フォルクスワーゲンのコンパクトSUV、ティグアンが2代目に進化しました。近年、日本でも国内外メーカーが積極的に新型車を投入する人気のカテゴリーのコンパクトSUVだけに注目している方も多いことでしょう。
新型は、現行型であるゴルフ7より採用されている新しい生産モジュール「MQB」を採用したVolkswagen初のSUVで、安全性と快適性に磨きがかけられたといいます。さらにVWの総合安全コンセプト「Volkswagenオールイン・セーフティ」に基づき、全グレードで充実の先進安全機能を標準化。その安全性は、欧州の自動車安全評価基準のEuro NCAPの最高評価5スターに輝いています。そして、ティグアンは、日本ではヒットとはならなかったものの、本国ドイツではデビューより9年連続でコンパクトSUV販売ナンバー1を記録した人気車。それだけに、新型への期待は高まります。
スタイルは、エッジの効いた力強くスポーティなものに進化。SUVの力強さだけでなく、都会的なイメージも兼ね備えています。特に今回試乗したR-Lineは、専用のエアロと19インチホイールが標準装備されているので、そんなキャラクターがより強調されています。旧型と比べて大きく感じますが、実際に少々サイズアップ。しかしこれも欧州でのニーズに応えてのこと。より使いやすく進化したということなのでしょう。
パワートレインは、最新VW車に採用されている1.4TSIエンジンで、最高出力150ps、最大トルク250Nmを発揮するので、パワフルとまではいきませんが、必要十分な性能は備えています。駆動方式はFWDでトランスミッションは6速DSG、この組み合わせは全グレード共通。随分シンプルな構成となっています。しかし、昨今VWは段階的にグレードを増やす傾向にあり、今後、パワフルな2.0L仕様やAWDなどの追加が予測されます。
早速、都心で試乗をしてみました。乗り始めてすぐ感じたのは、乗り味がマイルドになったこと。ステアリングも軽めでDSGの変速もスムースさを重視したセッティングがされており、サイズから想像するよりもずっと扱いやすく仕上がっています。なので、R-Line=スポーティと期待するとやや肩透かしかも……。そこでハイラインにも乗ってみました。セッティングのキャラクターからはこちらの方がベター。ソフトなタッチと上品な装飾が実にマッチしているように感じます。つまりティグアンは、大人なSUVへと進化しているのです。このため、R-Lineはドレスアップ仕様と捉えるべきでしょう。ただタイヤもサイズアップするので、乗り心地は、やはりハイラインの方が良いです。
さて、VWがアピールする「つながるSUV」についても解説しましょう。これは、コネクティビティ機能を強化したことを指しています。全グレードで、android AutoとCarPlay、MirroLinkに対応したApp-Connectを搭載。これによりスマホの対応アプリを車載モニターで使用することができます。つまりナビゲーション機能がオプションとなるコンフォートラインでもスマホのナビで代用ができるのです。また上級グレード、ハイラインとR-Lineに標準となる車載システム「Discover Pro」ではテレマテックス機能“Guide & Inform”を搭載。これは、スマートフォンやWi-FiルーターでテザリングすることでVWの専用サーバーから様々な情報が得られるというもの。これにより空き情報を含めた駐車場検索、価格情報付きのガソリンスタンド検索などを実現。さらにナビゲーション機能では、Google EarthやGoogle Street Viewを用いた表示や目的のGoogleオンライン検索なども可能となっています。これによりナビ使用時に感じる+αの情報があれば……という欲求は解消されるかも。最も大きなメリットは、エントリーのコンフォートラインでも、ナビを装着せずとも車載モニターでナビゲーションが利用できるようになったこと。やはり安全面を考えると、スマホをクレードルで装着して使うより、車載モニターを利用し、車両側の操作系で操作した方が断然安全です。ただ、テザリングが必要なテレマテックス機能“Guide & Inform”は、ユーザーのスマートフォン契約に依存した通信費負担が発生するので賛否が分かれる点かもしれません。ただ、このような車載機能はどんどん進化してくるでしょうから、将来的にはスマートフォンキャリアの対応にも、影響を与えるかもしれませんね。
1.4TSIとFWDのみの絞られたラインアップでスタートした新型ですが、パサートがそうであったように、間違いなく今後、ラインアップの拡大が図られていくはず。このため、AWD仕様やパワフルなエンジンを望むなら、しばし待ちとなります。しかしながら、先代よりも色々な面で扱いやすさが進化しているので、その判断はFFモデルを試してからでも良いかもしれません。
text & photo by OHTO Yasuhiro