【豆知識】時代を変えた軽自動車「初代アルト」は何がスゴかった?

スズキアルト

くるまマイスター検定では、たびたび初代アルトに関する問題が出題されています。数ある軽自動車の中で初代アルトは、それまでの軽自動車の概念を変えるエポックメイキングなクルマだったからです。では、何がスゴかったのでしょうか?

目次

商用車扱いにすることで税金を安くした

初代アルトの登場は、1979年(昭和54年)。排ガス規制が厳しくなったり、排気量が360ccから550ccへ拡大されたりと、軽自動車が大きく変わった1970年代最後の年に登場しました。スズキにはもともと「フロンテ」という軽乗用車があり、フロンテがモデルチェンジをしたとき、その商用車版として登場したのがアルトです。

スズキアルト
スズキ・アルト(1979年)

初代アルト最大の特徴は、「商用車」として生まれたこと。当時は消費税がなく、代わりに贅沢品などに対して物品税が課されており、軽乗用車を購入すると15%もの物品税を納めなければなりませんでした。しかしこの物品税は、商用車では非課税。そこに目をつけて作られたのが、アルトでした。

スタイリングは、乗用車でありながらリヤシートを簡素なものにすることで、後席の居住空間を小さくしつつ荷室を大きくし、4ナンバーの貨物車として届出ができるようにしたのです。軽自動車でリヤシートが使われる機会はあまりないというリサーチのもとで採用したところ、大ヒット。ダイハツ・ミラや三菱・ミニカ、スバル・レックスなどが追随し、1980年代はアルトが確立した「軽ボンネットバン」が軽自動車の中心となります。

ちなみにアルトは2ドアでしたが、同時期に登場した乗用車版のフロンテは、同じデザイン、同じボディサイズで5ドアを採用し、乗用車としての使い勝手を高めていました。

スズキフロンテ
スズキ・フロンテ(1979年)
キャッチコピーは「アルト47万円」、クルマ自体も安かった

もうひとつヒットの要因になったのは、価格の安さ。初代アルトはデビュー当時、47万円という価格で登場。45万円を目標に開発されたものの、コストの関係から47万円になったそうですが、それでも50万円を下回る価格の軽自動車は他になく、衝撃的な価格だったのです。また当時は、納車時の輸送費などを考慮して地域ごとに異なる価格を設定するのが常識でしたが、アルトは「全国統一価格」を採用。これにより、「アルト47万円」という広告やCMを打つことが可能となり、その知名度は一気に広がりました。

なお、この価格を実現するため、グレードを廃したモノグレードで登場。助手席の鍵穴を省略したり、ウィンドウウォッシャーを手動ポンプ式にしたりと、コストを抑えるための努力が各所に見られます。エンジンは2サイクル、4速MTで登場し、のちに2速ATや4サイクルエンジン仕様車、デジタルメーターなどを装備する上級グレード、4WDが登場しました。

スズキアルト
スズキ・アルト(2015年)

初代アルトの開発を指揮したのは、当時社長に就任したばかりだった現代表取締役会長の鈴木修氏。ユニークな発想と独特の経営手腕で知られる鈴木修氏の原点が、ここに見られるといってもいいでしょう。

アルトは、1984年に2代目へとモデルチェンジし、2014年に登場した現行型で8代目。軽量ボディによる走りと燃費のよさや、シンプルながら十分な質感、そしてコストパフォマンスの高さなどを考えると、今も初代アルトの志は生き続けていると言えそうです。

text by 木谷宗義 photo by スズキ

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