冬場、特に降雪時の運転には注意すべき点がいくつかありますが、最も重要となるのが車と地面が唯一接触する箇所であるタイヤです。
凍結路を走行するにはスタッドレスタイヤが必須ですが、タイヤチェーンはどうでしょうか?
もしくはスタッドレスタイヤは装着せず、ノーマルタイヤとタイヤチェーンの組み合わせではどうなるのでしょうか?
今回はスタッドレスタイヤとタイヤチェーンの必要性や活用方法について、それぞれのメリット・デメリットなどを詳しく解説していきます。
雪道を運転する時の注意点
まず凍結路を走行する際の注意点ですが、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンなどの装備だけでなく、運転のテクニックが必要になる場面が多くあります。
雪道の運転に慣れていない方は、人や車がいない場所で少し練習し、感触を確かめてから走行することをおすすめします。
誰でも意識すればできることもあれば、少しコツが必要な運転技術を使わなければならないこともあるので、雪道の運転で最低限知っておきたいことについて解説します。
”急”のつく運転は避ける
普段の運転でも同様ですが、特に雪道の運転では3つの”急”がつく運転はしないように注意しましょう。
3つの”急”とは、「急発進」「急ブレーキ」「急ハンドル」です。
凍結路での急発進はタイヤを空転させ、発進できなくなって身動きが取れなくなる原因になります。
タイヤが空転して発進できなくなると、車を押して滑らない場所まで移動させたり、タイヤ周辺の雪や氷を除去したり、砂や砂利を撒くなどして対策しなければなりませんが、どれも1人では難しかったりスコップなどの道具がないと困難です。
発進時には、できるだけ地面とタイヤの摩擦を感じながら滑らないようにゆっくりアクセルを踏み込んでいきましょう。
凍結路での急ブレーキは車が止まれないようになり、コントロールを失うことで事故の原因になります。
停止時には普段の運転よりも早めにブレーキを踏み始め、いつもより距離と時間を長くかけてゆっくり停止します。
急ブレーキをかけると車が滑り、スピンしてしまう可能性があり危険です。
最近の車にはABS(アンチロックブレーキシステム)というものが装備されているものがほとんどで、これは急ブレーキをかけてもタイヤがロックせず、ハンドル操作ができなくなることを防ぎ、コントロールを失いにくくするためのものです。
ABSが装備されていない車では、雪道などで車がスリップするとハンドル操作ができなくなり、予期せぬ方向へ車が向かってしまうことも。
ABSが装備されている車でも急ハンドルは避け、落ち着いてゆっくり操作することが重要です。
アクセル、ブレーキ、ハンドルの関係を理解することでより安全運転に努めましょう。
ノーマルタイヤのみで走行しない
技術が必要ない最も簡単な凍結路対策は「スタッドレスタイヤ」です。
ノーマルタイヤよりも値段は高い傾向にありますが、ノーマルタイヤとスタッドレスタイヤでは安心感がまったく違ってくるので、冬になる前、できれば秋には交換しておきましょう。
保管方法等により変わってきますが、一度購入すれば3年から4年は問題なく使用可能で、中には5年ほど使用できるタイヤもあります。
ノーマルタイヤで凍結路を走行するのはかなり危険な行為です。
雪があまり降らない地域にお住まいの方も、少しでも雪が降る可能性があればスタッドレスタイヤを装着しておきましょう。
車間距離の確保
運転中の車間距離には目安があり、30〜60km/hで走行している時は走行スピードから15をマイナスした数値が適切な車間距離となります。
例えば「50km /h」で走行している時は「35m以上」の車間距離が必要です。
60km/hを超えて走行する場合はスピードと同じだけ車間距離を空けます。
「80km/h」で走行している時は「80m以上」、といった感じです。
ですがこれらは乾燥した道路を走っている時のもので、雨天時や凍結路ではもっと距離を空けて走行しなければなりません。
濡れた路面や凍結路では、乾燥しているときの2倍以上は車間距離を空け、前方の車の動きに注意して運転しましょう。
スタッドレスタイヤについて
みなさんの車はスタッドレスタイヤを装着していますか?
「ほとんど雪が降らない地域だから大丈夫」「運転技術に自信があるからノーマルタイヤで十分」と考えノーマルタイヤのまま走行してはいませんか?
いくら運転技術に自信があっても周りの人や車はどう動くか予想できませんし、天気予報が外れて突然大雪になってしまう可能性もあります。
そんな「もしも」の時に備えて早めにスタッドレスタイヤに交換しておきましょう。
次は覚えておきたいスタッドレスタイヤのメリットとデメリットについて解説します。
スタッドレスタイヤのメリット
スタッドレスタイヤはノーマルタイヤよりもゴムが柔らかく、溝が深く作られています。
タイヤを柔らかく、溝を深くすると、路面の状態に合わせてタイヤが変形しやすくなり、地面との接地面積を大きくして摩擦を強くすることで凍った路面でも滑りにくくなります。
またノーマルタイヤよりも細かい溝にすることによって、路面の水膜を吸い取りやすくなり、さらに路面との摩擦を強めることを可能にしています。
ノーマルタイヤではスリップしたりスタックしてしまうような状況でも、スタッドレスタイヤならしっかりと路面を捉え安心して運転することができるでしょう。
冬季の道路ではスタッドレスタイヤの装着が義務付けられる場合もあるので、遠回りや立ち往生を避けるためにもスタッドレスタイヤは必ず装着しておきましょう。
スタッドレスタイヤのデメリット
スタッドレスタイヤにはメリットだけでなく、いくつかのデメリットもあります。
ひとつは「燃費」、タイヤが柔らかく作られていて路面との摩擦が大きいぶん、抵抗も大きくなりノーマルタイヤよりも燃費が悪くなります。
摩擦が大きくてよくグリップしてくれるということは、「タイヤの摩耗が早い」ということに繋がります。
使用環境により違いはありますが、ノーマルタイヤよりも消耗が早く、交換のサイクルが短くなるので購入・交換費用がノーマルタイヤよりも高額になりがちです。
タイヤの価格もノーマルタイヤと比べるとスタッドレスタイヤのほうが高い傾向にあります。
ですが最近では研究・開発が進み、スタッドレスタイヤの燃費や耐久性はかなり改善され、ノーマルタイヤとほとんど変わらない水準になっているとも言われています。
各ブランドやモデルによって特徴があるので、どのタイヤが良いか見比べてみましょう。
スタッドレスタイヤのレンタル
「道具は持ってないし知識もない、雪もあまり降らないから毎年交換するのはタイヤ代や工賃がもったいない」という方はスタッドレスタイヤのレンタルを検討してみましょう。
レンタルならタイヤの保管場所も不要で、ウィンタースポーツに出かけるときや、雪が降る予報が出ているときだけ借りるということも可能です。
短期間であればレンタルの方が安く済む場合もあるので、近くにレンタルをしているお店がないか探してみましょう。
チェーンについて
スタッドレスタイヤは主に踏み固められた雪の上を走行する目的で作られています。
ではタイヤチェーンはどうでしょうか、冬の運転ではスタッドレスタイヤを装着していれば絶対安心というわけではなく、チェーンも重要な装備の一つです。
フカフカの雪の上や、アイスバーンになってしまったツルツルの路面を走るのであればチェーンは欠かせません。
冬の運転でスタッドレスタイヤとセットで用意しておきたいタイヤチェーンについて詳しく見ていきましょう。
チェーンのメリット
チェーンはスタッドレスタイヤでは対応できない場面で使用します。
深い雪道やアイスバーンなど、スタッドレスタイヤでもスリップしてしまうような状況ではチェーンが活躍します。
チェーンを装着することで雪道等でもしっかりと路面をグリップし、確実に車を動かすことが可能です。
最近では簡単に装着できるチェーンも多く販売されていて、力の弱い女性やお年寄りでも装着することができますが、できれば事前に装着の練習をしておくことをおすすめします。
いざというとき取り付け方法が分からないとなると、寒い中で長時間苦労することになるかもしれません。
またチェーンはタイヤと比べると価格が安いので購入しやすく、コンパクトに収納できて持ち運べるものなので、常に車に積んでおける携帯性も大きなメリットのひとつです。
家の中で保管する場合もタイヤを4本収納しておくとなるとかなりの場所を取りますが、チェーンならちょっとした場所さえあれば保管しても邪魔にならないでしょう。
チェーンのデメリット
持っておくと頼りになるチェーンですが、もちろんデメリットも存在します。
大きなデメリットとして「走行音」「脱着の手間」「スピード」が挙げられます。
チェーンを装着して走ると、どうしてもガチャガチャと音がして乗り心地も悪くなるので、疲労やストレスが溜まります。
チェーンの素材やメーカーによって異なりますが、チェーンを装着しての走行は速くても50km/hほどに制限されてしまうことが多く、高速道路などを走行する際にはスピードを出しすぎないよう注意が必要です。
また急発進や急ブレーキをしてしまうと、チェーンが切れてしまう場合もあるので注意して運転しましょう。
乾燥した路面ではチェーンは外さなければならないので、道路状況によっては何度もチェーンの脱着をしなければならないことも考えられます。
慣れれば脱着にはそれほど時間はかかりませんが、何度も停車して脱着するとなるとかなり面倒ですよね。
安全に走行するためには我慢しなければならない面もありますが、ここまでのことを踏まえて、チェーンを使いたくなければ外出しない、という選択肢も頭に入れておきましょう。
スタッドレスタイヤとチェーンは併用可能?
ここまでの解説を読んでいただければもうご理解いただけていると思いますが、スタッドレスタイヤとチェーンは併用することが望ましいです。
冬の間はスタッドレスタイヤで走行し、スタッドレスタイヤでは対応できない雪道などではチェーンを装着する。という使い方をすればまず困ることはないでしょう。
ですがどちらも過信は禁物です。
スタッドレスタイヤやチェーンを装着していても、3つの”急”を避け、車間距離をしっかり保って運転しましょう。
ノーマルタイヤとチェーンの組み合わせではダメ?
スタッドレスタイヤとチェーンのふたつを上手く使えば冬は乗り切れるはずですが、ではチェーンとノーマルタイヤの組み合わせではどうでしょうか?
あまり望ましくはありませんが、雪がほとんど降らない地域の保険としてチェーンを持っておく、というのであれば持っていないよりは良いです。
万が一に備えてチェーンだけは準備しておくことによって、立ち往生して身動きが取れなくなることは防げるはずです。
自分が運転する地域や気候に合わせて用意する装備を考えましょう。
チェーン装着が義務付けられている区間も
一部の道路ではスタッドレスタイヤだけでは不十分で、チェーン装着を義務付けられる場所があります。
チェーンを装着していない車はそれ以上先に進めなくなり、高速道路でチェーン規制がかかるとチェーンを装着していない車は一般道に誘導されてしまう場合も。
雪でチェーン装着が義務付けられる道路はどこか、例年の降雪情報を見ることでだいたいの予想ができます。
確実に目的地へ辿り着くためにも、雪が降ることが予想されるときはしっかり天気予報や道路情報をチェックし、大雪や吹雪になる可能性も考慮して無理な外出は控えましょう。
道路環境にあった雪道対策を
道路は毎日同じ環境ではありません。
昼と夜、雨の日、雪の日など、時間や季節によって刻々と変化していきます。
交通量が多い日もあれば少ない日もあるでしょう、運転する人間の体調によって感じ方に変化があります。
いつもと同じ道、通い慣れた道路であっても決して油断せず、その日その時の状況に合わせて最適な運転ができるよう努力しましょう。
今回解説したスタッドレスタイヤやチェーンのような道具に頼ることも時には必要です。
運転手の技術ではどうにもならないことを道具は解決してくれます、道具のことを理解することでより安全に運転ができるようになるのではないでしょうか。
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