世界じどうしゃ人文学 Vol.07は、前回に引き続きドイツはシュトゥットガルトの自動車の姿を眺めてみましょう。シュトゥットガルトは、ポルシェやメルセデス・ベンツのほか、大型バスの「ネオプラン」やキッチン用品の「ヴェーエムエフ」、高圧洗浄機の「ケルヒャー」といった大企業の本社が軒を連ねる工業都市です。取材に訪れた時期は年末目前で、街は人で賑わっていました。
「はたらく車」のおもちゃが充実!
シュトゥットガルトの中心街にあるおもちゃ屋さんに立ち寄ってみました。私は海外を歩くたびに必ずおもちゃ屋さんに立ち寄ります。なぜなら、置いてある玩具のラインナップから、その国で遊ばれるおもちゃの流行や子供たちの趣向が読み取れるから。中でも特に、ミニカーのラインナップは興味深いジャンルです。
シュトゥットガルトは工業都市という特色からか、普通のおもちゃ屋さんでもミニカーコーナーがかなり広めした。乗用車系のラインナップも充実していますが、注目は「はたらく車」のおもちゃたちです。
ヨーロッパのおもちゃ屋さんでよく見られる農機具系玩具は、やはり数多く並んでいました。しかも、とってもリアル! トラクターだけでなく、ハーベスター(収穫などを行う農機具)や農業用ダンプなどもあり、おもちゃを通じて学べることが多いのではないかと感じました。
こちらはタミヤでいうところの“楽しい工作シリーズ”に近そうな工作玩具。ソーラーパネルで充電を行い、走らせるキットです。日本だと、こういった自由研究のような工作キットでは架空の車種が選択されることが多いものですが、こちらはメルセデス・ベンツ Bクラスをモデル化したものでした。大人でも心くすぐられる完成形のイラストに、グっと来てしまいませんか?
街を走る「はたらく車」たち
今度は街へ出て、「はたらく車」を見ていきましょう。シュトッゥトガルトではどんな「はたらく車」事情が広がっているのでしょうか?
メルセデス・ベンツ Eクラスステーションワゴン パトカー仕様
メルセデス・ベンツ Eクラス タクシー仕様
フォルクスワーゲン・シャラン タクシー仕様
日本では見かけないフォルクスワーゲン・クラフター
「世界じどうしゃ人文学 Vol.07」でもご紹介したように、タクシーやパトカーなどセダン/ステーションワゴンタイプの「はたらく車」には、メルセデスが使われていることが多いようです。ワゴンタイプのタクシーや小型バスでは、フォルクスワーゲンなども多く用いられていました。
ドイツの商用車メーカー「MAN」のバス
連結バス仕様のメルセデス・ベンツ シターロ
バスは一般的なボディだけでなく、連結タイプも走っていました。車両はノンステップタイプが主流で、車輪の付いたベビーカーなども乗り降りしやすいようになっています。
町はずれや停留所の隅で停まっているバスを観察していると、表示幕には何やらコーヒーカップのマークが。これは何でしょうか?
他のバスを正面から見ると「PAUSE」の文字。運転手さんが休憩中、ということなのでしょうね(笑)。お客さんにも運転手さんにも優しいバスに驚きます。
クラシックなクルマも走る
ヨーロッパの多く都市で、排ガス基準による乗り入れ規制が実施されるように、シュトゥットガルトでも、2019年1月から「ユーロ4」基準に満たないディーゼル車の中心市街地での走行が禁止されます。2020年5月以降は、より厳しくなり「ユーロ5」基準車にも走行制限が設定される予定です。環境には優しい反面、古い自動車には厳しい時代になってきたと言えます。
今でこそ、ネオクラシックやヤングタイマーなどと呼ばれる少し古いクルマたちの姿もよく見かけますが、数年後にはこうしたオールドタイプの大衆車は台数を減らしてしまうかもしれません。
ひょっとしたら今後レアになる……かもしれない、シュトゥットガルトのネオクラシックな車たちを覗いてみましょう。
メルセデス・ベンツ 190E
メルセデス・ベンツ 300E
駅近くのパーキングにもまだ多くの190Eやミディアムクラス(Eクラス)を見かけました。
メルセデス・ベンツ SEC。品のいい住宅街に映えるツートンカラーが眩しい
メルセデス・ベンツ ミディアムクラス・クーペ。未だバリバリ現役といった雰囲気
BMW 5シリーズのおそらく廉価モデル。ディッシュタイプのホイールが今見ると新鮮
メルセデス・ベンツ T2
フォルクスワーゲン・パサート。フロントグリルレスのデザインに1980年代後半~1990年代初頭のトレンドを感じる
フォルクスワーゲン・ゴルフII
フォルクスワーゲン・ポロ。ゴルフとも似た意匠を持つ初代モデル
アウディ・100アバント。空力にこだわった大型ステーションワゴン
オペル・カリブラは、かつてのドイツ・ツーリング選手権でも活躍したスペシャリティ・クーペ
フォード・エスコート(左)とフォード・フィエスタ(右)。世代こそ異なるものの纏う空気が似ている2台
ここまではドイツブランドのクルマを中心にご紹介してきましたが、国内未発売車も含め、日本ブランド車も数多くみかけました。
三菱・スペーススター。三菱・カリスマと同じオランダのネッドカーで生産されたモデルで、ディーゼルエンジンはルノー製の1.9Lを搭載。写真は1.8LのGDIエンジン車
三菱・コルト。日本では5代目ミラージュとして販売されたモデル
スズキ・スイフト。日本で1980年代後半~1990年代に販売されていたカルタスで、欧州の一部では2000年代前半まで販売された
マツダ・323F。日本名ランティス・クーペ。見覚えのないホイールキャップだが、純正だろうか
これらのクルマのすべては排ガス規制の対象になるわけではありませんが、どれもすでに20年前後が経過したクルマばかりです。近い将来に代替の対象となり台数を減らしてしまうのではないかと思うと、さみしく感じますね。
モノを永く使う文化が根付くヨーロッパの土地。でも、モノにはいつか終わりがある。だからこそ、世界の自動車を自分の眼でたしかめたいものです。
【TUNA】
同人誌サークル INPINE代表。海外の街角で見かける自動車の写真やイラストを本にまとめている。1990年代の車を愛する1990年代生まれ北海道育ち。
ブログ:http://inpine.blogspot.com/
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text & photo by TUNA edit by 木谷宗義
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