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【豆知識】パジェロにプラド……1980年代後半~1990年代前半のクロカン四駆ブームを盛り上げたクルマたち


今、世界中で巻き起こっているSUVブーム。その火付け役とされているのが2002年に登場した「ポルシェ カイエン」です。カイエンは、スポーツカーのような走りとプレミアムな内外装を備えて、それまでオフロードカーの要素が強かったSUVというジャンルに革命をもたらしました。しかし、それを遡ること約10年。SUVはクロスカントリー4WD(略してクロカン四駆)と呼ばれ、日本でひとつのブームとなっていたのです。

クロカン四駆ブームを支えた代表モデル

クロカン四駆ブームが巻き起こったのは、1980年代後半~1990年代前半にかけて。1980年代の前半に「トヨタ ランドクルーザー60」や「いすゞ ビッグホーン」、「三菱 パジェロ」といったモデルが登場したことに端を発します。

オフロード4WDのシャシーにステーションワゴンのようなボディを持ったこれらのモデルは「オフロード4WD=ジープ」のイメージを払拭し、RV(レジャーヴィークル)として注目されるように。「トヨタ マークⅡ」を筆頭としたハイソカーや、「ホンダ プレリュード」を始めとしたデートカーとは違う潮流を生み出し、都会でクロカン四駆に乗るスタイルがブームとなりました。

ここでクロカン四駆ブームの立役者となった代表的なモデルを紹介しましょう。

トヨタ ランドクルーザー(80系)

トヨタ ランドクルーザー(1989年)

1946年に誕生したトヨタのオフロード4WDの代表格、ランドクルーザー。中でも60系の後継モデルとして1989年に登場した80系は、当時のフラッグシップ4WDとして憧れの的となったモデルです。ガソリン/ディーゼルとも、エンジンは6気筒。「クラウン」や「マークⅡ」に匹敵する質感のインテリアで、クロカン四駆に高級の概念をもたらしました。その後、80系は100系、そして現在の200系へと進化。弟分のプラドもヒットしました。

トヨタ ランドクルーザープラド

三菱 パジェロ

三菱 パジェロ(1991年)

クロカン四駆ブームを牽引したのは、1982年に登場したパジェロです。2ドアのみで登場したのち、4ドアのロングボディが追加されると、じわじわとヒットしブームに導きます。モデル後半には、本革シートを装備する上級グレードを設定するなど、クロカン四駆の高級化に拍車をかけました。1991年にフルモデルチェンジが行われると、人気は頂点に。カローラを抜き去り、月間販売台数(登録車)で1位となるなど、人気を不動のものとしました。ダカールラリー(当時のパリ・ダカールラリー)での活躍も人気を支えた要因のひとつ。

日産 テラノ

日産 テラノ(1986年)

「ダットサン トラック」をベースに、スタイリッシュなワゴンボディを与えられて登場したのがテラノは、カリフォルニアにある北米日産のデザインスタジオ「NDI」によるスタイリッシュなデザインが特徴。2.7Lのディーゼルターボと3.0L V6ガソリンエンジンを搭載し、2ドアが登場したのち4ドアを追加。マイナーチェンジでワイドフェンダーモデルを追加するなど、流行に追随しながらも独特の存在感を放っていました。現在、日本で同名のモデルは存在しませんが、海外では「パスファインダー」の名で、その系譜が受け継がれています。

いすゞ ビッグホーン

いすゞ ビッグホーン(※写真はホンダ ホライゾン 1996年)

パジェロより少し早い1981年に登場したビッグホーンは、クロカン四駆の先駆け的なモデルです。当初は「ロデオ ビッグホーン」の名で販売されました。欧州メーカーとの提携による「イルムシャー」や「スペシャルエディション・バイ・ロータス」の設定がユニーク。1991年にフルモデルチェンジを実施し、国産クロカン四駆で初めて200馬力を超える「イルムシャーRS」を追加するなど意欲的な展開を見せましたが、いすゞが乗用車事業から撤退したころから、2002年にその歴史に幕を閉じました。意外なところでは、スバルに同じビッグホーンの名で、ホンダに「ホライゾン」の名でOEM供給していたことも。※写真はホンダ ホライゾン

ミニバンの台頭などによるブームは終焉へ

クロカン四駆ブームは1990年代前半にピークとなり、1991年にフルモデルチェンジで2代目となったパジェロが月間新車販売台数(登録車)でナンバーワンを記録するほどに。当時の人気ぶりが伺えます。バブル崩壊直後で、家族と過ごす時間が増えたお父さんたちが、週末のレジャーを楽しむためにクロカン四駆を買い求めたこともあったようです。

しかし、大きく重いボディを持つクロカン四駆は、取り回しや維持費などの面でのデメリットも。また、「ホンダ オデッセイ(1994年)」や「ホンダ ステップワゴン(1996年)」といったミニバンの台頭などもあり、1990年代後半になるとブームは下火になっていきました。

ホンダ オデッセイ(1994年)

およそ10年でブームの隆盛と衰退を迎えたクロカン四駆。しかし、さらに10年の月日が経ってSUVブームを迎えたことは興味深いですね。続々と新しいSUVモデルが誕生していますが、果たしてこの流れはいつまで続くのでしょうか?

text by 木谷宗義
photo credit:トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車工業

▼クロカンブームの立役者、三菱パジェロ
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▼ソアラにプレリュード…1980年代の若者が憧れた「デートカー」
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▼エポックカー図鑑 Vol.09 レガシィグランドワゴン
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