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【カーライフ】1989年生まれが選んだ1991年式 ―トヨタ・マークⅡ 2.5GTツインターボ(JZX81型)―

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あなたには、思い出のクルマはありますか? 子供のころに憧れたクルマ、免許を取得してはじめてハンドルを握ったクルマ。きっと、それぞれに思い出や記憶があるはずです。では、「子供のころの憧れを手にしたい」と思ったことは?

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この懐かしいマークIIは、JZX81型と呼ばれる1991年式の2.5GTツインターボ。オーナー氏は、まさに「憧れ」を叶えた1989年生まれの29歳です。

バブルを象徴する純白の4ドア

現在、ファミリーカーといえばミニバンかSUVですが、かつては3BOXのセダン/ハードトップが“家グルマ”の主流でした。そんな中でも白いトヨタの4ドアセダン/ハードトップは、1980年~1990年代初頭にかけての主流中の主流。特にマークⅡ/チェイサー/クレスタの三兄弟は毎月飛ぶように売れ、新車販売ランキングでも上位に位置するクルマでした。バブル時代を象徴するモデルのひとつです。

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それゆえに家族や親戚の家にあったり近所のおじさんが乗っていたりというエピソードをお持ちの方も多いのではないでしょうか? 今回紹介するオーナー氏も“自動車原風景”に純白のマークIIが思い浮かぶ、そんな一人です。

「父は白い81マークIIのグランデに乗っていました。子供のころに触った内装の感触が忘れられなくて、『いつか欲しいな』と心に描いていたんです。そんなある日、偶然見つけたのがこのGTツインターボでした」

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現在29歳のオーナー氏は、1年半ほど前に中古車サイトでこのマークIIを見つけたそう。試しに見に行って購入を即決してしまったほど、この個体にほれ込んでいます。

東京トヨペットの特別仕様? 謎の多いマークII

聞いてみるとこのマークII、1991年式の2.5GTツインターボには違いないのですが、カタログには乗っていない謎仕様だそう。

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「カタログで見る2.5GTツインターボとは、グレー内装にブルーガラス、クリアランスソナーやリヤウインドウとリヤスポイラーの2箇所につくハイマウントストップランプやクリアランスソナーなど、いくつも仕様が違う部分があって、謎の多いモデルです。詳しい人からは『東京トヨペットの特別仕様車ではないか?』と言われています」

オーナーズクラブを通じた交流の中でも、この仕様は1台しか確認できていない“幻のモデル”だと言います。しかし、もちろん希少さだけに惚れ込んでいるわけではありません。

06遠くから眺めてみる。ブラックアウトされたAピラーは同年代のクラウンロイヤルとも通ずる意匠だ。長いオーバーハングとあいまって現代のクルマにはない伸びやかさを感じる。ホイールは当時としては大きな16インチ

07ヘッドランプにはプロジェクター式フォグランプを内臓。1980年代後半からの自動車デザイントレンドもしっかり取り込まれている

「エクステリアも好きですが、特に気に入っているのはインテリアの質感です。シート、ドアトリム、スイッチ類、どこをとってもバブル時代のクルマは抜かりなく造りこんであるって気に入っています」

08メータークラスターとセンターコンソールがつながるデザインは、当時のクラウンやランドクルーザー80とも共通する。エアバッグは運転席のみで、グレードによってはまだオプションだった

オーナー氏のご好意に甘えて運転席に座らせていただくと、現代のクルマと比べて背の低いハードトップスタイルのおかげで、室内は比較的タイト。でも、細いAピラーと広いウインドウエリアのおかげで視界は良好です。質感の高さはもちろん、程度のよさにも驚きます。81系のマークIIの特徴であるサテライトスイッチや電動のエアコンパネルも現役で動作していました。クリアランスソナーを世界で最初に装備したのが、このマークIIだとか。

09加飾パネルはつや消しの木目パターンを表現。最近のトヨタ車とも通じる意匠性の高さがある

思い出の中に生きる。家族と走ったかつての思い出

「思い出深いのは、洗車が終わると水気を飛ばしにドライブに連れて行ってくれたことです。よくおもちゃ屋さんに立ち寄って、ミニカーを買ってくれました。今でもクルマが大好きなのは、父やマークⅡとの時間があったからこそだと思いますね」

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購入から1年半が経過したころ、遠く離れた実家からお父様が遊びにきたことがあったそうです。オーナー氏は「きっと懐かしんでくれるだろうな」と小さな期待をしていたそうですが……。

「乗りこんで第一声は『あれ? このクルマこんなに狭かったっけ』でした(笑)。マークIIを降りたあと、何年もハイト系の軽自動車を乗り継いだ父にとって、マークIIは懐かしいを通り越して古いクルマに映ってしまっていたのは衝撃でしたね」

ちょっと残念なエピソードではありますが、それがリアルな感想なのかもしれません。時代とともに、人とクルマとの関係性が変化していくことに気付かされました。もしかしたら、大きく育った息子とマークII、それを懐かしんでの“照れ隠し”だったのかも……?

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オーナー氏は、このマークIIに今もぞっこん。「これからもずっと乗り続けたい」と話します。かつての思い出を乗せて走るタイムマシーン。オーナー氏とともに、これからの未来も走り抜いていくことでしょう。

text & photo by TUNA, edit by 木谷宗義

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