2024年下半期:カーシェアの市場規模と動向(日本国内)

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カーシェア市場動向2024年下期
人口減少と“クルマ離れ”が叫ばれる中でも、カーシェアはモビリティの選択肢として急速に定着しつつあります。

カーシェア市場に参入するプレイヤーの争いも激化しており、タイムズのように単独で全国展開を強化するサービスがある一方、楽天カーシェア、dカーシェアのように1つのサービスで複数のカーシェアを利用できるプラットフォーム型も飛躍しています。
本レポートでは、2024年下半期のカーシェア市場トピックス、主要プレイヤーの戦略、そして2025年の展望を整理します。

目次

カーシェア市場規模の推移(2024年下期)

カーシェア市場2024年規模の推移
2024年後半のカーシェア市場は引き続き拡大基調にあり、ステーション(拠点)数・車両台数ともに過去最高水準を記録しました​。主要事業者の合計では、2024年12月時点でステーション数約2万7,408箇所、車両台数約59,143台に達し、9月末時点からそれぞれ3.7%増・3.8%増と着実に増加しています​。

2024年12月と2024年6月時点の数字を比較すると、拠点数は約8.5%増、車両台数は約8.9%増となっており、都市部・地方部を問わずネットワークが拡充しました。利用者数も増加を続け、2024年6月時点で約470万人に達し、年末までに延べ500万人規模に到達する見込みと報告されています​。

売上高ベースの市場規模も拡大しており、最新分析によれば2023年の国内カーシェア市場規模は約700~800億円(前年比約20%増)に達しました​。2024年も二桁成長が続いたと推定され、年間通算では市場規模が900億円規模に拡大した可能性があります(※推計値)。この成長率は過去数年間の伸びを上回る力強いものです​。

市場全体では2023年の成長率(拠点数+16.4%、車両数+22.7%)を2024年はさらに上回る拠点数+18.6%、車両数+23.1%の伸びを示しました​。

市場成長の要因

要因として、コロナ禍後の需要回復に加え、ガソリン代高騰や駐車場費用の上昇による自家用車維持コスト増でカーシェアを利用する層が増えたこと、さらに若者のクルマ離れや環境意識の高まりもあり、市場拡大に拍車がかかったと想定されています​。もっとも、これら数値は主要企業の集計によるもので、一部地域事業者を含めた全市場では車両台数が6万7千台以上存在するとの推計もあります​。

いずれにせよ、2024年下半期までのカーシェア市場は前年から大幅な拡大を遂げており、ステーション数・車両数・利用者数のいずれもが順調に増加しています。

カーシェア主要プレイヤーの動向

カーシェア主要プレイヤーの動向
2024年下半期における主要プレイヤー各社(dカーシェア、楽天カーシェア、タイムズカー、三井のカーシェアーズ、オリックスカーシェア)の動向を概観します。

タイムズカー(パーク24)の動向

2024年末時点でステーション数約20,676箇所・車両台数47,696台を保有​。下半期(7~12月)だけでも1,900拠点以上・約4,900台を増やし、都市部を中心に利便性を向上させています​。会員数も2024年10月に300万人を突破するなど順調に拡大しました​。

一方で、顧客満足度は業界3位に甘んじており、品質に課題を抱えています。サービス維持コスト増に対応するため距離料金を2024年2月より16円/kmから20円/kmへ25%引き上げる料金改定を実施しており​、これは2009年以来続けてきた料金体系の見直しとなりました。

物価高や人件費上昇によるやむを得ない改定ですが、時間料金は据え置き、拠点網拡大による利便性向上策と並行して行うことで、需要への悪影響を最小限に抑えています​。実際、値上げ後も利用減少は確認されず、下半期も拠点・車両の増強が続きました​。

サービス面では、新たなモビリティ連携にも積極的です。例えば2024年9月~11月にUberと提携し、東京都区部でタイムズのカーシェア車両を活用したライドシェア実証実験を実施しました​。トヨタ「シエンタ」等の車両にプロドライバーを乗務させ、Uberの配車アプリで乗客を募集する形態で、深刻化するタクシードライバー不足への対策として注目されました​。

また環境分野では、大阪市で国土交通省実施のEV路上カーシェアリング社会実験に参加し、Osaka Metroと協力して国内初となる路上EVカーシェア拠点を市内5箇所に開設する取り組みも開始しています​。

三井のカーシェアーズの動向

パーク24系に次ぐ業界第2位の地位を維持し、2024年末時点で拠点数4,375箇所・車両台数7,959台となりました​。ステーション数・車両数はいずれも前年比で+4.7%、+8.8%と堅調に増加し、市場成長に寄与しています​。首都圏を中心に強みを持ちつつ、地方展開にも乗り出しており、2024年9月には長野市内に初めてステーションを新設(3箇所)するなどサービスエリア拡大を図りました​。

観光地等での地域連携にも積極的で、例えば箱根町では地元自治体や観光協会と協定を結び「はこねカーシェア」を開始するなど、地域特性に合わせた展開にも参画しています​。

料金・サービス面では、下半期に大きな値上げ等は報じられていないものの、前年からの流れで一部料金プランの見直しやポイントサービス提携を進めています。特に2025年3月には楽天カーシェアとの提携開始を控えており、首都圏を中心に約4,338拠点・7,752台(2024年末時点)の自社ネットワークを他社プラットフォームからも利用可能にする計画です​。

この楽天との連携により、自社会員以外の利用者層を取り込み稼働率向上を図る戦略と見られます。総じて三井のカーシェアーズは堅実な拡大を続けており、自社直営と他社連携の両面で2024年下半期に布石を打った形です。

オリックスカーシェアの動向

2024年は拠点数・車両数ともに減少に転じた点が特徴的です​。2024年末時点で拠点数1,554箇所・車両2,390台となり、前年比で-9.9%、-13.0%の縮小となりました​。下半期もステーション数・車両数ともに漸減傾向が続き、特に首都圏の一部で拠点整理が進んだとみられます​。

この背景には採算性の見直しや他社との競争激化があると考えられます。オリックス自体はレンタカー事業等も展開しており、経営資源配分の最適化の中でカーシェア拠点の統廃合が行われた可能性があります。実際、2023年末から距離料金を20円/kmに引き上げるなど収益改善策を講じつつも​、採算の低いステーションから撤退する動きが見られました。

サービス品質の面では一定の評価を得ており、2024年のJ.D.パワー調査では顧客満足度700ポイントで業界第2位につけています(第1位はトヨタシェア)​。これは料金やサービスメニューに対する評価が相対的に高かったためで​、コスト見直しとサービス維持のバランスを図っていると言えます。

下半期には大きな新サービス展開は確認されませんでしたが、車種ラインナップの見直しやスタッドレスタイヤ有料化(地域限定)​など、コスト管理とサービス提供の両面で細かな調整を行っています。オリックスカーシェアは規模縮小傾向にあるものの、堅実なサービス運営と本業の強みを活かし、法人利用などニーズのある分野に経営資源を集中している状況と見られます。

dカーシェアの動向

ドコモが提供するプラットフォーム型サービスで、自社で車両を保有せず複数社のカーシェアやレンタカーをまとめて予約できる点が特徴です​。入会金・月会費無料でドコモのdポイントも貯まる手軽さから利用者基盤を広げており、2024年時点で約470万人のカーシェアユーザー層にリーチしているとされています​。

同サービスではオリックスカーシェアやトヨタシェア、カリテコ(名古屋圏)など主要サービスの車両を横断的に利用でき、大手レンタカーも含めワンストップで予約決済可能です​。

2024年下半期には特段大きな機能拡充は公表されていませんが、法人向けソリューションにも力を入れており、自社のプラットフォームを他企業の社有車シェアリングシステムとして提供する取り組みも進めています​。たとえば平日は社用車、休日は一般開放するといった企業の車両有効活用を支援する動きがあり、カーシェア市場の新たな需要開拓として注目されます​。

楽天カーシェアの動向

楽天グループが運営するカーシェア予約サービスで、楽天IDでログインし複数社のカーシェアを利用できるプラットフォームです。2022年3月にサービス開始後、まずオリックスカーシェアと名鉄協商のカリテコを提携導入し、主に首都圏・関西圏で展開しています​。利用料に応じて楽天ポイントが貯まる・使える点が大きな特徴で、楽天経済圏のユーザーを中心に認知度を高めています​。

また更なるサービス拡充として2025年3月から三井のカーシェアーズと提携。これにより楽天カーシェアで利用可能なステーション数は一気に6,000箇所以上、車両台数も1万台超へと前月比で3倍以上に拡大しました。

現状、楽天カーシェアの自社発表ベースの会員数は不明ですが、楽天会員全体の一サービスとして潜在ユーザー層は大きく、下半期の三井連携発表は今後の存在感強化につながる動きです。今後も他社サービスの取扱拡大やポイント施策強化によって、ユーザーに選ばれるプラットフォームとして成長を目指しています​。

カーシェア市場環境の変化

カーシェア市場の変化
2024年下半期のカーシェア市場を取り巻く外部・内部環境の変化を整理します。まず、業界全体として拠点網と車両数の大幅拡大という強みが鮮明になりました。各社が地方都市や観光地への展開を強化したことで「いつでも近くにカーシェア」が実現しつつあります​。

またサービスの多様化も進み、新たな利用形態への対応力が高まっています。例えばキャンピングカーシェアなどレジャー用途が人気化し、Carstay(キャンピングカー共有サービス)は会員6万人を突破するなど新市場を開拓しました。

他にも鉄道との連携による「レール&カーシェア」推進や、EV専用プランの導入など、消費者ニーズに応える柔軟なサービス展開が各社の競争力となっています​。こうしたネットワーク規模とサービス多様性は、カーシェア市場における大きな強みと言えます。

顧客満足度に課題

顧客満足度の低下が2024年に初めて顕在化し、業界共通の弱みとして認識されました。J.D.パワーの調査によれば、2024年のカーシェア市場全体の満足度スコアは690ポイントと前年比12ポイント低下し、調査開始以来初の低下となりました​。特に「各種料金」や「サービスメニュー」の評価が低下しており、一部事業者で割引サービス終了やポイント還元率の改悪などが行われたことが主因と指摘されています​。実際、タイムズカーやオリックスカーシェアが相次いで距離料金値上げに踏み切ったことや、会員優待の見直しが利用者の不満につながった面があります​。

また、大手と中小でサービス品質に差が生じている点も課題です。例えば満足度調査ではトヨタ系の「TOYOTA SHARE」が3年連続首位となり、タイムズカーは規模で勝るものの満足度では3位に留まる結果となりました​。このことは、急速な拡大にサービス品質向上策が追いついていないリスクを示唆しています。今後、料金値上げによるユーザー離れやサービス面での不満蓄積といった弱点に各社が対処することが求められます。

規制緩和は追い風になるか

カーシェア市場には多くの成長機会が存在します。まずモビリティ関連の規制緩和です。2024年4月に「自家用有償旅客運送」の制度緩和が始まり、日本型ライドシェアが限定的に解禁されたことで、カーシェア車両を活用したライドシェアなど新サービス創出の土壌が生まれました​。

この流れは2025年以降さらに進み、規制が順次緩和されればカーシェア事業者にとって新たなビジネス機会となるでしょう。また観光需要の回復とインバウンド増加も大きな機会です。2024年下半期は国内旅行・訪日客が増え、旅行先でレンタカー代替としてカーシェアを利用するケースが伸びました。実際、カーシェア利用目的では「旅行先での移動」が最も多く、前年より比率が上昇しています。

主要駅や空港近隣にステーションを持つカーシェアは旅行者にとって手軽な移動手段となっており、この傾向は2025年も続く見通しです。さらに環境政策とEVシフトも機会となります。政府が進める2050年カーボンニュートラル政策の中で、カーシェアは交通の効率化・脱炭素化を実現する手段として注目され、自治体との連携事業や補助金による支援が期待できます。EV車両の積極導入は環境意識の高い層の取り込みに寄与しており​、充電インフラ整備と相まってカーシェア市場拡大の追い風となっています。

ただし追い風ばかりではありません。円安や物価高により車両調達費・整備費、人件費などが増加し、各社は料金改定を余儀なくされています。度重なる値上げはユーザー離れを招きかねず、市場成長のブレーキとなる恐れがあります​。実際、顧客満足度低下に直結しており​、価格競争力維持は大きな課題です。また新規参入や代替サービスとの競合も脅威です。

自動車メーカー系(例:トヨタシェア)の台頭や、ライドシェアの本格解禁が将来実現した場合、短距離移動ニーズの一部がライドシェアに置き換わり、カーシェア需要を減らすリスクも指摘されています。他にも、交通事故・違法駐車などサービス運営上のリスクへの社会的な目が厳しくなっており、事故増加時には規制強化など逆風となる可能性もあります。

総じて、コスト高騰への対応と他サービスとの差別化、安全・品質確保が不十分な場合、これらが市場成長の脅威となる点に留意が必要です。

カーシェア市場の2025年の見通し

カーシェア市場2025年の見通し
2025年のカーシェア市場は、成長率はやや緩やかになる可能性はあるものの、引き続き成長が見込まれます。物価上昇による料金高止まりが抑制要因となる一方、地方・観光需要や法人利用の開拓が新たな成長ドライバーとなり、全体としては安定した増加が続くでしょう。民間予測では年率約10%程度の成長が続くとされており、2025年の市場規模は800億円前後に達するとの見通しもあります​。

ステーション数・車両台数も引き続き拡大し、車両台数は2025年内に7万台超へ到達、利用者数も600万人規模に達することが期待されます(推計値)。特にタイムズカーのネットワークは国内の隅々まで広がりつつあり、全国的な利便性向上が市場全体のパイ拡大につながるでしょう。

またレジャー・観光利用が市場に与えるインパクトが大きくなる可能性が予想されます。2024年に顕著だった旅行先でのカーシェア活用は、2025年もインバウンド需要や大型イベント(例:大阪・関西万博)に支えられ拡大する見込みです。J.D.パワーの調査でも、カーシェア利用目的のトップが「旅行」であり、その比率は前年比+4ポイント増の44%に上昇しています。この傾向から、観光地でのステーション整備や提携サービス(宿泊施設との連携割引等)が各社で進むでしょう。

また若年層の車離れ傾向が続く中、サブスク感覚で必要な時だけ車を使うカーシェアの価値は一層高まります。都心部の駐車場不足・高額さも相まって、マイカーを持たない層の移動手段として定着が進むでしょう。逆にビジネス用途や通勤用途ではテレワーク普及で一定の減少傾向も考えられますが、法人車両をカーシェア転用する動きがそれを補うと見られます。

総じて、「所有から利用へ」の流れがさらに浸透し、カーシェアが生活インフラの一部として定着する一年となりそうです。

業界構造では、提携や再編の動きにも注目です。楽天カーシェアと三井のカーシェアーズの提携開始​はその一例で、他にもプラットフォーマー企業が複数のカーシェア運営会社を束ねて利便性を高めるケースが増えるかもしれません。一方、大手同士の競争も熾烈化が予想されます。タイムズ、オリックス、三井といった主要プレイヤーにトヨタや日産の直営シェアサービスがどう挑むか、顧客獲得競争の行方にも注目が集まります。2年連続で満足度トップのトヨタシェア​など後発組の動き次第では勢力図の変化も起こり得ます。

各社がユーザビリティ向上と収益性確保のバランスを追求しつつ、新技術・新サービスへの対応力を競い合うことで、日本のカーシェア市場は引き続き成長軌道を描くものと期待されます。

※免責事項※
本レポートは、カーデイズ事務局が独自に調査して集計した情報を元に構成されています。カーシェア各社のプレスリリース等は参照していますが、あくまでも独自調査レポートである点をご了承ください。

※転載・引用について※
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