【豆知識】Be-1にPAO……いま見ても可愛い!日産の「パイクカー」シリーズ

日産PAO

いつの時代も、未来的でスタイリッシュなデザインのクルマが中心となる一方で、どこかレトロな雰囲気を感じさせる可愛らしいスタイリングのクルマも存在するものです。例えば今なら、イタリアのフィアット500がその代表的な存在でしょう。

こうしたレトロテイストのクルマを語る上で欠かすことのできない存在が、日産の「パイクカー」シリーズです。大量生産を前提とせず、遊び心のある「とんがったクルマを作ろう」と企画されたこのシリーズは、1987年から1991年にかけて当時のマーチ(K10型)などをベースとした4モデルが販売され、いずれも大ヒットを飛ばしました。

目次

ここちよさ優先のナチュラルカー「Be-1」

パイクカーの第1弾として登場したのが、1987年の「Be-1」(ビーワン)です。「ここちよさ優先のナチュラルカー」として、やすらぎや安心感のあるデザインを追求。”丸”が随所に盛り込まれたレトロモダンなデザインで登場しました。

日産Be-1
日産Be-1(1987年)

Be-1は、発売前年の東京モーターショーに参考出品され、大きな話題に。当初から10,000台の限定生産であることが決められていたため、購入者を抽選で決定したと言います。その後も人気の高さと希少性から、中古車市場で大高騰。一時は新車価格の2倍以上で取引されたこともあったとか。東京・青山に「Be-1ショップ」をオープンし、アパレルやグッズを販売したことでも話題となりました。

ボディカラーには、野菜をイメージしたパンプキンイエロー、ハイドレインジアブルー、トマトレッド、オニオンホワイトの4色をラインナップ。キャンバストップも設定されました。Be-1は、クルマというよりもお洒落アイテムとして注目されたことが、当時としては新しかったと言えるでしょう。

クラシカルなデザインで5万台以上を生産した「パオ」

Be-1の登場から2年後、日産はパイクカーシリーズの第2弾「パオ」を発表します。思いっきりクラシカルな方向に振られたデザインは、「冒険心」がテーマ。ボディ同色のインパネや白いステアリングなど、インテリアもレトロテイスト満載でした。ちなみに、デザインはクラシカルですが、ボディ外板の一部に樹脂を使うなど、先進的な一面も持っています。

日産PAO

日産・パオ(1989年)

Be-1と同じくキャンバストップや3速ATが選択できた他、当時としては珍しい専用デザインのCDプレーヤーもオプションで設定。Be-1と違い、台数限定ではなく3ヶ月間の期間限定受注としたパオは、5万台を超える台数が生産されました。

パイクカーシリーズ初の商用車「エスカルゴ」

日産は、パオと同時にもうひとつ、ユニークなクルマを発表しました。「S-Cargo」(エスカルゴ)です。フランス語で「カタツムリ」を意味する「Escargot」と、貨物「Cargo」から名付けられたこのクルマは、1230mmの荷室高を持つ商用車でした。

日産エスカルゴ日産・エスカルゴ(1989年)

今までにないお洒落で可愛らしい商用車として、大ヒット。インテリアもユニークで、当時珍しかったセンターメーターに、日本初を謳うインパネシフトを組み合わせ、シンプルで機能的なデザインを採用していました。エンジンは、パオが1.0Lなのに対し、余裕のある1.5Lを搭載。商用車にも関わらずキャンバストップが設定されたのが、エスカルゴらしいところです。

パイクカーシリーズの最後を飾った「フィガロ」

「東京ヌーベルバーグ」のコンセプトで1991年に登場したフィガロは、シリーズ初のクーペスタイルでデビュー。エメラルド、ペールアクア、ラピスグレイ、トパーズミスト、4つのクラシカルなボディカラーに、白いルーフとホワイトレザーのインテリアが組み合わされ、今までにない高級感を感じさせた1台でした。

日産フィガロ日産・フィガロ(1991年)

「フィガロ」の名は、もちろんモーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」に由来するもの。日本専用車として2万台が限定生産されましたが、後にイギリスで人気に火がつき、多数の中古車が輸出されたようです。このスタイリングは、たしかにどこかかつてのイギリス車を髣髴とさせる何かがありますよね。

発売から25年以上、いつまでも残したい希少なクルマ

日産マーチ(初代)

これら4モデルのベース、当時のマーチ(K10型)はこんなスタイルでした。とても80年代的なデザインですが、Be-1やフィガロがこのマーチと同じ年代のクルマだと思うと、パイクカーシリーズがいかに先進的なデザインで生まれてきたかがわかりますね。25年以上前のクルマを維持するのは楽なことではありませんが、今このシリーズを所有している人たちには、いつまでも大切にしてほしいと切に思います。

text by 木谷宗義 photo by 日産ヘリテージコレクション(日産自動車)

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