2017年3月のジュネーブモーターショーで「A110」が発表され、「アルピーヌ」というブランドが復活を果たしました。アルピーヌと聞いても、馴染みのない人も多いかもしれませんが、一方でコアなファンが多いブランドでもあります。では、アルピーヌとはいったいどんなブランドなのでしょうか？
ルノー車を手がける「街のショップ」からスタート
アルピーヌのルーツは、1950年代まで遡ります。フランスのレーシングドライバーでありルノーのディーラーも営んでいたジャン・レデレ氏が、ルノーのクルマを改造して性能を高めたり、レース仕様を開発してモータースポーツに参戦したりしたことに端を発します。
同氏は、1955年にはルノー4CV用のメカニズムを流用した、「アルピーヌ」と呼ぶ小さなスポーツカーでレースに参戦し、好成績を収めると、スポーツカーを専門に扱う会社「ソシエテ・デ・オートモビル・アルピーヌ」社を設立します。アルピーヌは、いわゆる“街のショップ”から始まったのです。
1960年代になると、独自の設計でレーシングカーを制作するようになります。初のレース専用車両「M63」は、1964年のル・マン24時間耐久レースで最高速度を叩き出すなど、性能の高さを発揮。この時期の成功が、アルピーヌのブランドイメージを大きく引き上げたといえるでしょう。
1963年に販売開始したスポーツカーの「A110」はラリーでも大活躍。1973年に初代WRC（世界ラリー選手権）のマニュファクチャラーズチャンピオンに輝いたといえば、その高い実力がわかりますね。
1973年からルノー傘下に
WRCでマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得した1973年には、ルノーの傘下となり、「A310」をはじめ「V6 GT」「V6 GT ターボ」「A610」といった「アルピーヌ」の名前を持つ市販スポーツカーを発売していきます。ジャン・レデレ氏は、関係が深まったルノーのスポーツモデルや競技車両の開発も担当するように。
1970年代は、「アルピーヌ・ルノー」としてル・マン24時間耐久レースをはじめとする世界のレースに参戦。並行して「ルノー5・アルピーヌ」など、ルノー車の高性能バージョンも手掛けるなど、ルノーとの関係はどんどん強固になりました。
「アルピーヌ」というモータースポーツ＆スポーツカー専門の高い技術力を持つ小さな組織と、「ルノー」という大きな資本を持つ自動車メーカーとの二人三脚による活動が、成功を導いたといえそうです。しかしながら、「A610」の生産を終了した1995年に、アルピーヌというブランドは一旦、幕を下ろすこととなります。
2017年「A110」でブランド復活！
そこから20年以上の時を経た2017年、ジュネーブモーターショーで往年のモデルと同じ名を持つ「A110」を発表し、アルピーヌは復活を果たしました。実は、それに先立って2013年からレースにも参戦するなど、モータースポーツ活動も再開。かつての栄光を再び得る状況は整いつつあったのです。
新世代「A110」は、2018年に日本にも上陸。6月に50台限定の「プルミエールエディション」が発売されたあと、9月にはカタログモデルとして「ピュア」と「リネージ」が発表され、本格的な導入が始まりました。
ルノー・スポールはアルピーヌだった!?
ところで、1995年でアルピーヌとしての活動を中止していたアルピーヌの組織ですが、実はモータースポーツ活動や高性能市販車と競技車両の開発＆製造自体は続いていました。それが「ルノー・スポール」です。
コンパクトカーの車体にV6エンジンをミッドシップ搭載した市販車「ルノー・クリオV6（日本名ルーテシアV6）」をはじめ、「R.S.（ルノー・スポール）」と呼ばれるルノー車をベースにした市販高性能車両の開発（と一部車両の生産）を担当。「ルノー・スポール」としてのモータースポーツ活動も、担っていたのです。
実はアルピーヌの本拠地とルノー・スポールの本拠地が、どちらも同じドーバー海峡に面した港町「ディエップ」にあるのは、そのためです。ルーテシアやメガーヌに設定される「R.S.」シリーズは、日本でも人気の高いスポーツモデル。アルピーヌの復活で、フランスのスポーツカーはさらに盛り上がりを見せそうですね。
text by 工藤貴宏 edit by 木谷宗義
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