2016年8月、FCAジャパンから1台のオープンスポーツカーが登場しました。その名はアバルト 124スパイダー。クルマに詳しい人なら周知の通りですが、この124スパイダーはマツダ ロードスターとメカニズムを共有し日本で生産される、一風変わった成り立ちを持つモデルです。
フィアットとマツダの業務提携で生まれた日×伊の混血モデル
アバルト124スパイダーは、FR(後輪駆動)レイアウトを持つオープン2シーターです。日本では2017年1月現在、アバルト版しか販売されていませんが、本国イタリアではフィアット版の「フィアット124スパイダー」もラインナップされています。もちろん、アバルト124スパイダーが高性能バージョンという位置づけです。
2013年に発表されたフィアットとマツダの業務提携により生まれたこのクルマは、エンジンのみがイタリア製で、それが以外は最終的な組立も含めて、すべて広島のマツダの工場で作られています。イタリアブランドのクルマではあるものの、国産車となるためウィンカーレバーが右についているのがおもしろいところです。
こうしたFRスポーツカーは、それほど販売台数が見込めないニッチなクルマです。ゼロから開発し生産を行うことは、フィアット(現FCA)にとって現実的ではありません。そこで、マツダと提携する道を選んだのです。これはマツダにとっても、生産台数を増やせるというメリットがあります。なお、当初は「次期ロードスターをベースにアルファロメオ スパイダーを開発する」としていましたが、FCAのブランド戦略からフィアット/アバルトブランドのモデルとなって、私たちの前に姿を現しました。
違いはスタイリングとエンジン
では、ロードスターとの違いを見ていきましょう。フロント:ダブルウィッシュボーン式、リヤ:マルチリンク式のサスペンションを含め、基本的なメカニズムは共通。異なるのは、スタイリングとエンジンです。
スタイリングは、1972年に生まれた初代アバルト124スパイダーをイメージしたものに。ボディサイズは、ロードスターの全長3915mm×全幅1735mm×全高1235mmに対して、124スパイダーは全長4060mm×全幅1740mm×全高1240mmと、前後デザインが変更されたことで少し長くなっています。
アバルト124スパイダー
マツダ ロードスター
インテリアの造形もロードスターと基本的に同じながら、ドアパネルやシート、メーターなどのデザインを変えることで、アバルト流としています。なお、ロードスターと同じく6速MTと6速ATを設定。
アバルト124スパイダー
マツダ ロードスター
内外装を独自にアレンジしたことで車重は、ロードスターの990~1060kgに対し、124スパイダーは1130~1150kgと増加。しかし、フィアットが独自に開発した1.4L「マルチエア」ターボエンジンを搭載することで、よりパワフルな走りを可能としました。最高出力と最大トルクは、1.5LのNA(自然吸気)エンジンを積むロードスターが96kW(131ps)と150Nm(15.3kgm)、1.4Lターボの124スパイダーが、125kW(170ps)と250Nm(25.5kgm)。
ちなみにアバルト124スパイダーの生産は日本ですが、このマルチエアエンジンはイタリアで作られて日本に輸入されています。高められた出力やアバルトらしい乗り味を実現するため、サスペンションやパワーステアリングも独自のチューニングに。
ロードスターか? 124スパイダーか?
124スパイダーについて語られるとき、どうしても「ロードスターとどっちがいいのか?」という話が出てきます。しかし、デザインだけでなくエンジンまで違う両車は、似ているようで性格は大きくことなるもの。こればかりは、「どっちがいい」と言い切れるものではなく、スタイリングや乗り味の好み次第だと言えるでしょう。みなさんは、どちらがお好みでしょうか?
<関連リンク>
アバルト124スパイダー
http://www.abarth.jp/124spider/
マツダ ロードスター
http://www.mazda.co.jp/cars/roadster/
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スパイダーにコンバーチブル…。オープンカーの呼び方いろいろ
https://car-days.fun/blog/article/2844
text by 木谷宗義+Bucke
画像提供:FCAジャパン、マツダ