4月の終わりから5月序盤にかけての大型連休「ゴールデンウイーク」は、SUPER GTファンにとってはロングランレース「富士500kmレース」が開催されるレースウィーク。「富士500kmレース」は毎年、シーズンを通じてもっとも多くのファンが観戦に来るレースです。
天候不良で予測のつかない展開に
ゴールデンウイーク期間中に開催されるこのレースは、通常のレースのように「金曜日:搬入設営→土曜日:練習走行・予選→日曜:決勝レース」という流れとは異なるスケジュールで行われます。今年は、5月2日(水)に搬入設営が行われ、3日(木)に練習走行と予選、4日(金)に決勝が行われるというスケジュールでした。
天気予報の通り、水曜日の夜から雨が降り始め、木曜日の朝は雷鳴が轟くほどの大雨に。ここまでは予報通りということもあり、各チームもレインタイヤを用意して走行の準備を進めていましたが、思った以上に早く雨が上がり、翌木曜日の練習走行が始まるころには、雨はほぼ止んでいる状態となりました。
しかし、ここで発生したのが濃い霧。ピットからグランドスタンドも見えないほど視界は悪く、一般車両ですら走行が困難な天候に。とてもレーシングカーがレーシング速度で走ることはできません。その結果、午前中に行われるはずだった練習走行はディレイ(遅延)を繰り返し、練習走行は一旦キャンセルとなってしまいました。
予選は「ノックアウト形式」から「計時方式」の一発勝負へ
濃霧で練習走行はできなくなったものの、午後からは急速に天候が回復していきます。サポートレースなどが開催されるため、予選までに時間はありませんでしたが、さまざまな調整が行われた結果、予選の前に30分の練習走行が行われることに。そして、通常ならばQ1→Q2と、2回にわたる「ノックアウト形式」の予選が行われるところ、20分間の一発勝負、「計時方式」の予選へと変更されました。
このことで各チームとも、30分という短い練習走行で、予選に備えたセッティングの確認やタイヤチョイスを迫られます。しかも、練習走行、予選とも時間が短いため、2人のドライバーがそれぞれマシンに乗って調整する時間はなく、ほとんどのチームが練習走行と予選を1人のドライバーで行うこととなりました。
短い時間で激しいタイムアタックが行われた結果、GT500クラスは“富士マイスター”の「#38 ZENT CERUMO LC500」の立川祐路選手がトップタイムを叩き出し、GT500クラスで歴代最多のポールポジション獲得回数「23」を記録します。
GT300クラスは、残り時間ギリギリのタイミングで「#55 ARTA BMW M6」の高木真一選手がトップタイムをマーク。GT300クラスで通算13回のポールポジション獲得となり、「歴代最多タイ」の記録となりました。
ロングランができていない中で500kmレースへ挑む
SUPER GTは毎年、夏に開催される「鈴鹿1000km」が最長距離で開催されていましたが、今年はスケジュールと距離が見直され300kmレースになる予定です。長い距離のレースは、今シーズンは夏の第5戦「富士500マイルレース」(約800km)、そして今回の「富士500kmレース」が長い距離を走るレースとなります。
事前の富士スピードウェイと鈴鹿サーキットでの公式テストである程度のセッティングは出しているとはいえ、こうした長距離レースでは毎回、公式練習の時間に天気や気温に合わせた調整や燃費計測をするなど、ロングランのテストを行います。しかし、今回は十分な練習走行ができなかったことで、ロングランのテストが行えないまま決勝レースに向かうこととなりました。ちなみに今回のレースは500kmなので、2回のピットインが義務付けられており、レースを3分割したような展開になっていきます。
好調なスタートでトップに立つ38号車。悔しい結果の61号車
迎えた5月4日(金)決勝日は、晴れてはいても風が強く、体感的には肌寒く感じる天候。路面温度も上がらず、持ってきたタイヤの温度レンジとのマッチングが、勝負の分かれ目を決めることとなります。
GT500では予選3番手の「#23 MOTUL AUTECH GT-R」がスタートから飛び出し、タイヤの温まりの良さを生かして2周目にはトップに躍り出ます。その後ろにはレクサス勢がずらりと並び、一進一退の攻防を繰り返す展開に。
ピットストップのタイミングで順位は変動しますが、2回目のピットをNISMOが得意の素早い作業でマシンを送り出すことに成功し、トップを奪います。そして、そのままの勢いでレースをリードし、見事優勝! 得意とする富士を制して、ドライバーの松田次生選手はGT500クラスの通算勝利数で歴代最多の20勝を記録しました。
GT300は、去年の第5戦富士で“ポール・トゥ・ウィン”を成し遂げた「#55 ARTA BMW M6」をポールポジションに、2番手に富士を苦手とする「#61 SUBARU BRZ GT300」が続いてのスタート。レース開始から順位変動は大きく起こらず、序盤はほぼ予選順位のままレースは進行していきました。
ピットインのタイミングでこそ順位は動きますが、長いレースを制したのはポールポジションを守りきった55号車。富士スピードウェイで2戦連続の“ポール・トゥ・ウィン”を達成し、ドライバーの高木真一選手は、GT300クラス通算19勝となり単独最多優勝記録を更新しました。マシンの特性から富士を苦手としながらも予選2位につけていた61号車は、55周目にボンネットから白煙が立ち込めコース脇にストップしリタイアという結果に。ドライバーの山内英輝選手はマシンを降りるなりガードレールを叩き、悔しさをぶつけていました。
2週間のインターバルでどこまで修正できるか?
SUPER GT第3戦は、スケジュール変更により5月に移動してきた鈴鹿。距離も300kmと、例年よりも短くなります。シリーズを考えればこの鈴鹿のポイントとウエイトハンデの重量は、のちのちのレースに大きく影響してくる可能性大。次戦までわずか2週間というインターバルの中で、各チームがどれだけブラッシュアップを図ってこれるのか。多いに楽しみなところです。
~GT500クラス~
1位:#23 MOTUL AUTECH GT-R
2位:#39 DENSO KOBELCO SARD LC500
3位:#38 ZENT CERUMO LC500
4位:#36 au TOM’S LC500<
5位:# 6 WAKO'S 4CR LC500
~GT300クラス~
1位:#55 ARTA BMW M6 GT3
2位:#31 TOYOTA PRIUS apr GT
3位:#11 GAINER TANAX GT-R
4位:#65 LEON CVSTOS AMG
5位:#0 グッドスマイル 初音ミク AMG
フォトギャラリー
text & photo by 雪岡直樹 edit by 木谷宗義
▼緊張と興奮! 波乱の中で開幕を迎えたSUPER GT 2018第1戦「岡山」
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