エンジンルーム、キャビン(車室)、荷室、主に3つの部分から成り立っているクルマのボディ。レーシングカーのように荷室がない場合もありますが、どのクルマも基本的な構成は同じです。でも、その構造にはいくつかの種類があって、特性に合わせて使い分けられています。
自動車のボディ構造は大きく分けると、「フレーム構造」と「モノコック構造」の2種類。「フレーム構造」は、エンジンやサスペンションなどが取付けられたフレームシャシーの上にボディが載せられている構造。「モノコック構造」は、シャシー(車台)とボディが一体化されている構造です。まずは、「フレーム構造」から見ていきましょう。
商用車やオフロード4WDに使われるラダーフレーム構造
独立したフレームの上にエンジンやサスペンション、そしてボディが乗る「フレーム構造」は、さらに「セパレートフレーム」と「アンセパレートフレーム」の2つに分けることができます。より身近なのは、「セパレートフレーム」の一種で、「ラダーフレーム構造」と呼ばれるもの。
その名のとおり、はしご状のフレームにエンジンやサスペンションなどが取付けられ、ボディが載せられる構造です。下の写真を見ると、その構造がわかっていただけるのではないでしょうか?
トヨタ・ランドクルーザー200のラダーフレームシャシー
ラダーフレーム構造は、仕組みがシンプルであることから、自動車が生まれた当初から用いられてきた構造。メリットは、仕組みがシンプルであることに加え、製造が容易であること。トラックの荷台など、車体架装の自由度が高いことや堅牢性が高いことなどがあり、現在もトラックやバス、写真のランドクルーザーのようなオフロード4WD、ハイエースやNV350キャラバンのような商用車で採用されています。デメリットは、コンパクトにしづらいことやボディ剛性が得にくいこと、重量がかさむことなど。そのため、乗用車にはほとんど使われなくなりました。
もう一方のフレーム構造「アンセパレートフレーム」で主に使われているのは、「マルチチューブラーフレーム」という構造です。これは、多数の小径鋼管を組み合わせて骨格を作るもの。ここに、エンジンやサスペンションなどが搭載されます。マルチチューブラーフレームは、軽量で修復が容易といったメリットがある反面、大量生産に向かないため、ほとんどが少量生産のスポーツカーやレーシングカーにしか使われていません。
TS050 HYBRID
乗用車の主力「モノコック構造」
現代の乗用車のほとんどが採用している「モノコック構造」は、簡単に言うと、シャシーとボディが一体化し、独立したフレームを持たない構造。シャシーとボディが一体になっていることから軽量に作ることができ剛性も高いことから、乗用車に向いている構造です。また、ボディ全体が構造部材として機能するため、衝突時に骨格全体で衝突エネルギーを吸収できるといった、衝突安全面でのメリットもあります。
レクサスGS-Fのモノコック
レクサスGS-F
デメリットは、大きな衝撃を受けて変形してしまったとき、修復が難しいこと。また、トラックの荷台を架装するように、ボディに手を加えることができないこともデメリットと言えますが、乗用車でボディ架装をするケースはほぼ皆無なので、大きなデメリットとは言えないでしょう。ちなみに、よく中古車で「修復歴あり」となっているクルマは、一般的に骨格部分の損傷を修復したものを言います。
モノコックの素材は鋼板が一般的ですが、アルミを用いたり、BMW iシリーズ(i3、i8)のようにCFRP(カーボンファイバー強化プラスチック)製を組み合わせたりと、軽量で高剛性の新しい素材も用いられるようになりました。
BMW i3、i8
ラダーフレームのように古くから変わらない構造もあれば、新素材の開発などとともに変わっていくモノコック構造もある。さまざまな技術が適材適所で使われていることも、クルマのおもしろさのひとつではないでしょうか?
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text by 木谷宗義
photo by トヨタ自動車 BMW