アウトランダーPHEVにデリカD:5、ekワゴン…と今、三菱の国内ラインナップはSUVやミニバン、軽自動車を中心に構成されていますが、かつてはランサーからディアマンテ、デボネアまで、大小さまざまなセダンを生産していました。その中でも、三菱を代表するセダンがギャラン。特に「歴代の中でも最も『ギャラン』らしい1台」とされるのが、6世代目の「E30系」と呼ばれるモデルです。
4WS(四輪操舵)や市販車初の電子制御アクティブサスペンションを搭載
6台目ギャランがデビューしたのは、1987年。バブル経済に向かう好景気の中で生まれたモデルだけあって、ハイテク技術が満載の贅沢なクルマでした。キャッチコピーは「インディビデュアル4ドア」。デザインは、逆スラントのフロントマスクに独特の“くびれ”を持つサイドビュー、そして1440mmと高めの全高が特徴で、ワイド&ローが流行していた時代の中で、ユニークかつ斬新なものでした。
ギャランVR-4(1987年)
ラインナップの幅広さも、1980年代のクルマらしいところ。主力モデルは1.8L~2.0Lでしたが、もっとも廉価なモデルは、1.6Lエンジンに4MTの組み合わせ。その一方でトップモデルの「VR-4」には、当時としては高性能な205psの2.0Lターボが搭載されました。このエンジンは、後のランエボシリーズに受け継がれていく「4G63型」です。
ギャランVR-4(1987年)のインテリア
「VR-4」の「4」は4WDを表しますが、このモデルには四輪操舵の4WS機構も搭載。また、FFモデルの「VX-S」には、市販車初となる電子制御アクティブサスペンション「アクティブECS」も採用されるなど、力の入ったクルマだったことがわかります。
当時の三菱が技術の粋を集めて開発したこのギャランは走行性能も非常に高く、評価も上々。1987-1988年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞します。三菱自動車としては、初めてのカー・オブ・ザ・イヤー受賞でした。
ラリーマシンとしての顔も。WRCで6度の勝利を収める
VR-4には、ギャランのフラッグシップモデルであると同時に、WRC(世界ラリー選手権)に参戦するラリーマシンの顔も持っていました。1988年のニュージーランドラリーでラリーデビューを果たしてから、ランサー・エボリューションにバトンタッチするまで4シーズンを戦い、6度の勝利を納めています。1991年のコートジボワールラリーでは、篠塚建次郎選手がこのギャランで日本人として初めてWRC優勝を果たし、ラリーファンを沸かせてくれました。
市販車の方に話を戻すとE30系ギャランは、何度かのマイナーチェンジやバリエーションの追加(AMGによるチューンドエンジンが搭載された「ギャランAMG」も!)が行われ、1992年まで、約4年にわたって生産。7代目にバトンタッチし、その役目を終えます。
7代目ギャラン(1992年)
結果的に6代目のE30系ギャランは、最後の5ナンバーボディを持つギャランであり、最後のラリー参戦ギャランとなりました。1990年代はRVブームを経てミニバンの時代へと、ファミリーカーの形がシフトしていく年代です。このギャランE30系が、セダン全盛期を盛り上げた最後のギャランだと言ってもいいかもしれません。
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text by 木谷宗義+Bucket
画像提供:三菱自動車工業