クルマの購入を考えるとき、「燃費」は気になりますよね。カタログで燃費の数値をチェックする人も多いでしょう。ここで出てくるのが「JC08モード」という表示です。
この「JC08モード」は、国土交通省によって決められた燃費や排ガスを測定する試験方法で、形式指定を受けるクルマに対し、義務付けられているもの。この数値が、私たちが目にするいわゆる「カタログ燃費」と言われるものです。
クルマの燃費とは
1リットルの燃費で、どれくらいの距離を走れるのか。これが日本においての燃費表示で、「km/L」の単位で表示されます。たとえば、燃料1リットルあたり20km走れるクルマがあるすると、燃費表示は「20km/L」です。仮にこのクルマの燃料タンク容量が40リットルだとすると、「20km/L×40リットル=800km」で、満タンから燃料がなくなるまでに、800km走行できる計算になります。
もちろん、カタログに記載される燃費が20km/Lだからと言って、必ず20km/L走るわけではなく、これはあくまでもJC08モードという試験方法で測定された数値です。走行するシチュエーションやアクセルの踏み方などで、実際の燃費は大きく変わります。
「10・15モード」と時代の移り変わり
JC08モードは、2011年から導入された、比較的新しい測定方法です。それまでは、1991年に定められた「10・15モード」で測定されていました。10の決められた走行パターンで測定する「10モード」と、15のパターンで走行する「15モード」を合わせた測定方法です。
たとえば、10モードなら「アイドリング状態で20秒」「20km/hまで7秒かけて加速」「20km/hを15秒キープ」「20km/hから7秒かけて減速して停止」…と、10のパターンが決められており、このパターンに則ってシャーシダイナモ上で走行し、排ガスや燃費を測定します。
「10・15モード」は、当時の交通状況に合わせて考案された走行パターンを用いていましたが、時代とともに交通状況が変化したことや、モード燃費と実際の走行燃費の差が大きいという問題が露わになったことから、より現実に即した測定方法として、2011年に「JC08モード」での測定が定められました。
より現実に即した「JC08」モード
「JC08モード」では、速度変化(加減速)をより細かく規定したり、それまで70km/hだった測定時の最高速度を81.6km/hに引き上げたり、より現実的な走行に近づけるための走行パターンが考案されました。平均速度は24.4km/hを想定し、「10・15モード」のようにシーンを分けずに測定します。
さらに「10・15モード」は、暖機運転を済ませてエンジンの性能を十分に発揮できる状態で測定するものでしたが、「JC08モード」では、エンジン始動直後の冷えた状態から測定を開始します。実際には、エンジンが冷えた状態から走行するケースが多いためです。
「10・15モード」から「JC08モード」への移行期には、両方の数値を併記することがありましたが、その場合、「JC08モード」の方が数値は10%ほど悪くなっていました。実際の走行パターンに近づいた結果ですね。
2011年のトヨタ・アクアは「JC08モード35.4km/L(10・15モード走行燃費40.0km/L)」と表記された
「JC08モード」によって、よりリアルな燃費に近づきはしましたが、走り方やクルマを走らせるシチュエーションは人それぞれ。条件によっては「JC08モード」よりも燃費が良くなる場合もありますし、悪くなる場合も多いものです。世界でもより正しい燃費を測定しようと、様々な試験方法が模索されています。
ただ、「JC08モード」が現代の日本の燃費の指標であることは間違いありません。クルマの性能を比べたり、その数値を目指してエコドライブに挑戦したりするのもおもしろいかもしれませんね。
text by 阿部哲也+Bucket
画像提供:トヨタ自動車(一部)