2018年4月19日(木)から29日にかけてインドネシアのジャカルタで開催された「IIMS(インドネシア・インターナショナル・モーターショー)2018」にて、スズキ・エルティガの2代目モデルが突如発表されました。
モーターショーでの新型車の発表(ワールドプレミア)は、メーカーから事前に情報公開されたり情報筋から漏れ伝わってきたりするものですが、今回はうまく情報統制がなされていたようです。筆者は前日に現地のジャーナリストにこの話を聞き、驚きました。
前日は黒幕とガードマンでがっちりガードされていた。幕の隙間もみっちり縫われて指も入らずという徹底ぶり
スズキ「エルティガ」とはどんなクルマ?
新型エルティガのお話をする前に、まずはエルティガ(ERTIGA)が、どんなクルマなのかをご紹介いたします。
スズキ・エルティガは、2010年2月にインドのデリーで開催されたモーターショーで、「コンセプトrIII」というコンセプトカーとして発表され、2012年に同じくインドで初代の量産モデルが発表・発売された3列シート7人乗りMPV。インドネシアとインドで生産され、2017年までにインドネシアで24万3000台を販売、67万6000台が輸出されているスズキの重要海外戦略モデルです。両国合わせてアジア、中南米、アフリカの70カ国に輸出されています。
新型はどう変わった?
デザイン面では、エクステリアもインテリアもダイナミックにされ、家族よりもお金を払うお父さんがまず欲しくなるようにしたそうです。しかし、機能面でも抜かりはありません。
笠原開発主査によるプレゼン。ダイナミックなデザインを強調
2列目まで設けられた電源ソケットや3列それぞれに設けられたペットボトルが入るポケットは、水とスマートフォンが欠かせない家族にも嬉しい装備。旧型比130mm延ばされた全長によって得られた3列目の広い足下と、長いラゲッジスペースを実現しています。
これはカットモデルだが、3列目までの居住性がわかる。日本でも売れそうでは?
インドネシアでは、最近日本でも見かけるようになった飲料水のディスペンサーが全家庭に普及していて、このタンクが17リットルとかなり大きいもの。新型では、3列目シートを使用した状態でも、このタンクが載せられるようになったのだそうです。この国はひと家族の人数が多く、日本ではあまり使われない3列目の使用率も高いので、このような要望があったのだと言います。
走りについては、旧型比プラス100ccのゆとりのエンジンと約50kgの軽量化で力強くなりました。新型のスペックは次の通りです。
■全長×全幅×全高:4,395mm×1,735mm×1,690mm
■ホールベース:2,740mm
■エンジン:k15B型1,500cc、DOHC、VVT、104.7ps/138Nm、EURO4
■トランスミッション:5MT/4AT
インテリアも流れるようなラインで。今風のブルートゥースコネクション付き6.8インチタッチスクリーンを装備
販売価格はまだ発表されていませんが、生産も予約受注も発表同日に始まっていることもあり、5月中旬にはアナウンスされるそうです。旧型の価格が1億9000万ルピア~2億3000万ルピア(約150万円~180万円)なので、おそらくそれから大きく変わることがないように推測されます。販売台数は、旧型比60%増の5000台と意欲的な設定です。
運転席・助手席エアバッグ、ABS、ESP、全席シートベルト、ISOFIXチャイルドシートアンカーもちゃんと装備されているので、そのまま日本でも売れるのではないかと思います。ただ、赤道直下常夏のインドネシア製にはヒーターが装備されていないので、それだけは追加が必要です。試しに輸入してみたらおもしろいと思うのですが、いかがでしょうか。
3列シート7人乗り、日本車天国のインドネシア
「販売台数の30%を占める重要なMPV市場で……」と、スズキの発表にあったのですが、これには「?」と思いました。「そんな少ないか?」と。なぜなら、街中で見る3列シート7人乗りのクルマはもっと多いから。
実はこれ、集計のマジックで、GAIKINDO(インドネシア自動車工業会)のMPVのカテゴリーに分類されるのがこれだけだからなのです。これ以外にSUVとLCGC(ローコストグリーンカー)というカテゴリーがあるのですが、そこにも3列シート7人乗りのモデルがいくつもがあるので、それらを合わせると80%弱が3列シート7人乗りということになります。
路上はほとんどが3列シート7人乗りMPV、SUV、LCGCで占められる
ちなみに、3列シート7人乗りのクルマを生産販売しているメーカーは、つい最近まで日本メーカーしかなかったこともあり、インドネシアでの日本車の生産シェアはなんと96%。日本より日本車シェアが高い国、それがインドネシアです。インドネシアを初めて訪れる日本人はだいたい、「日本車がこんなに走ってる! しかも見たことないクルマばかり!!」と驚きます。
トヨタやホンダのエンブレムが見えるが、日本では見かけないクルマが多い
さて、そんな日本車天国に昨年一社、今年一社が中国から進出してきました。これまで何度となく進出しては撤退を繰り返してきた中国メーカー、今のところは“死して屍拾うものなし”の屍累々という状態ですが、このたび屍を乗り越えてやってきた二社はどうも先輩たちに多くを学んだような気配がします。1976年に進出したスズキをはじめ、ほぼ同時期に進出し、歴史もあるトヨタ・ダイハツ連合、三菱、ホンダという日本メーカーがどう立ち向かうか? それはまた別の機会にご紹介いたしましょう。
Text & photo by 大田中秀一,edit by 木谷宗義
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