フランスやイギリスが、「2040年までにガソリン/ディーゼル車の販売を禁止する」と発表するなど、世界は「クルマの電動化」に向けて舵を切り始めました。日本でもHV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)など、電気の力で走るクルマが増えています。
こんな世の中の流れから「電気自動車=新世代のクルマ」と思っている人も多いでしょう。でも、歴史を紐解いてみると、おもしろいことがわかります。電気自動車は、ガソリンエンジン自動車よりも古くから存在していたのです。
自動車の歴史は「蒸気」から始まった
自動車の歴史は1769年、フランスの軍事技術者、ニコラ=ジョセフ・キュニョーが発明した蒸気自動車だと言われています。「キュニョーの砲車」と呼ばれているのが、自動車の起源とされているもの。大砲を搭載するために「砲車」の名がついてはいるものの、実際に戦場で用いられたことはないようです。
キュニョーの砲車(スケールモデル)
その後も各地で蒸気機関の研究は進められ、1800年代に入ると蒸気機関車が誕生。1830年代には蒸気バスの運行も始まり、馬車に代わる乗り物として自動車が使われるようになっていきました。
ガソリン自動車は蒸気自動車から約100年後
ガソリン自動車が誕生したのは、1870年のオーストリア。発明家のジークフリート・マルクスによって、荷車にエンジンが載せられて作られたものが最初だと言われています。「キュニョーの砲車」から、なんと100年もあとのことでした。
ベンツ パテント モトールヴァーゲン(レプリカ)
ここで「ベンツやダイムラーは?」と思った方は鋭い。ドイツのゴッドリープ・ダイムラーが、2輪車や馬車に4ストロークエンジンを搭載して特許を出願したのは、1885年。同じころ、カール・ベンツが、ガソリンエンジン三輪車「パテント・モトールヴァーゲン」を生み出しました。
1900年にはハイブリッド車も存在していた
では、電気自動車がいつ誕生したのでしょうか? なんとガソリン自動車が生まれる50年近くも前に、すでに存在していたのです。
電池が生まれたのは1777年、モーターは1823年に発明されており、電気自動車は1830年代に開発されていました(ただし、最初に開発した人物については諸説あり)。そして実用的な電気自動車が誕生したのは1870年代、市販されたのは1885年とされています。ちなみに、世界で初めて100km/hの壁を突破したのも電気自動車が先。1899年のことでした。
ローナー・ポルシェ
もうひとつ驚くべきことは、1900年にハイブリッド車が発明されていたこと。発明者は、当時ローナー社に籍をおいていたフェルディナンド・ポルシェで、その名も「ローナー・ポルシェ」。この世界初のハイブリッド車は、発電用にエンジンを搭載し、左右前輪のハブに取付けられたモーター(インホイールモーター)で駆動する、「シリーズハイブリッド方式」を採用していました。フェルディナンド・ポルシェは、さらに4輪にモーターを内蔵した4輪駆動のレーシングカー(世界初の4WD車)なども、開発しています。
text by 木谷宗義
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