大空や景色を存分に体感でき、この上ない解放感を味わえるオープンカーは、ドライブ欲を掻き立ててくれるユニークな存在です。また、そのデザインもとてもスタイリッシュで、いつかは乗ってみたいと思っている人も少なくないでしょう。マツダ「ロードスター」にダイハツ「コペン」、ホンダ「S660」などを見ていると遊び心がくすぐられますよね。
ところで、ひと口にオープンカーといっても「スパイダー」に「コンバーチブル」に「カブリオレ」と、さまざまな呼び方があります。それぞれどんな意味があるのでしょうか? またその違いはなんでしょうか?
「ロードスター」もオープンカーを意味する単語
マツダ ロードスターは、言わずと知れた日本が世界に誇るオープンカーのひとつですが、この「ロードスター」とはオープンカーそのものを意味します。主にイギリスでのオープンカーの呼び方で、軽量で2シーター、幌は屋根というよりも“雨よけ”で、オープン状態がそのクルマの普通の通常であることが、ロードスターである条件です。
アウディ TTロードスター
アウディ「TTロードスター」やメルセデス「AMG GTロードスター」など、ドイツの高級車メーカーもその名を用いています。
「カブリオレ」に「コンバーチブル」「スパイダー」が意味するものは?
ロードスター以外にも、オープンカーにはさまざまな呼称が存在します。まずは「カブリオレ」。
主にBMWが「3シリーズ」や「2シリーズ」などに用いられています。1頭立て2人乗りの幌馬車の「カブリオレ」(仏:Cabrioret、独Kabriolett)が語源で、大元を辿ればヨーロッパの文化であった馬車の一形態がそのまま現代に言葉として受け継がれているのです。
BMW 2シリーズ カブリオレ
ちなみにカブリオレは「カブリオ」と呼ばれることもあります。また、オープン状態が基本のロードスターに対して、コンバーチブルはクローズ状態が基本スタイルです。
次に「コンバーチブル」。主にアメリカやイギリスで用いられ、フォード「マスタングコンバーチブル」やMINI「コンバーチブル」がその呼び名の代表格。また、ランドローバーの大ヒットSUV、レンジローバー「イヴォーク」にもコンバーチブルが追加されました。
MINI コンバーチブル
「Convertible」とは「変換可能」という意味で、オープンとクローズを切り替えることができるクルマを指します。コンバーチブルもカブリオレと同じくクローズ状態が基本スタイルとなります。
そして「スパイダー」。フェラーリやランボルギーニのスーパーカーメーカーを始め、アルファロメオなどイタリア車に多く見られます。「488スパイダー」や「ウラカンスパイダー」などが有名どころですね。
アルファロメオ 4Cスパイダー(右)
語源はいくつかあり、畳んだ幌が蜘蛛の糸のように見えることからスパイダーとなったという説と、幌のある軽量4輪馬車の「Spider Phaeton」からきているという説などがあります。スパイダーは、ロードスターと同じく、オープン状態が基本スタイルとなります。ちなみにイタリアのオープンカーには「小さなボート」を意味する「バルケッタ」と名付けられることもあります。
屋根の開き方でも違う呼称
オープンカーには、屋根の開き方にも違いがあり、それによって呼称も違ってきます。
日本車を例にすると、コペンの屋根の開き方は、リヤのトランクに屋根を“折り畳んで収納する”「リトラクタブルハードトップ(RHT)」と呼ばれるタイプです。フロントウインドウを残して、あとは屋根のすべてが取り払われるのも特徴ですね。登場間近のマツダ「ロードスターRF」もこのタイプです。
マツダ ロードスターRF
S660は、幌を“外す”タイプで「タルガトップ」と呼ばれています。外されるのは天井の部分だけになるのでBピラーから後ろがそのまま残るスタイルです。初代のNSX-Tも、このタルガトップでした。それからメーカーによって独自の呼称も見られます。ポルシェには「スピードスター」と呼ぶオープンモデルがありましたし、ロールスロイスは「ドロップヘッドクーペ(DHC)」と呼んでいます。また、タルガトップなのにロードスターと名付けられたランボルギーニ「アヴェンタドールロードスター」という例もあります。
ホンダ S660
さまざまな呼び方をするオープンカー。それぞれの呼称は、その国の文化や歴史的な名称を使うことが多いもの。しかし今は、クルマの性格や車名との響きで決定されると言えそうです。「スポーツカー」などと同じく、定義するのは難しいですが、こうして言葉の意味を紐解いてみるのも、おもしろいものですね。
text by 阿部哲也+Bucket
画像提供:アウディジャパン、FCAジャパン、ビー・エム・ダブリュー、本田技研工業、マツダ