女性を連れてドライブに行くのは、いつの時代も男性の憧れです。特に現在は、SUVが女性からの評判もよく、「デート向きのクルマ」と言われています。SUVのカッコよくて機能的なスタイルが、女性の心に響くのでしょう。
ドライブデートが流行りだしたのは1980年代のこと。バブルに向かうと同時に、マイカーの所有も男のステータスとなり、当時の若者の多くがクルマに憧れを持っていました。特に80年代初頭に登場した初代「トヨタ・ソアラ」と2代目「ホンダ・プレリュード」を始めとした2ドアクーペは、デートに適したお洒落で高級感溢れるスタイリングが時代のニーズにフィットし、「デートカー」というジャンルを生み出しました。
そこで今回は、当時を象徴するデートカーをご紹介します!
国産クーペの最高峰、みんなの憧れとなった初代「ソアラ」
1980年代のトヨタのイメージを牽引し、欧州のクーペにも対抗しうるパーソナルカーとして1981年に登場したのが初代「ソアラ」です。2.8Lの直列6気筒DOHCエンジンは、当時の国産車で最高峰のパフォーマンスを誇り、高級パーソナルクーペ市場において大ヒット。若者の羨望の的になりました。
トヨタ・ソアラ(1981年)
低く構えたロングノーズのデザインは斬新で、「大人のクルマ」を感じさせるお洒落なもの。この高級感溢れるスタイリングが、女性のハートをも掴んだんですね。当時、女子大の前には、多くのソアラが女の子を待っていたとも言われています。
デートカーという言葉を生み出した2代目「プレリュード」
スポーツカーなどに使用されるダブルウィッシュボーンサスペンションや、4WS機構などを採用して1982年登場したのが2代目「ホンダ・プレリュード」。まるで欧州車のようなワイド&ローなボディラインやリトラクタブルのヘッドライトが若者たちの憧れの的となり、60万台を超える大ヒット車種になりました。
ホンダ・プレリュード(1982年)
スタイリッシュなボディラインだけではなく、全車に標準装備されていた電動サンルーフも憧れ度を高くした一因。「デートカー」という言葉は、このクルマが大ヒットしたことで生まれたと言われています。プレリュードに乗ってさえいれば女性にモテたとか。助手席シートの運転席側にリクライニングノブが付いていて、ドライバーが簡単に助手席を倒せるようになっていたのは、デートカーだから!?
1980年代後半のデートカーを象徴する「シルビア」
ドリフトのベース車としていまだに根強い人気のあるS13型「日産・シルビア」。MTのFR車ということで、どちらかというとスポーツカーのイメージが強いですが、実はプレリュードの牙城を崩した1980年代後半を代表するデートカーなのです。
日産・シルビア(1988年)
日産もデートカーとしてシルビアを売り出し、「アート・フォース」と名付けられた未来的なデザインがファッション誌などにも取り上げられ、女性からの支持を集めました。結果30万台を販売するシリーズ随一のヒット車種となったのです。今、街で見かけるシルビアの多くは、走りのカスタマイズが施されていますが、こうしてノーマルの状態を見てみると、ソアラやプレリュードの流れを汲む、パーソナルクーペであることがわかりますね。
ハッチバックで大ヒットした5代目「ファミリア」
2ドアクーペではありませんが、1980年に登場した5代目「マツダ・ファミリア」もまた、若者の支持を集めたクルマです。特に「赤いファミリア」は社会現象にもなったほどの大ヒット車種となりました。
マツダ・ファミリア(1980年)
ハッチバックのボディは、クルマを使用して趣味を楽しみたい若者に瞬く間に受け入れられ、サーフボードをルーフラックに乗せた赤いファミリアがファッションに。「陸(おか)サーファー」という流行語も生み出しました。生産開始からおよそ2年で100万台を販売し、第1回日本カー・オブ・ザ・イヤーにも選出されています。
クーペから新しいクルマを求め始めた人にヒットした「パジェロ」
1980年代後半は、まだまだシルビアを始めとしたクーペが「若者のクルマ」の象徴であった一方で、新しい形をクルマに求める人たちも増えてきました。そんな中ヒットしたのが国産4WDの雄「三菱・パジェロ」です。
1987年、映画「私をスキーに連れてって」が公開され、クリスマス前後に女性をスキーに誘うのが流行りに。クーペやハッチバックといった既存スタイルのクルマに飽きた人たちが新しいクルマを模索し始めたこともあって、季節や天候を選ばないオールラウンドに使えるパジェロが、デートカーの一翼を担いました。
三菱・パジェロ(1986年)
同時に若者だけでなく、家族持ちの人たちもクルマに新しい趣味性や機能性も求めるようになり、パジェロはのちの4WDブームの牽引役になりました。バブルの崩壊と4WDブームを境に、デートカーの時代は終焉。景気の後退の影響もありますが、1980年代の若者は1990年代に入って家庭を持つようになり、クルマに対しても新たな価値を求めるようになったのかもしれません。ただ、この華やかな時代を彩ったクルマたちが持つワクワク感は、いつの時代になっても薄れることはないでしょう。
text by 阿部哲也+Bucket
写真提供:トヨタ博物館、日産ヘリテージコレクション、本田技研工業、三菱自動車、マツダ
▼くるまマイスター検定の試験に役立つ豆知識はこちら
https://car-days.fun/blog/category/kuruken