ゴールデンウィーク最初の日曜日、栃木県鹿沼市の「出会いの森総合公園」にて「マロニエ・オートストーリー『春』ミーティング2018」が開催されました。このイベントは、クルマを末永く楽しめる環境づくりと自動車文化を通じての社会貢献を目指して企画された組織、「マロニエ・オートストーリー・フォーラム」が主催するもの。同組織は、他にもクルマとコラボレーションした各種のイベントや、地域の観光資源や名産を紹介していく活動を行っています。
「マロニエ・オートストーリー・ミーティング」は2009年11月より開催。以来、春と秋に年2回ずつ、これまでに16回の開催を数えます。「春2018」は、春イベントとして8回目。今回は開催初期からエントリーをされている東京在住のシトロエンCXオーナー、F氏のクルマに同乗して、エントラントの視点もまじえてのお話をしていきたいと思います。
2台のシトロエンCX。F氏のプレステージは右のシルバーのクルマ
イベントの参加資格は、1984年までに生産が開始された国内外の4輪車両(公道走行が可能なこと)および主催者が認めた車両で、参加台数はおよそ100台。ラリー形式の公道走行を行うのが特徴で、休憩をはさみながら新緑の栃木の街並みや山間部を走り抜けます。
ランチア・アウレリアB20。1950年代のイタリア車
もうひとつの特徴は、参加者がドライバーとコ・ドライバー(あえてそう書きます)のみではなく、同行者の参加もOKということ。一般的なラリーイベントと同じように、コ・ドライバーがコマ地図と呼ばれる案内図に沿ってドライバーに指示を行い、ゴールを目指すのですが、後ろに同行者が乗っていても問題はありません。ときに、その街並みや景色に足を止め、クルマとともに写真に収めるなど、のんびりとしたドライブができる走行イベントなのです。9:00より主催者の開催挨拶が終わると、順次車両がスタートしていきます。
先頭に立つは戦前の英国車、リー・フランシス
リー・フランシスは1900年代初頭から自動車生産をしていたイギリスのメーカー
の日のスタートで先頭に立ったのは「リー・フランシス」という戦前の英国車。なんと、20代の若いオーナーがドライブしていました。こうした頼もしい若手が現れるのは、喜ばしいことです。それにしてもこの若さで戦前車に手を出すとは末恐ろしい! 「スタート」の掛け声とともに順次走り出していきます。
ダットサン・フェアレディとフォルクスワーゲン・カルマンギア
ハコスカこと日産・スカイラインGT-R
筆者もF氏のシトロエンCXに同乗……のつもりが、なんとスタートドライバーを務めることになりました。同行者がステアリングを握れる自由度の高さも、このイベントの魅力です。しかもこのラリー、ラリーとは言うものの途中にチェックポイントは特になく、途中にある古峰神社の駐車場が休憩地点としてあるのみ。コースも毎回、ほとんど変更がないため、ベテランになるとほとんどコマ地図を必要としない部分もあります。
参加されたF氏のシトロエンCXは、ロングボディの「プレステージ」と呼ばれる仕様。ホイールベースの長さは、抜群の安定性を誇りますが、だからといって取り回しに不便はありません。その柔らかで掛け心地のいいシートとあいまって、“ハイドロシトロエン”を十分に楽しませてくれるものでした。古峰神社にてコーヒー休憩(移動販売のお店が待機している)を取り、帰路に着きます。
参加者にはコーヒーチケットが配られ休憩所で一息つけるようになっていた
メルセデス・ベンツ190Eエボリューション
ボルボPV544
走行後はバーベキュー。こちらがメインイベントかも?
スタート地点である「出会いの森」に到着すると、昼食のバーベキューが待っています。このバーベキューこそが、このイベントのメインと言えるかもしれません。なぜなら、もともとこの「ふれあいの森総合公園」で別のイベントが開催されていたときに、「ここで何かできないか?」という話になり、このバーベキューが始まったからです。名車の数々を愛でながらのバーベキューは格別。しかし、特筆すべきはその量です。参加者のおなかを十分に満たして余るほどの量が用意されていました。
このイベントに閉会式といったものは、特に設けられてはいません。15:30が撤収目安としてあるだけで、流れ解散的に1台また1台と徐々に帰路に着いていきます。それはあえて時間を拘束しないことにより、地元を観光してもらうという「クルマを通じての社会貢献」に通じるからかもしれません。帰路において記憶に残った場所を今一度訪れてもらう。あるいはそうしたお土産を手にしてもらう。それこそがクルマという“個人単位の移動”が可能な乗り物の役割というものでしょう。
今やどんな街でも、写真や映像ならインターネットで簡単に見られます。お土産だってボタンひとつで早ければ翌日に届く時代です。ですが、その場所の空気や気持ちは、現地に行かなければ決して手に入れることはできなでしょう。マロニエ・オートストーリーは、文字通りそうした物語を手にできるイベントだと感じるのです。text & photo by きもだこよし, edit by 木谷宗義
▼きもだこよしの記事
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