両のエアロパーツ等の制作を行います。エクステリアの印象を大きく変えるデザインも多く、車両購入時に取り付けや購入の検討をしたオーナーさんもいらっしゃるでしょう。
現在ではTRDとMODELLISTAは株式会社トヨタカスタマイズディベロップメントに統合されています。
SUBARU
スバルの連結子会社であり、チューニングブランドとしてパーツの開発、販売、レース参戦も担当しています。ご存じの方にとって、WRCへの参戦によって得た数多くの栄光は印象的な出来事といえるでしょう。その活躍ぶりはブランドの価値を大いに高めたといえるでしょう。
インプレッサWRXSTIに憧れた方は多いでしょう。ちなみに筆者は真剣に購入を検討しましたが・・・。家庭内での許可が下りることはありませんでした。何年経っても、いつかは乗ってみたいと思わせてくれます。
多くの車種にSTI仕様をラインアップしており、乗って楽しく見てかっこいい車を提供してくれます。
NISSAN
日産自動車の連結子会社です。モータースポーツ志向のパーツ、オプション品の製造、販売を担っています。レースにもワークスチームとして積極的に参戦しています。
GT選手権等で名前を聞く機会も多く、知名度も高いのではないでしょうか。
ファミリーカーベースのコンプリートカーの展開も多いですが、吸排気やコンピューターチューニングまで行われているグレードもあり、本格的なスポーツ走行が楽しめるモデルも選択可能です。
日産のグループ企業であるオーテックジャパンが手掛ける車及びブランドです。外装、内装ともに高級仕様のAXISやRiderなどファミリーカー間での差別化を図っています。
日産自動車は、ピュアスポーツのNISMOとプレミアムスポーツのAUTECHとスポーツブランド2本立ての展開としています。
AUTECHはより一般オーナーに、スポーティさと上質感を提供してくれます。ファミリーでの使用をベースとしている人にはハードすぎず、高級感ある仕立ての良さは検討の余地ありといったところでしょう。
またAUTECHは福祉車両の制作も行っており、車いすスロープ仕様や助手席回転シートなど架装のスペシャリストブランドとしての一面もあります。
メーカーを限らず、こういった福祉車両はさまざまな仕様で受注生産が行われています。トヨタのウェルキャブ、日産のライフケアビークルなど各社は販売から整備までを一貫して担っています。
このような福祉車両について少し述べさせていただこうと思います。
メインは筆者の経験談となりますが、全ての福祉車両を販売するチューナー、ひいてはメーカーに共通する話かと思います。
筆者は福祉車両の商談をした際に車のカスタムというのは、車高を落とし、マフラーを替え、コンピュータチューンをすることだけではないと初めて気づくことができました。
その架装の剛健さや操作性の良さ、何より運転手も被介助者も出来る限り快適に、車移動を楽しいものにしようとする努力が見えました。介助用自動車は決して安いものではなく、検討中の方を大いに悩ませます。そして一度買えば長く保有することになります。
親や大事な人の介護の為に購入するのですから、気楽に買えるようなものではありません。
売る側も商談に一切の妥協はできません。ひとつでも疑問が解消できなければいけません。用途に合致しているのか、試乗して問題なかったのか、介助側は問題なく被介助者を乗せることができるのか。全ての疑問点を消化する為、売買双方共に商談や打ち合わせで体力も精神もすり減らします。
しかし納車したときの家族の喜んでいる姿は、今でも強烈に思い出します。お客様に本当に必要なものを提供できたと思える瞬間でした。車のチューナー、カスタム部門はモータースポーツで技術を磨き、大衆車へフィードバックすることで、最新技術を我々に提供してくれます。
よりかっこよく、より気持ちよく走るための技術は私たちの生活を楽しく彩ってくれます。しかし生活を支える派手ではないかもしれない技術=カスタムもメーカー系チューナーの熟成した技術の賜物ではないでしょうか。