昔ほど気にする人はいなくなりましたが、今も「3ナンバー」と聞けば大きな高級車を、「5ナンバー」と聞けば身近なコンパクトカーを思い浮かべる人は多いものです。では、この「3ナンバー」と「5ナンバー」、どんな基準で分けられているのでしょうか? 実は、ボディサイズやエンジンの排気量で区切られています。
5ナンバーの定義は「小型乗用車」
5ナンバーが表記される自動車は「小型乗用車」に分類されます。そのボディサイズは、全長4700mm未満、全幅1700mm未満で、全高2000mm未満、エンジン排気量はガソリン車の場合、2000cc未満と定められています。これがいわゆる「5ナンバー規格」と言われるものです。
それに対して3ナンバーは「普通乗用車」の分類となります。先にあげた5ナンバー規格で規定されるサイズや排気量といった項目の上限を、ひとつでも超えると小型乗用車から普通乗用車の扱いとなり、3ナンバーになるのです。
マツダ・ロードスター(2015年)
一見コンパクトなクルマに見えても、1項目でも超えると3ナンバーになるのがポイント。そのよい例が、マツダ・ロードスターです。コンパクトなオープンスポーツカーということは言うまでもありません。1.5リッターのエンジンや3915mmの全長、1235mmの全高は、いずれも5ナンバーの規定未満です。しかし全幅が1735mmと5ナンバーのサイズを上回るため、3ナンバーとなっています。
昔は主流だった5ナンバー
ひと昔前、国産車は5ナンバーサイズが主流でした。それは税金の額が違ったからです。現在は、エンジンの排気量と車両重量に応じて税額が決められるのですが、自動車税が改正される1989年以前は、5ナンバー車の税金が3ナンバー車の半分以下と、大きな開きがありました。そのため、1990年代に入るまで日本車の主流は5ナンバー車だったのです。
日産・セドリック(1987年)
国産高級車の代名詞であるトヨタ・クラウンや日産・セドリック/グロリア、ツーリングワゴンの原型を築いたスバル・レガシィ、そしてSUVの雄、三菱・パジェロまでもが、かつては5ナンバーサイズを中心に作られていました。今は5ナンバーも3ナンバーも、排気量が同じならば税金に違いはありませんが、「3ナンバー=高級車」のイメージは依然として残っています。
5ナンバーはコンパクトカーの指標?
1989年の自動車税生の改正以降は、3ナンバーと5ナンバーの税金の差がなくなりました。すなわち、車体を無理やりにでも小さく作る必要がなくなったため、3ナンバーの車両がどんどんと増えていきます。ボディの拡大は、走行安定性や衝突安全性を高めるというのが主な理由で、現在街行くクルマのナンバーを見ると、3ナンバーの多さに改めて気付きます。
しかし一方で、5ナンバーにも人気車種は多いもの。マツダ・デミオやホンダ・フィットといったコンパクトハッチバックはもちろん、トヨタ・プレミオやアリオンも5ナンバーサイズです。一見、大きく見えるミニバンにも5ナンバー車種はあります。人気車種のトヨタ・ヴォクシーに加えて、ノア、エスクァイアの3兄弟は大柄に見えるようで、実は5ナンバーサイズで作られているのです。
トヨタ・ヴォクシー(2016年)
ちなみにヴォクシーのボディサイズは、全長4695mm、全幅1695mm、全高1825mmと、全高以外は5ナンバー規格の最大サイズ。たくさんの荷物や大人数の家族をのせながら快適に移動でき、取り回しの良さでも定評のあるこのミニバンは、小型車の範囲内で最大限の機能を詰め込んだクルマだと言えるでしょう。
税額が変わらない今、あまり5ナンバーにこだわる必要はありませんが、1700mmに収まるスリムなボディは、日本の狭い道で重宝するもの。「3ナンバー」「5ナンバー」という概念のない海外では、全幅1700mmを超えるコンパクトカーも少なくありませんが、日本国内ではこれからも5ナンバーというサイズは、コンパクトなクルマのひとつの指標として、位置づけられていくのではないでしょうか。
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text by 阿部哲也+Bucke
写真提供:トヨタ自動車、日産ヘリテージコレクション、マツダ