自動車メーカー各社では、燃費をよくするためにさまざまな技術を開発しています。その中でスズキが採用しているのが、「エネチャージ」と「S-エネチャージ」です。名前は似ているこの2つ、実はその仕組みに大きな違いがあるんです。今回は、このエネチャージとS-エネチャージを勉強してみましょう!
ワゴンRに初搭載!減速エネルギー回生機構「エネチャージ」
まずは、「エネチャージ」から。2012年にデビューした5代目ワゴンRで初搭載され、アルト、ラパン、ハスラー、スペーシア、スイフトと、スズキの主力車種のほとんどで設定されるエネチャージは、一言で言うと減速エネルギー回生機構。
アイドリングストップ車専用の鉛バッテリーに加え、高効率なリチウムイオンバッテリーと高効率・高出力のオルタネーターを搭載し、走行中にアクセルを離したときやブレーキを踏んで減速しているときに、その「減速エネルギー」を使ってオルタネーターを作動させ、発電を行うというものです。ここで発電した電気は、リチウムイオン電池に充電し、オーディオやカーナビ、イグニッションコイル、燃料ポンプなどの動作に使われます。
今までは、オルタネーターを作動させるのにエンジンの力を使っていましたが、減速時のエネルギーを使うことで、発電に要するガソリン消費を減らすことを可能としたのです。こうした減速エネルギー回生機構は、他社でも採用例が増えてきています。
ワゴンR(2012年登場モデル)
S-エネチャージは電気モーターが加速をアシスト!
では、S-エネチャージは何が違うのでしょうか? もっとも大きな違いは、電気モーターが加速をアシストする「モーターアシスト機能」が加わったことにあります。エネチャージで搭載していた「高効率・高出力オルタネーター」が、「モーター機能付発電機(ISG)」に進化。減速時に蓄えた電気を、加速時のアシストに使うようにした「ハイブリッドシステム」となったのです。ISGをスターターモーターとしても使うことにより、アイドリングストップからの再始動もスムーズになりました。
2014年にワゴンRで初搭載された当初は、加速時のモーターアシスト時間が「6秒間」、モーターアシストする速度域が「15~85km/h」でしたが、現在はそれぞれ「30秒間」「発進~85km/h」>へと、モーターアシストする頻度を向上。NAエンジンに加え、ターボ車にも搭載しています。ターボ車は、「発進~100km/h」でモーターアシストを行う設定です。
ワゴンR FZ
エネチャージからS-エネチャージへの進化がどのぐらい表れているかをJC08モード燃費で見てみると、エネチャージ搭載のFX(CVT車)が30.6km/Lなのに対し、S-エネチャージ搭載のFZ(CVT車)では33km/Lと、およそ8%の違いが出ています。S-エネチャージは、2016年7月2日現在、ワゴンR、スペーシア、ハスラーに設定。なお、ソリオとイグニスに搭載されるマイルドハイブリッドも、基本的にはS-エネチャージと同様のシステムです。
イグニス
現在のところ、軽自動車でモーターアシストを行うハイブリッドシステムを搭載しているのはスズキのみ。燃費の不正計測が問題となりましたが、テクノロジー自体は一歩、先んじていたものだったと言えますね。1993年に登場した初代ワゴンRのカタログ燃費が16.4km/L(RX 3AT)だったことを考えると、ものすごい進化を感じます!
text by 木谷宗義
photo by スズキ
▼エポックカー図鑑 Vol.04 スズキ・ワゴンR ~軽自動車に「大空間」の概念を採り入れたハイトワゴンの先駆者
https://car-days.fun/blog/article/9142