いよいよ今冬に、新型プリウスの真打とも言えるプラグインハイブリッドの「プリウスPHV」が登場します。「三菱・アウトランダーPHEV」や「BMW i8」など、近年さまざまなクルマに採用されるプラグインハイブリッド。普通のハイブリッドとは何が異なり、どのようなメリットがあるのでしょうか?
半分は電気自動車(EV)としても使えるPHV
ハイブリッドカーとは、2つの動力を持つクルマのこと。一般的に「ハイブリッド」と言えば、ガソリンまたはディーゼルエンジンと電気モーターを組み合わせて走るクルマのことを言います。
ハイブリッドは、発進や低速域は電気モーターで、よりパワーが必要なときはエンジンでと、2つの動力のメリットを生かすことで省燃費とパワフルな走りを両立したもの。1997年12月に世界初の量産ハイブリッドカーとしてプリウスが登場して以来、徐々に普及が進み、多くのクルマが採用するパワートレインとなっています。
トヨタ・プリウスPHV(発売予定)
プリウスを例にすると、通常モデルではガソリンエンジンが発電機を作動させ、EV走行に必要な電力を発電していましたが、PHVでは外部充電をできる点が異なります。自宅に充電器を設置することで、家庭用電源から充電することもできるのです。
プリウスPHVの充電口
またプリウスPHVは、通常モデルよりも大容量のバッテリーを搭載し、EV走行ができる距離が大幅に伸びます。詳しい数値は未発表ですが、航続距離の目標値は60km以上だそうです。
つまり、片道30km以内なら、ガソリンを1滴も使うことなく出かけられるということ。日常ではEVとして、長距離ドライブでは今までのプリウスと同じような走行が可能となるのです。
余談ですが、世界で初めてプラグインハイブリッドカーを量産したメーカーは中国「BYDオート」で、プリウスPHVが初登場するより2年前の2010年だそう。
プラグインハイブリッドはヨーロッパで積極採用されている
日本メーカーのプラグインハイブリッド車は、プリウスPHVとアウトランダーPHEVぐらいですが、ヨーロッパ、特にドイツでは積極的に採用され、日本でも多くのモデルが販売されています。
メルセデス・ベンツは、そのラインナップの中でも最高クラスとなる「Sクラス」に「S550e」を設定。EV走行時の最高速度は140km/hにのぼり、フル充電で29.1kmを走ることができます。
メルセデス・ベンツS550eロング(2016年)
BMWは、「3シリーズ」にPHVの「330e」を設定しています。フル充電時のEV走行距離は35km。普通の買い物なら、電力だけでこと足りてしまいますね。そして、高級スポーツカーを製造するポルシェもPHVを取り入れています。SUVの「カイエン」と、4ドアサルーンの「パナメーラ」にそれぞれ設定し、カイエンは36km、パナメーラはなんと50kmものEV走行が可能です。
フォルクスワーゲン・ゴルフGTE(2016年)
さらにフォルクスワーゲンは、ゴルフとパサートにPHVの「GTE」を設定。ゴルフGTEで53.1kmというエコ性能を持ちながら、スポーツカーとしてのたぐいまれな運動性を両立するという楽しくて新しい価値を作りました。
大容量バッテリーはクルマを走らせるだけではない
EVに近い状態を実現し、燃料消費を限りなく抑えるというのがプラグインハイブリッドの大きな特徴ですが、搭載される大容量バッテリーは、走ること以外にも私たちに恩恵を与えてくれます。
それは「給電」です。充電した電力は普通の電力として供給することができるので、停電や災害時の電源車としても活躍してくれます。さらにPHVにはバッテリーに加えて、燃料がある限りエンジンが発電してくれるので、“災害用発電機”としても非常に有用なのです。
ガソリンを使わないEVと、航続距離の長いハイブリッドのメリットを両立し、なおかつ電源車としても活用できる。現在は日産・リーフを始めとした純粋なEVも登場していますが、航続距離に関してはガソリンエンジン車に劣るもの。PHVは現代もっとも“実用的なエコカー”だと言えそうですね。
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text by 阿部哲也+Bucket
画像提供:トヨタ自動車、メルセデス・ベンツ日本、フォルクスワーゲンジャパン