【豆知識】スズキ初の3列シートSUV「グランドエスクード」とは?
今でこそ「イグニス」や「SX-4 Sクロス」といった、カジュアルなSUVもラインナップするスズキですが、2006年にクロスオーバーSUVの「SX-4」が登場するまで、スズキのSUVと言えばクロスカントリー4WDに分類される「ジムニー」と「エスクード」という硬派な2モデルでした。今回、フォーカスしたいのはエスクードシリーズの中でもひときわ異彩を放っていた「グランドエスクード」です。
そもそもエスクードってどんなクルマ?
まずは、エスクードがどんなクルマであるのかを、簡単にご紹介しましょう。エスクードは、1988年に登場したコンパクトSUV。デビュー当初は1.6Lガソリンエンジンを搭載する3ドアのコンバーチブルとハードトップの2種類をラインナップ。のちに5ドアの「ノマド」が追加されると、コンパクトなSUVという他にないキャラクターでヒットを飛ばします。
エスクード ノマド(1990年)
その後エスクードは、3度のモデルチェンジを受け、現在販売されているのは4代目。それまでのラダーフレームやビルトインラダーフレームといったクロスカントリー4WDならではの構造からモノコック構造へとシフトし、5ドアのみの現代的なSUVに生まれ変わりました。
エスクード(2016年)
しかし、堅牢なクロスカントリー4WDへのニーズも少なくないのでしょう。ビルトインラダーフレーム構造を持つ3代目エスクードも、「エスクード2.4」の名で販売が続けられました。
2代目だけに設定された3列シートの7人乗り
28年4世代にわたるエスクードの長い歴史の中で、一度だけ3列シートを持つモデルが設定されたことがありました。それが「グランドエスクード」です。
このクルマは、2代目エスクードの上級モデルとして2000年に登場。通常の5ドアモデルより485mm長いボディにオーバーフェンダーが装着され、軽快な印象からまるで三菱「パジェロ」のような重厚感のあるスタイリングになっていました。そうは言ってももともとコンパクトなエスクードです。485mmも長くなったとは言え全長は4575mmですから、まだまだコンパクトSUVと言えるサイズでした。価格は230万円と内容を考えるとリーズナブルです。
グランドエスクード(2000年)
エンジンは、200kg以上重くなったボディに対応するため、エスクード史上最大となるV6 2.7Lエンジンを採用。4速ATやドライブセレクト式パートタイム4WDといったメカニズムは、エスクードのものを踏襲していました。
グランドエスクードは2000年にデビューし、2005年まで生産されますが、その間に2度のマイナーチェンジを受けています。一度目は2002年。このときはインテリアを一新し、ランドクルーザーのような雰囲気のインパネが与えられました。二度目は2003年で、今度はフロントマスクを刷新。エンジンが177psから184psにパワーアップした他、ATが4速から5速に多段化されるなど、大掛かりな変更を実施しました。これらの変更は、主要マーケットであったアメリカからの要望に応えたものでした。
グランドエスクード(2003年)
2.7Lエンジンを搭載する7人乗りの本格的なクロスカントリー4WDが250万円台前半で手に入る、そう考えるととても魅力的なモデルですが、日本での販売は振るわず3代目へのモデルチェンジと同時にエスクードシリーズから7人乗りのラインナップはなくなってしまいます。クルマ自体はよかったものの、2000年代前半はもうヴォクシーやセレナといったミニバンが主流となった時代。登場するのが少し遅かったのかもしれません。すでに希少車となっているグランドエスクード、今所有しているオーナーさんには、いつまでも大切に乗っていただきたいものですね。
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text by 木谷宗義+Bucket
画像提供:スズキ