自動車の心臓であるエンジンには現在、大きく「ガソリンエンジン」と「ディーゼルエンジン」の2種類が存在しています。化石燃料を燃焼(爆発)させ、ピストンの上下運動を回転エネルギーに変えていることは同じですが(ロータリーエンジンは例外)、両者は燃料や燃焼の原理などが違い、その仕組みの違いからそれぞれ異なる特性を持っています。
スパークプラグで点火するガソリンエンジン
現在、乗用車用エンジンの主流となっているガソリンエンジンの特徴は、比較的高回転まで回ること、振動が少なく音も静かであることなど。小型化が可能で、軽量であることも特徴のひとつです。
マツダ CX-5のガソリンエンジン
仕組みの上でディーゼルエンジンと大きく違うのは、燃焼方法にあります。ガソリンエンジンは、スパークプラグ(点火プラグ)によって電気的に発生させた火花で燃料(混合気)に点火するのです。ガソリンという燃料は、「自己着火しにくいが蒸発しやすい」という特徴を持っていることから、このような燃料方法が採用されています。
昔は機械式のキャブレターを使って混合気を作っていましたが、今は電子制御式のインジェクターが主流。また、混合気をシリンダーに送り込むのではなく、空気のみをシリンダーに送り込み、燃料をシリンダー内に直接噴射する「直噴式」も増えています。また、小排気量エンジンをターボチャージャーで過給し、1500ccでも2000ccクラスのパワーを出す「ダウンサイジングターボエンジン」もトレンドです。
日産が、圧縮比を無段階で変化させる「可変圧縮比エンジン」を発表したり、マツダがHCCI「予混合圧縮着火」エンジンを開発していたり、まだまだガソリンエンジンの進化は続きます。それぞれの技術については、また改めてご紹介しましょう。
ディーゼルエンジンは圧縮着火
ディーゼルエンジンの大きな特徴は、トルクの大きさです。一般的にガソリンエンジンと比べると低回転域で粘り強いトルクを発生することから、力強い加速が得られます。
そして、ガソリンエンジンよりも熱効率に優れているため、燃費が良いことも特徴。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの両方をラインナップするマツダ・デミオの場合、JC08モード燃費はガソリンエンジン搭載車が最高24.6km/Lなのに対し、ディーゼルエンジン搭載車は最大30.0km/Lとなっています。
マツダ CX-5のディーゼルエンジン
ディーゼルエンジンの燃料に用いる軽油の特性は、ガソリンと反対で「蒸発しにくいが自己着火しやすい」というもの。そこでディーゼルエンジンでは、スパークプラグを用いず、圧縮で起きる自己着火によって燃焼を行います。
燃料が自己着火する温度になるまで圧縮するため、一般的にガソリンエンジンより圧縮比は高く、高い圧縮に耐えるため、エンジン本体が大型になってしまいます。また、燃焼の際の音や振動もガソリンエンジンに比べると大きくなりがちです。
ディーゼルエンジン特有のデメリットが技術的にクリアできたことから、今でこそマツダのSKYACTIV-Dを始めとした乗用車用ディーゼルエンジンも増えていますが、それまでは低回転から大きなトルクを発生すること、熱効率がよく燃費に優れることから、バスやトラック、重機といった大型車両や船舶などに用いられてきました。
マツダ CX-5
それぞれに特色のあるガソリンエンジンとディーゼルエンジン。どちらのエンジンが優れているというのではなく、用途や目的に応じた“使い分け”が大切です。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンだけでなく、電気モーターと組み合わせたハイブリッドやピュアEV(電気自動車)と、クルマのパワートレインも多様化している時代。これからどんな進化を遂げ、どんなクルマが生まれてくるのか、大いに楽しみなところです。
<関連記事>
【石川真禧照さんから出題!】日本初のDOHCエンジンといえば?
https://car-days.fun/blog/article/2990
カタログに記載される「JC08モード」とは?
https://car-days.fun/blog/article/2181
マツダだけが育ててきた孤高の技術「ロータリーエンジン」
https://car-days.fun/blog/article/1097
MT、AT、CVT…多様化するトランスミッションの種類と特性
https://car-days.fun/blog/article/1042
text by 阿部哲也+Bucket
画像提供:マツダ