毎年この時期になると、川崎大師近くにある大師公園は屋台が立ち並び、にわかに活気づきます。普段は子供たちや野球少年らの声が響くこの一角で「かわさき楽大師祭り」が行われるからです。
さらに、神輿やブラスバンドの音に混ざってクラシックカーのエキゾーストノートが響きます。クラシックカーパレードが行われるのです。このパレードは、地域振興を深めるために10年以上も前から行われているもので、例年およそ50台のクラシックカーが市内を走ります。この「かわさき楽大師祭り」そのものが今年で14回を数えるイベントと考えれば、いかに早い段階からこのパレードが行われていたかが、おわかりいただけるでしょう。
参加資格は「1970年までに製造された車両」となっていますが、厳格なものではなく、昨今では概ね「昭和に出てきた車両」になりつつあるようです。これもまた、時代に合わせての変化もまた、このパレードの柔軟な部分だといえるでしょう。
まさかの事態! 荒天によりパレードが中止に……
そして白バイに先導されてパレードはスタートしました……とお伝えしたいところですが、今年は状況が少しばかり違っていました。前日からの雨風は、夜になるにつれて次第に強まり、パレードランはもちろん、やもすればこのお祭りそのものの開催さえ危うい状況に。パレード主催者も「かわさき楽大師祭り」の運営本部も、その開催の是非を判断しかねる状況だったようで、イベントHPには「当日の朝、お知らせします」の文字のみが記載され、多くの参加者が様子を見守る状況でした。
こちらは昨年のスタート前の様子。本来ならこのように並び、パレードが始まるはずだったのだが……
朝になっても天候は変わりませんでしたが、天気図は明確に雨の止む兆候を示しており、パレードランの参加予定者の中には、参加を取りやめる方や様子を見る方がいましたが、イベントHPには正式に「開催」のお知らせが。結果としてパレードは中止になったものの、それでも30台を超えるクラシックカーが集まり会場の一角に並びました。
左からプジョー106、日産フェアレディZ、いすず117クーペ、フェラーリ308GTB、日産シルビア、ロータス・エスプリ。比較的新しいクルマも同時に並ぶ懐の深さもこのイベントの特徴
やはりクラシックカーの姿は、特別なもの。国産旧車を懐かしそうに見つめる年配者や子供たちのまなざしを一身に浴びながら、台風が過ぎ去ったかのごとき晴れ間にその車体は輝いていました。
大荒れの天候だったため急きょクルマを拭きあげて整列をさせた
フィアット500とホンダS800。ともにセンスよくカスタマイズされている
DMCデロリアンとアルファロメオ・モントリオール。どちらも当時、思い描いていた「未来」を形にしたようなデザイン
年式によるハコスカの細かな違いを解説するオーナー
この日の最古参はこのオースチンだろう。1930年ごろのクルマだ
レーサー風にカスタムされたこのMG-Bは、パレードランの主催者、ユダ会長の愛車
ヒーローは遅れて現れる
参加車両の中に、変わり種の1台がいました。それがこちら。
仮面ライダーやゴレンジャーといった作品と同じく、石ノ森章太郎の原作による漫画『人造人間キカイダー』の主人公ジローが乗っていたサイドマシンです。オープンカーでさえ躊躇したこの天候の中、昼過ぎにこのヒーローは現れました。ベース車両は、KAWASAKIのマッハで、制作には実に6年の歳月が費やされたそうです。好きなことも突き詰めるとここまでできるのか、と驚きます。
この会場には、イベントに関連した着ぐるみの姿もありましたが、こちらは個人でしかもパレードランで参加しているのがすごいところ。見た姿はキカイダーそのもので、アトラクションと間違われる可能性も高そうな、完成度の高さでした。
また翌年に。パレードは先へ
今回は、残念ながらパレードは中止になってしまいましたが、それでもお祭りを盛り上げるために並んだクルマたちは、訪れた方々からあたたかい目で見守られていました。いかなるイベントも屋外で行われる以上、天候に左右されるのは仕方のないことです。実際に、お祭りそのものもこの日は11時をすぎてからの開催でした。その判断は、主催者にとっても難しいものだったと思います。
また来年も「かわさき楽大師祭り」は開催されます。もちろん、クラシックカーパレードランも行われることでしょう。慌てる必要はありません。パレードと同じように、ゆっくりまた歩を進めればいいのです。なにしろパレードは見られることにこそ、その意義があるのですから。
text & photo by きもだこよし, edit by 木谷宗義
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