現在、スーパーフォーミュラやSUPER GT、F1、MotoGPまで、2輪4輪を問わずさまざまなモータースポーツカテゴリーで活躍しているホンダ。もちろん、それらの活動を支えているのは、世界中でたくさんの人々が乗っている市販車の数々です。
そんな、故・本田宗一郎さんがスパナ1本からはじめたホンダの歴史を見られるのが、栃木県「ツインリンクもてぎ」内にある「ホンダコレクションホール」です。ここでは、歴代のホンダ車をただ保管しているだけではなく、きちんと定期的にメンテナンスを行って走行可能な状態で維持。イベント時には、走行シーンを私たちに見せてくれます。
歴代の市販車モデル、60台が走行!
今回の「ホンダコレクションホール開館20周年記念 市販製品特別走行」では、2輪を含めたホンダの歴代の市販車が、ベストコンディションで展示され、走行する姿を見せてくれました。
左上:1960年代に憧れのスポーツカーだった「S500」
右上:アメリカの厳しい排気ガス規制「マスキー法」を世界に先駆けてクリアした「シビックCVCC」
左下:9000rpmもの高回転まで回るエンジンを持つFRスポーツの「S2000」
右下:アイルトン・セナが開発に関わったピュアスポーツ「NSX」
走行したクルマの幅は広く、2輪からスタートしたホンダが4輪車に進出して間もない1960年代の「S500」から、1990年に登場した初代「NSX」、2009年まで生産された比較的新しい「S2000」まで、総勢なんど60台!
もちろん、スポーツモデルだけでなく、セダンやミニバン、商用車も登場しました。60台という膨大な台数のため、年代ごとに区切りをつけて、1台3分程度で走行。走行時には、ピエール北川さんが車両解説を行うという豪華さです。
ホンダの歴史を飾ったクルマたち
1963年に発売されたホンダ初の4輪車。意外にも、ホンダの4輪車は軽トラックからスタートしていたんですね。高度経済成長期の真っ只中だった当時は、日本のモータリゼーションが本格的にスタートした時期でもありました。そんな中、オートバイが走れない冬場にも活躍できること、今までオートバイしか販売してなかった店舗でもメンテナンスができることをコンセプトに開発されたのが、このクルマです。
シンプルな丸型ヘッドライトと大きな「H」マークが描かれているボンネットが特徴。354ccの水冷エンジンはなんと4気筒で、コラムシフト式の4速MTが組み合わされていました。豪雪地帯向けのオプション装備として後輪をキャタピラする「クローラー」が用意されていたとか。
1963年に登場した、ホンダ初のスポーツカーがS500。およそ1年で「S600」が登場したため、ごくわずかしか現存しない貴重な1台です。搭載されるエンジンは531ccの直列4気筒エンジンで44馬力。675kgと軽量のため、現代でもワインディングでは楽しく走れそう。発売当時(1963年)の価格は「45万9000円」で、今の貨幣価値に換算すると500万円前後。当時、いかに自動車が高嶺の花だったかがわかりますね。
フロントにスペアタイヤを搭載する“ドアなし幌”のスタイルが特徴的な軽自動車。当時は、主に警備業務や現場作業で活躍したそうです。このスペアタイヤの位置は「衝突時のショック吸収のため」とのこと。ユニークなスタイリングは、40年以上たった今も斬新です。これからも、こんな思い切ったクルマを開発してほしいですね。このクルマをドライブした小暮卓史選手は、「この日、もっとも楽しかった1台」と話していました。
1960年代にアメリカで「大気浄化法」が制定され、1970年になると自動車の排気ガスに関して厳しい規制を設ける改正がされました。それが通称「マスキー法」です。自国メーカーが「達成不可能だ」と反発する中、ホンダは「CVCCエンジン」を開発して、世界に先駆けてこの規制をクリア。シビックが、マスキー法をクリアした最初の生産車となり、世界にホンダの名を知らしめました。フロントマスクの「CVCC」のエンブレムが誇らしげです。
「人のスペースは最大に、メカニズムは最小に」という「MM思想(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)」のもとに開発され、1985年に発売されたトゥデイ。筆者が小さいころ両親が乗っていて、軽自動車ながら広かった記憶があります。今回のイベントでは、道上龍選手がドライブ。このクルマとドライバーの組み合わせは、過去のとある生放送番組のゲームイベントでつけられたあだ名「トゥデイ道上」が形になったもので、名付け親であるピエール北川さんも楽しそうに解説をしていました。
世界初の後輪操舵「4WS」を搭載も話題になった、2代目プレリュードも登場しました。1980年代を知る人なら、デートカーとして高い人気を集めていたことを覚えていることでしょう。4WSが、狭い場での取り回しのよさと、高速走行での安定性を両立させるもの。右左折するときに後輪が動く瞬間がとても不思議だったことを当時、子供だった筆者も覚えています。上の写真でも後輪が操舵していることに注目!
故アイルトン・セナ氏や中嶋悟氏を開発テストドライバーに迎え、当時のホンダの持てる技術のすべてつぎ込んで開発された初代NSX。軽量アルミボディは、当時としては画期的なものでした。生産終了から12年が経ちますが、、ホンダはより長く乗れるように「リフレッシュプラン」を提供。いつまでも、新車のようなコンディションを維持できる環境を整えています。現行モデルも素晴らしいクルマですが、やはり初代のもつオーラは特別。30年近くたった今も、まったく衰えたようには見えませんでした。ホンダコレクションホールで保有するこの個体は、「世界一のパーフェクトコンディション」を持つNSXと言ってもいいでしょう!
ホンダとしては30数年のFRスポーツカーとして、1999年に登場。「F20C」エンジンは2.0Lで250馬力、つまり1.0Lあたり125馬力という高効率を実現して注目を集めました。甲高いVTECサウンドのエンジンとスポーツカーとして理想的なバランスは今でもファンが多く、サーキットでよく見かけるクルマです。筆者も運転したことがありますが、意のままに運転できる楽しい1台でした。エンジンを2.2L化したビッグマイナーチェンジを行ったものの、1世代で生産終了してしまったことは大変残念に思います。
いかがでしたでしょうか? きらびやかで速いレーシングカーが目の前で走る姿も素晴らしいですが、生活に密着した市販車も当時の思い出が蘇っていいものですよね。ちなみにこのイベントは、2018年9月24日(月・振休)10:00~16:00にも行われます。より過ごしやすい季節になっていると思うので、ぜひ現地でその音や匂いを感じてみてくださいね!
text & photo by クリハラジュン
edit by 木谷宗義
▼ホンダコレクションホール開館20周年記念 市販製品特別走行
http://www.twinring.jp/collection-hall/new/hch20th_run/
▼昭和のホンダ車ミーティング2018
https://car-days.fun/blog/article/10604
▼いくつわかる!? 歴代ホンダ・シビックの愛称
https://car-days.fun/blog/article/2069