クルマ好きなら、好きなクルマを目の前にしたときはもちろん、好きなクルマを頭の中で想像するだけでワクワクしますよね。「クルマへの想い」は、自動車メーカーの人たちも同じです。
株式会社オーテックジャパンは、自動車メーカーでは対応しづらいニーズに応えるため、1986年に設立された日産自動車グループ内の特装車メーカー。救急車やパトカーといった「働くクルマ」から、日産自動車のスポーツグレードに相当する「NISMO」シリーズのようなカスタマイズカーまで、日産車をベースにさまざまなクルマを作っています。
そんなオーテックジャパンの中には、さらに「クルマのおもしろさ」を追求するサークルが存在します。それが、「ワクワクモータース・チガサキ」です。
時間外に“開業”し、自分たちが欲しくなるクルマを提案し、実際に製作するのがこのサークル。今回は、この社内サークルが生み出した「マーチ・ボレロR」をクローズアップしてみました!
今回、紹介する「マーチ・ボレロR」は、このサークルの第2作目。ちなみに記念すべき第1作目は、V36型スカイラインセダンをベースに、専用の吸排気系チューンやマニュアルトランスミッション化、足回り強化、オーバーフェンダー化などを施したFRスポーツセダン「ワクワクモータース・チガサキ A25」でした。
ライバルはマーチNISMO!?
今回の主役、「ワクワクモータース・チガサキ マーチ・ボレロR」は、日産自動車のコンパクトカー「マーチ」の1グレードで、オーテックジャパンが手がける「ボレロ」をベースにしたホットハッチです。オーテックジャパンでは、マーチのスポーツモデル「マーチNISMO」と「マーチNISMO S」の開発・生産もしていますが、このボレロRは同じスポーツでもその味付はまったく別物。文字通り、ドライバーをホット(辛口)にさせる1台なのです。そのデザインからもわかるように、オーテックジャパン創立30周年を記念した、30台の限定モデル「マーチ ボレロA30」の元になったクルマでもあります。
オーテックジャパンの成富さんとともに。ナンバープレートも「89-89(ワクワク)」
搭載されているエンジンは「ノート・ライダー」に搭載される1.5Lエンジンをベースに、コンピューターと吸排気系のチューニングを施し116馬力を発生します。つい右足に力が入ってしまうような気持ちいい快音が聴こえてくるエンジンです。このエンジンに組み合わせられるトランスミッションは商用車の「NV200バネット」用。しかもインドネシア仕様のローギアードな5速MTが搭載されているのだとか。
日産ノートライダーパフォーマンススペック用の「HR15DE」がベース
シャシー/足回りにはオーリンズ製のサスペンションを採用する他、剛性向上のためにAWDモデルのフロアにするという思い切ったチューニングが。ブレーキ関係もフロント/リアブレーキを上級の他車種から流用し、スポーツ走行時の容量不足を補っています。
ホイールは「RAYS GRAM LIGHTS 57V」。リアバンパーはワンオフだ
クルマのイメージを決めるホイールは、ドライビングの楽しさを重視して195/55R15という幅広タイヤを装着。このワイドなタイヤを収めるため、ホイールアーチにはワンオフのオーバーフェンダーがビス止め装着されています。「湘南サンセットオレンジ」と名付けられたボディカラーは、北米向けフェアレディZのカラーだとか。
ホイールアーチを覗くとビス止めされていることがわかる。
オーテック流の走りの楽しさを“誰でも”楽しめるインテリア
インテリア各所にも、細かなこだわりが行き届いています。シートはAUTECHロゴ入りの「レカロSR-6」セミバケットシートでホールド感と長時間の乗り心地を両立。助手席が、福祉車両に装備される回転式シートになっているのが、オーテックジャパンらしいところ。メーターは、視認性を考慮してラティオ用のファインビジョンメーターに「AUTECH R」の刻印した、ワンオフ品に変更しています。ステアリングは、マーチNISMO 用のレーシーなレザー/アルカンターラ仕様に。
写真では確認できないが回転部には「AUTECH」のエンブレムが装着されている
たった5分でもニヤける。これほど「気持ちいいクルマ」はそうはない!
このボレロRに出会ったのは、横浜・新山下にある「イエローハット新山下店」で開催されたカーミーティング「Fun2meeting」。このイベントにボレロRが、特別ゲストとして展示されていたのです。そして、このイベントの合間を縫って、ほんの数分でしたが試乗する機会をいただきました。
運転席に体を収めてシフトレバーに手を伸ばすと、思いのほかショートストロークのカチリした剛性感にゾクッとします。クラッチを繋げて走り出すと、車内には心地よいチューニング直4エンジンサウンドが!
ブラック基調のインテリアに、ボディカラーともコーディネートされたレッドのアクセントが光る
アクセルペダルを踏み込めば、快音とともに約1トンの軽量な車体をぐいっと引っ張ってくれます。「右足とエンジンが繋がった!」と思うぐらいレスポンスがいいので、「ワインディングやミニサーキットで走ったら…」と想像するだけでワクワクしてしまいましたね。ステアリングは適度に軽く、まるでレーシングカートのように「スッ、スッ」とクルマの向きをスムーズに変えることができます。
オーテックジャパンの技術力と「理想のクルマ」への想いがここに
時間にしてわずか5分ぐらいの試乗だったのですが、「もう誰にも渡したくない」と思ってしまいました。これほど気持ちのいいクルマを運転したのは初めてかもしれません。このボレロR、元々はレンタカーとして酷使されていた個体だったそう。それが、ここまで素晴らしいクルマに仕上がっているのですから、オーテックジャパンの技術力と同時に理想のクルマを作り上げる執念のようなものを感じずにはいられません。
ちなみにこれはオーテックジャパン設立30周年記念車として30台が限定販売された「マーチ ボレロ A30」
<関連リンク>
オーテックジャパン公式Youtubeチャンネル「ボレロR・製作記」
https://www.youtube.com/watch?v=dTMyAkZQs7s
text & photo by クリハラ ジュン+Bucket
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