クルマに乗るとき必ず着用する3点式シートベルト。クルマにシートやハンドルがついているのと同じように、当たり前に存在しているこの装備、世界で初めて実用化したのはボルボでした。
1959年エンジニア、ニルス・ボーリンによって実用化
1927年に最初のモデル「OV4」を発表したボルボは、創業当時から「人を中心に考えた設計を行う」という理念を持っており、人に優しいクルマづくりを行うメーカーでした。耐久性や信頼性で高い評価を得たボルボは、次第に安全性を追求するようになります。
そして1959年、世界で初めての3点式シートベルトの実用化に成功するのです。それまでも腰回りだけを保持する2点式シートベルトはありましたが、それでは衝突時に上半身が大きく動いてしまいます。そこでボルボのエンジニア、ニルス・ボーリンは3点式シートベルトを発明。実用化を果たします。ちなみに、世界で初めて3点式シートベルトを搭載したクルマは、当時のボルボの主力車種「PV544」でした。
3点式シートベルトを発明したニルス・ボーリン
ボルボ PV544
1950年代当時、3点式シートベルトの実験を行う映像がボルボ公式YouTubeチャンネルで公開されているのでご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=6t_3nWbN3-8
特許を無償公開するという英断
もちろんボルボは、この新しい安全装置について特許を取得します。しかしボルボは、「誰もがこの技術の恩恵を得られるように」と、この特許を無償公開したのです。3点式シートベルトが急速に普及したのも、今すべてのクルマに3点式シートベルトが装備されているのも、特許を無償公開したからこそ実現したことでしょう。
ボルボは、この3点式シートベルトによって100万人以上の人の命を救ってきたと言われ、ドイツの特許登録機関は「1885年から1985年の100年間で人類に大きく貢献した8つの最も重要な発明のひとつ」に、この3点式シートベルトを挙げています。
ボルボXC90(2016年)のシートベルト
ボルボの安全技術は3点式シートベルトにとどまらず、今では当たり前になっている「後ろ向きチャイルドシート」もボルボが開発したもの。また、サイドエアバッグやビルトイン式のチャイルドシート、歩行者エアバッグもボルボが他社に先駆けて実用化してきました。
インテグレーテッド・チャイルド・クッション(1992年)
創業当時から安全性を追求してきたボルボは今、「2020年までに新しいボルボ車での交通事故による死亡者や重傷者の数をゼロにする」という目標「VISION2020」を掲げています。一見、無謀にも思える目標ですが、具体的な数字を掲げているということは、決して夢物語ではないのでしょう。
「ボルボ=安全なクルマ」というイメージが広く浸透しているのは、3点式シートベルトに端を発する「安全への追求」のためだったのです。
text by 木谷宗義,photo by ボルボ・カー・ジャパン
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