【豆知識】乗用車4WDの元祖「スバル・レオーネ」が残したもの

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アウディの「クワトロ」やメルセデス・ベンツの「4MATIC」を始め、今、世界のさまざまなメーカーのセダンやステーションワゴン、SUVに4WD(全輪駆動)を採用したモデルがラインナップされています。しかし、高性能車のスタビリティを向上させるためにも用いられる4WDは、もともとはオフロードなどでの走破性を高めるために、商用車や軍用車に採用された技術でした。

この4WDを最初に乗用車に搭載したのは、今も「シンメトリカルAWD」の名で4WDをアイデンティティのひとつとしているスバルだったのです。

目次

きっかけは積雪地を走る東北電力からのリクエスト

スバルが初めて4WDを搭載したのは、1971年にデビューした「レオーネ」というモデル。レオーネは、レガシィ(1989年~)、インプレッサ(1992年~)が登場するまで、約20年にわたってスバルの基幹車種として活躍したクルマです。

世界初の“ジープタイプではない量産4WDモデル”として、「レオーネ・エステートバン4WD」が設定されたのは、1972年のこと。「積雪地の走破性と、快適性を備えたクルマがほしい」という東北電力の依頼に、宮城スバルが応えたことがきっかけとなりました。

宮城スバルは、スバル1000に日産・ブルーバードの後輪駆動機構を組み合わせたモデルを試作。この車両がスバル(富士重工業)に持ち込まれ、レオーネ・エステートバン4WDへとつながったのです。

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レオーネ・エステートバン4WDに採用された機構は、センターデフを持たない「パートタイム式」。状況に応じて2WD/4WDを切り替えるタイプでした。エンジンは、1.4L、OHVの水平対向4気筒。「ボクサーエンジン×シンメトリカルAWD」というスバルのアイデンティティは、このときに生まれたものだったんですね。リヤに比べてフロントのオーバーハングが長いのは、FF(前輪駆動車)らしいプロポーション。バンであっても、サッシュレスドアを採用していたのが特徴でした。

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1975年のマイナーチェンジで、セダンにも4WDモデルを設定。世界初の4WD乗用車が誕生します。

2世代目で「ツーリングワゴン」「4WDターボ」が誕生

エステートバンとセダンに4WDが設定された初代レオーネでしたが、このときはまだワゴンモデルはなく、レガシィやレヴォーグへと続く「ツーリングワゴン」が誕生したのは、モデルチェンジをして2世代目となってから。

2代目レオーネの登場は1979年。ボディサイズやエンジン排気量が拡大され、4ドアセダン、2ドアクーペ、エステートバンの他に、「スイングバック」と呼ばれる3ドア・ハッチバックも追加されました。

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1981年にマイナーチェンジが実施されると、乗用タイプの「ツーリングワゴン」がデビュー。3代目レガシィまで採用された、途中から1段高くなる2段ルーフはこのとき生まれたものでした。

そして「4WD+AT」「4WD+ターボ」「4WD+ターボ+AT」と、バリエーションを拡大し、レガシィ以降、今も続くスバルのアイデンティティを確立していきます。

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レオーネはその後、1984年に最後のモデルとなる3代目へとモデルチェンジ。1980年代になると、アウディ・クワトロがデビューし、ラリーのフィールドで破竹の快進撃を見せるなど、4WDが「オフロードでの走破性を高める機構」から「高性能車のスタビリティを向上する機構」へと、舵を切っていきます。

スバルもこの流れに乗るべく、3代目レオーネでフルタイム4WDを初搭載しました。角ばったスタイリングは、どちらかと言うと地味なものでしたが、現在のWRXやレヴォーグに受け継がれている「ハイパフォーマンスAWD」の源流が、このクルマだったのです。

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1989年に大ヒットモデル、レガシィがデビューすると、レオーネはバリエーションを縮小。そのままフェードアウトするように1991年に生産を終了しました。レオーネの名はなくなったものの、「シンメトリカルAWD+ボクサーエンジン」という根幹技術が、現在のインプレッサ、WRX、レガシィ、フォレスター、アウトバック、クロスオーバー7というスバル各車に息づいていると考えると、スバルにとってレオーネが偉大な存在だったことがわかりますね。

▼スバルの礎を築いたエンジニア「百瀬晋六」が手がけたクルマたち
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text by 木谷宗義 photo by SUBARU

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