【豆知識】スポーツカーの象徴だった「リトラクタブル・ヘッドライト」を採用した名車たち

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かつて、スポーツカーになくてはならないアイテムだった「リトラクタブル・ヘッドライト」。1970年代のスーパーカーブームをきっかけに「憧れの装備」となり、1990年代初頭までスポーツカーを象徴するヘッドライトの形となりました。

点灯時のみヘッドライトを露出させるリトラクタブル・ヘッドライトは、消灯時に格納しておけるため、前面投影面積が減り空気抵抗の低減に寄与。また、デザインの自由度も比較的高めることができました。その結果、低いノーズの個性的なフロントマスクを持つクルマがたくさん生まれました。

今回は、リトラクタブル・ヘッドライトを採用した名車をいくつか紹介します。

目次

不朽の名車、トヨタ・2000GT

トヨタ・2000GTは、1965年の東京モーターショーで発表された、当時のトヨタのフラッグシップスポーツカー。当時最新の技術が注ぎ込まれて、1967年に発売されました。

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エンジンは、バイク用エンジンの製作を得意とするヤマハ発動機と共同開発されたもの。その強力なエンジンのおかげもあって、最高速度は220km/hを記録しました。今から50年も前のクルマであることを考えると、驚異的な速度だったことがわかります。また、数々のレースで活躍し、優勝や名勝負を繰り広げました。

どこかヨーロッパのスーパーカーを思わせるスタイリングも、2000GTの大きな魅力。特に流れるようなラインのフロントマスクは、リトラクタブルあってこそのものと言えるでしょう。

世界唯一のロータリースポーツ、マツダ・RX-7

1978年に登場した、マツダ・RX-7の初代モデル(SA22型、サバンナRX-7)も、リトラクタブル・ヘッドライトならではのデザインを持つスポーツカーのひとつ。軽量・コンパクトなエンジンと相まって、より低くてスポーツカーらしいデザインが特徴的です。

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マツダは世界で唯一、ロータリーエンジンの開発を続けたメーカーで、RX-7もロータリーエンジンを搭載。2代目である(FC型、サバンナRX-7)、3代目(FD型、アンフィニ・RX-7)と進化を続け、マツダを象徴するスポーツカーのひとつとなっていきます。FC型にもFD型にもリトラクタブル・ヘッドライトは採用され、ロー&ワイドな独特のデザインが継承されていました。

国産オープンカーの代表格、マツダ・ロードスター

RX-7とともにマツダの顔として大ヒットしたロードスターの初代モデル、ユーノス・ロードスター(NA型)も、リトラクタブル・ヘッドライトによる個性的なスタイリングを持ったモデルだと言えるでしょう。

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1989年に登場されるやいなや、2シーターでオープントップ、そしてコンパクトでFRレイアウトの採用というユニークなコンセプトが日本だけではなく、世界にも受け入れられ、BMW・Z3やMG-Fといったクルマが生まれるきっかけを作りました。

以後、モデルチェンジを繰り返しNB型、NC型、ND型へと発展していくロードスターですが、リトラクタブル・ヘッドライトが採用されたのは初代のNA型だけ。小ぶりでどこか可愛い顔つきをしたNA型が、今でも多くの人に愛されているのは、ご存知の通りです。

本格的ミッドシップスポーツカー、トヨタ・MR2

1983年の東京モーターショーで発表されたSV-3をベースに1984年に市販化されたのが、トヨタ・MR2(AW11型)です。

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特徴は、1.6Lの直列4気筒エンジンをミッドシップに搭載し、後輪を駆動するMRレイアウトを採用していたこと。コンパクトかつ軽量で運動性能が高く、本格的にドライビングテクニックを磨きたいという人にももってこいのクルマで、気軽に付き合える本格スポーツカーとして人気を博しました。1984~1985年の日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞しています。

ジウジアーロがデザインしたいすゞ・ピアッツァ

1981年に登場したピアッツァは、「いすゞ」のスペシャリティカー。今は日本を代表するトラックメーカーですが、その昔は乗用車も作っていたのです。

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ピアッツァをデザインしたのは、初代フォルクスワーゲン・ゴルフや映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で有名なデロリアンなどを手がけた、ジョルジェット・ジウジアーロ氏。ピアッツァは、格納時にもヘッドライトが半分見えるユニークなリトラクタブル・ヘッドライトを採用し、鋭い眼光を感じさせてくれます。

マッチョなスタイリングの4WDスポーツ、三菱・GTO

スタリオンの後継として、マッチョで大柄なボディに3L 280psのツインターボエンジンを搭載し、4WDを組み合わせて1990年に登場したスポーツカーが、三菱・GTOです。「スポーツは、ライバルがいるから。面白い」「あなたのスポーツは、面白いですか?」のキャッチコピーも当時話題になりました。

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北米を意識して、高速道路でも余裕のあるエンジンパワーとトルク(43.5kgm)にセッティングされたエンジンは、4WDとも相まって約1700kgと決して軽くはない巨体を強力に加速させます。デザインは力強さを象徴していますが、前期型だけに用いられたリトラクタブルは、より精悍で力強い姿になっています。

1990年代に入ると、リトラクタブル・ヘッドライトは複雑な機構によるコストと重量増、寒冷地などでの作動の不確実さ、対人事故での危険性が指摘され徐々に姿を消し、国内は2002年の3代目RX-7の生産終了、世界では2005年のシボレー・コルベットのマイナーチェンジをもって、市場から姿を消してしまいました。

しかし、リトラクタブルがもたらすデザインと機能性、そして何よりライトが開くという楽しいギミックが、多くのクルマファンの心を今でもとらえ続けています。

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text by 阿部哲也+Bucket
写真提供:トヨタ博物館、マツダ、三菱自動車

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