トヨタ自動車の2017年の世界販売台数は、フォルクスワーゲン・グループ、ルノー・ニッサングループに続いて第3位。そんなトヨタは、世界の中古車市場でもその耐久性から圧倒的な信頼とブランドを築き上げています。
それは極東ロシア地域でも一緒。しかし、その使われ方は日本で見る姿とは少し違うようです。「世界じどうしゃ人文学 Vol.02」では、極東ロシア・サハリン島で特に台数の多いトヨタ車を通じて、現地のクルマの使われ方を覗いてみましょう。
氷点下26度!過酷な環境下を走るじどうしゃのありのままの姿
頑丈な自動車といえども、工業製品のひとつ。過酷な使用環境の下では、痛みも出るというものです。特に氷点下の期間が長いサハリンでは悪路や舗装の痛んだ場所が多く、クルマにとって決していい環境とは言えません。
主要幹線道路の脇は未舗装状態。地面にはタイヤ跡も見られる
道路の砂埃を清掃するためのトラックが往来する
そんな環境からか、町の中を往くクルマにはバンパーやフェンダーなど一部の部品が欠損したまま乗り続けられているものも多く、車検制度の厳しい日本では度胆をぬくようなコンディションの自動車が走っています。下の写真のクラウンやプラッツのように、バンパーが外れたまま走っているクルマも。
環境に順応するためのサバイバル術
道路環境は悪くても、現地の人たちはよりカーライフを快適に、より楽しくする術を模索しているように見えました。
例えば、こちらのカムリとビスタ。純正車高のモデルと比べるとリアが若干上がっているのがわかるでしょうか。これは、悪路の多い地域を少しでも快適に走行するために編み出されたサスペンションの「コイル増し」ではないかと推測します。純正車高のスタンスをより高いものとするため、見た目的には不恰好に見えがちですが、現地で見ると勇ましさすら醸し出しているように感じました。しかし、スタイルを崩すだけではありません。
こちらのハイエースレジアスやハイラックスサーフは、LED補助灯により競技車両のような雰囲気に。サハリンの道路は、郊外に出るとすぐに街路灯はなくなります。こんなクルマが対向車でやってきたことを想像すると目が眩んでしまいそうですが、暗い道では必要な装備なのでしょう。スタイルと機能性を両立したスタイルだと言えそうですね。
ロシア流ちぐはぐ補修
壊れた部分をそのままにするだけではありません。日本からは中古車だけではなく、自動車部品もたくさん輸入されてきます。下の写真のイプサムは車体色に対してフェンダー、バンパー、ボンネットフードがそれぞれ違っています。
さらにこちらは間違い探しのようなカローラワゴン。よく見るとフェンダーやヘッドランプ、ボンネットフードが、姉妹車のスプリンターワゴンに交換されています。ありあわせの部品からできた偶然の補修なのか、それとも熱心なオーナーのマニアックなカスタムかは不明ですが、中古部品が多く流通するロシアならではの姿だと感じました。
もうそっちにいるの!? ロシアでみる意外なトヨタ車
もちろん、サハリンだってボロボロの車ばかりが走っているわけではありません。現行モデルに近い新しいクルマだって走っています。
レクサスCT200h
カローラ アクシオ
ヴィッツ ジュエラ
ハイブリットのレクサスCT200h、現行の前期モデルのカローラ アクシオ、ヴィッツ ジュエラなど、クラスや価格帯を問わず、比較的新しいクルマを見ることができました。
街ゆく現行世代のクルマをよく見てみると、日本で走っていたときのままの車検ステッカーから日本国内での車検がまだ残っている(おそらく国内では抹消済み)個体もあり、日本車の人気を物語っているように感じました。
こうしたクルマたちが、これからロシア・サハリンの地でどんな“車生”(カーライフ)を歩んでいくんだろう? そんなことを思いつつ、新天地での活躍ぶりに心の中でエールを送ってしまうのでした。
【TUNA】
同人誌サークル INPINE代表。海外の街角で見かける自動車の写真やイラストを本にまとめている。1990年代の車を愛する1990年代生まれ北海道育ち。
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text & photo by TUNA, edit by 木谷宗義
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