【豆知識】キュニョーの砲車にフォードT型…自動車の歴史を語る上で欠かせない3つのモデル

フォードT型

みなさんは「自動車の歴史を語る上で欠かせないモデル」と聞いて、どんなクルマを思い浮かべるでしょうか?

ある人はシトロエンDSかもしれませんし、フォルクスワーゲン・ビートルだと思った人もいるかもしれません。どちらも世界に大きなインパクトを与えたモデルには違いありませんが、自動車黎明期に目を向けてみると、今回紹介する3台ほど大切なクルマはないでしょう。

目次

世界初の自動車は1769年に生まれた蒸気自動車

自動車が普及したのは、20世紀に入ってから。しかし、自動車の歴史をさかのぼってみると、意外なほど古くからあることがわかります。世界初の自動車として知られているのが、「キュニョーの砲車」と呼ばれている蒸気自動車です。誕生したのは、なんと1769年のこと。250年近く前に自動車は生まれていたんですね。

キュニョーの砲車
キュニョーの砲車(模型)

キュニョーの砲車を設計したのは、フランス・ルイ14世軍の技術大尉ニコラ・ジョセフ・キュニョー。ジェームズ・ワットの手によって蒸気機関が発明された4年後に、この蒸気自動車は完成しました。フロントに大きなボイラーを備えた前輪駆動のこのクルマは、時速9kmほどのスピードで走ったと言われています。

ちなみに、ボイラーがあまりに重すぎたため操縦性が悪く、試運転中に壁に衝突。これが、世界初の自動車による交通事故なのだとか。キュニョーの砲車は2号車も製作されており、現在、パリのフランス技術博物館に保存されています。

生誕130年を迎えたガソリン自動車は

世界初の自動車は1769年ですが、ガソリン自動車が登場するまでにはそれから100年以上の時間を要します。実は、ガソリン自動車よりも先に生まれていたのが電気自動車でした。1873年には、イギリスで電気モーターを搭載したトラックが実用化されていたという記録が残っています。では、ガソリン自動車が誕生したのはというと、1886年のこと。ガソリン自動車は、今年で生誕130年となるわけです。

ベンツ パテント・モトールヴァーゲン
ベンツ パテント モトールヴァーゲン(レプリカ)

1876年にニコラウス・オットーがガソリンエンジンを開発すると、1885年にゴッドリープ・ダイムラーが2輪車にガソリンエンジンを搭載。翌1886年には、カール・ベンツがガソリンエンジンを搭載した3輪自動車「パテント モトールヴァーゲン」を開発。始めからガソリン自動車として設計された初の自動車として、特許を所得しています。この2人の名前からピンときた人もいるでしょう。のちにメルセデス・ベンツを製造する「ダイムラー・ベンツ」は、この2人の名前が社名になったものです。

自動車の大衆化を実現したフォードT型

ベンツの手によってガソリン自動車が発明されたあとも、しばらくの間、自動車はごく一部の富裕層の乗り物でしかありませんでした。自動車の大衆化が進んだのは、1900年代に入ってから。大衆化を目論んだのは、アメリカ「フォード」の創設者、ヘンリー・フォードでした。

フォードT型
フォードT型

こちらが世界初の量産型自動車「フォードT型」。1908年に登場すると、1927年までの間に1500万台以上も生産し、自動車を一気に身近な存在にした立役者です。ベルトコンベアによるライン生産を行ったのは、T型フォードが世界初で、運転をしやすくする機構も備えるなど、大衆化に向けた工夫も数多く採り入れられました。

ガソリン自動車誕生から130年。今、世界ではおよそ13億台のクルマが走っています。こうしてクルマが当たり前に存在するようになった背景には、先人たちの天才的な発想や努力によって生み出された数々のクルマがあるんですね。そう思うと、どのモデルにも敬意を表さずにはいられません!

text by 木谷宗義 photo by トヨタ博物館

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