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車のノックダウン生産とライセンス生産の違いとは?メリット・デメリット、事例をご紹介

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読者の皆様は、「ノックダウン生産」と「ライセンス生産」の違いをご存じでしょうか。

どちらも海外で車を生産し、そのまま現地で販売する手法ですが、メリット・デメリットがそれぞれ異なります。
グローバル企業が安定して車を製造・販売するためだけでなく、国家同士の貿易摩擦を回避するためにも、今やどちらの生産方式も欠かせません。

この記事では、ノックダウン生産とライセンス生産の違い、それぞれのメリット・デメリットや事例をご紹介します。

ノックダウン生産とライセンス生産の違いとは?


ノックダウン生産とライセンス生産の違いを詳しく解説します。

ノックダウン生産とは?

ノックダウン生産とは、主要な部品や、場合によってはすべての部品を相手国へ輸出し、現地で組み立ててそのまま販売する方式のことです。

コスト削減効果が大きく技術流出リスクが低いため、自動車産業では特にノックダウン生産方式が多く採用されています。
鉄道車両がノックダウン生産方式で製造されている事例もあります。

ライセンス生産とは?

ライセンス生産とは、メーカーが設計図や生産技術と共に車の製造許可(ライセンス)を相手国に与える代わりに、ライセンス料を受け取る方式のことです。

自動車産業のほかに、航空機や医薬品、ファッション業界でもライセンス生産方式が多く採用されています。

ノックダウン生産のメリット・デメリット


ノックダウン生産方式のメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

自動車メーカー側のメリット・デメリット

ノックダウン生産方式の自動車メーカー側のメリットに、コストを削減できる点が挙げられます。

完成車はかさばるので、船に多く積むことは難しく、輸送コストがかさみます。輸送中に完成品がほんの一部分でも破損すると、大きな損失になるでしょう。
また、完成車は特に関税が高くかかる傾向があります。

部品または半完成品の状態であれば、密度を高めて梱包することで船に多く積載でき、故障するにしても一部の部品だけで済み、関税の負担も小さくなります。

主要な部品は自国で作るため、自社の設計技術・生産技術が他国へ流出しにくいというメリットもあります。

ただし、完成車の関税を一層高くしてノックダウン生産の工場を誘致するという国策に利用される可能性は捨てきれません。

相手国側のメリット・デメリット

ノックダウン生産は国民の雇用拡大、技術力向上、自動車産業の確立にもつながるため、相手国にとっても多くのメリットがあります。

しかし、相手国からすると部品そのものの生産はできないため、部品生産技術の向上は見込めず、完成車メーカーとしての独立は難しいといえます。

また、部品調達を他国に頼らなければならないため、国家間のトラブルや政情不安の影響で経営が成り立たなくなる恐れがあります。

ライセンス生産のメリット・デメリット


ライセンス生産方式のメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

自動車メーカー側のメリット・デメリット

自動車メーカーは、設備投資や人材育成などのコストをかけることなく、車を量産できます。

また、不測の事態が起こり自国で車の生産ができなくなっても、ライセンス生産国で製造を続けられるので、日本のような自然災害が多い国にとってはメリットが大きいといえます。

ただし、ライセンス料を受け取っているとはいえ自社の技術を他国に渡すことになるので、専門技術が流出してしまう恐れが大きいでしょう。

また、相手国の技術力が不足していると、製造が上手くいかず、自社のブランド力が低下するかもしれません。

相手国側のメリット・デメリット

ライセンス生産方式において相手国側には、他社の技術やノウハウを得てそのまま大量生産できるというメリットがあります。

ノックダウン方式と同様に、雇用の拡大、技術力の向上などにつながります。
また、多くの場合、国家間の政情に左右されず生産を続けられるでしょう。

しかし、ライセンス料を支払い続ける必要があるので余計にコストがかかります。
また、ライセンス生産の契約をする頃にはその車が旧式となってしまい人気が出ないことがあります。

ノックダウン生産とライセンス生産の事例


ノックダウン生産とライセンス生産の事例をそれぞれご紹介します。

ノックダウン生産の事例

1925年にフォードがT型フォード、1927年にゼネラルモーターズがシボレーのノックダウン生産を日本で始めました。
しかし、日米関係の悪化により両社が撤退しノックダウン生産が終了します。

第二次世界大戦によって日本の産業は壊滅的な状況になりましたが、朝鮮戦争の勃発によって変化が起こります。
スピーディに安定的に軍需品を用意するために、アメリカは日本で軍需品のノックダウン生産を始めました。

軍需品のひとつに、ジープの「CJ3A-J1」モデルが挙げられます。
中日本重工業(現三菱重工業)でジープが組み立てられ、数年後ライセンス生産の契約を結び、国産ジープがヒット商品となって50年近く量産されました。

他にも、ルノーの「4CV」を日野自動車が、フォルクスワーゲンの「サンタナ」を日産自動車がノックダウン生産方式で製造していました。

現在の日本は海外に輸出する側になり、タイや南アフリカ共和国といった東南アジア・アフリカを中心にノックダウン生産をしています。

ライセンス生産の事例

第二次世界大戦後、ドイツは東西に分断され、産業の復興がままならない状況が続きました。

今や世界を代表する自動車メーカーであるBMWは、経営が辛い1950年代にイタリアのイソ社の「イセッタ」という車をライセンス生産していました。
イセッタは2人乗りの三輪車で、フロントのドアを開閉して乗り降りするという独創的なデザインの車です。
可愛らしいルックスで軽快に走行できることも相まって大ヒットし、苦しい時期のBMWを救いました。

他にも、中国の金杯(ジンベイ)が製造する「海獅シリーズ」は、トヨタのハイエースのライセンス生産品であり、現在も生産されています。

まとめ


ノックダウン生産とライセンス生産の違い、それぞれのメリット・デメリットや事例をご紹介しました。
どちらの生産方式も自動車メーカーと相手国双方にメリットがあります。

興味のある車がどのように作られているか知りたくなったら、ぜひこの記事を思い出してください。

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