トヨタの小型バス「コースター」が、昨年12月にフルモデルチェンジを実施しました。コースターのフルモデルチェンジは1993年以来、24年ぶり。コースターとしてはもちろん、ライバルである日産「シビリアン」のデビューが1999年ですから、小型バス界としても久々の、そして21世紀初のニューモデルです。
1963年から作り続けられているトヨタの小型バス
25人程度の定員を持つマイクロバスは、飲食店やホテルなどの送迎の他、幼稚園バスやコミュニティバスなど、幅広いニーズを持つ実用車のひとつ。その歴史は古く、トヨタでは1963年に発売した「ライトバス」が最初です。1969年のモデルチェンジで「コースター」の名に改称し、これまでに110カ国以上、累計55万台を販売しています。
トヨタ・ライトバス
3代目となる先代モデルは、1993年のデビュー。長いモデルライフの間にはデザインやパワートレインを変更するマイナーチェンジを何度か実施してきたものの、古さが隠せなくなってきたことは事実。デザイン面はもちろん、安全装備の充実が求められてきたこと、観光ビジネスの活性化などで小型バス需要の伸びも見込まれることから、フルモデルチェンジが実施されました。
トヨタによると、モデルチェンジのポイントは「安全機能の充実」「快適性向上」「次世代の小型バスに相応しいデザイン」「信頼性の高いクルマ」の大きく4つ。
新開発の「環状骨格」で世界的安全基準に適合
「安全機能の充実」については、ルーフ、側面、フロアの骨格をつなぎ一体化した環状骨格や高張力鋼板の採用により、バスボディの強度に冠する世界的な安全評価基準「ECE基準R-66(ロールオーバー性能)」に適合させています。
また、VSC(車両安定制御システム)を日本でクラス初採用した他、運転席に加え助手席にもエアバッグを装備。シートベルトを巻き取り、早期に乗員を拘束する「プリテンショナー機構」と、胸部に加わる力を低減する「フォースリミッター機構」が採用されました。
ボディ断面を四角くして広くなった室内
新型コースターは、先代型と比べると角ばったデザインとなりました。これによって、室内空間を拡大し、開放感と快適な乗員スペースを確保しています。ボディ断面を比較した図を見れば、その違いは一目瞭然です。
ドアステップの奥行きが拡大されたり、ルームラックの収納性を向上させたりといった、小型バスとしての基本性能もアップされています。シートクッションに低反発ウレタンが採用されたのも、新しいところ。運転席周りでは、フロントガラスの開口部が大きくなり、視界が広がりました。
なおエンジンは、4.0Lのターボディーゼルが先代モデルから踏襲され、150PS仕様と180PS仕様の2タイプがラインナップされ、5速MTと6速ATが設定されています。
価格は594万円~。幼児専用車もある!
コースターのバリエーションは多彩です。25人乗りの標準ボディ、24人または29人乗りのロングボディがあり、ボディタイプによって「LX」「GX」「EX」から2または3グレードを設定、さらにMTとATが用意されるといった具合。また、幼稚園バス用となる「幼児専用車」や、9人乗りの貨物仕様「ビッグバン」もあります。価格は、594万円から862.38万円まで。
現在のところ緊急自動ブレーキといった先端安全装置は設定されていませんが、このあたりは長いモデルライフの中で順次、用意されていくのでしょう。次にモデルチェンジするころには、小型バスも電動化や自動運転技術が進んでいるはず。そう考えると、伝統的なディーゼルエンジンやスタイリングを持つ、最後のコースターになるかもしれませんね。
<関連リンク>
トヨタ・コースター
http://toyota.jp/coaster/
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text by 木谷宗義+Bucket
画像提供:トヨタ自動車