「ランフラットタイヤ」を採用するメーカーが増えてきました。ランフラットタイヤとは、「空気圧がゼロになっても、所定のスピードで一定距離を走行できるタイヤ」のこと。パンクしてもある程度ならそのまま走れるタイヤなのです。
80km/hで80km走れる
走行中にパンクやバーストが発生すると、ハンドルを取られたり操縦できなくなったりして危険です。また、その場でタイヤの修理や交換ができるとも限りません。そこで、空気圧がゼロになっても一定の距離を走行することができるランフラットタイヤが開発されました。
ランフラットタイヤには、「サイドウォール補強型」「中子型」の大きく2種類がありますが、乗用車用タイヤに用いられるのは、ほとんどがサイドウォール補強型と呼ばれるタイプ。これは、タイヤのサイドウォール(横の部分)を補強し、空気圧が低下してもタイヤがたわまないようにしたものです。
BMWが公開しているこちらの動画を見るとわかりやすいでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=s2y2fC7q9p0&t=1s
なおランフラットタイヤは、規定の試験条件下で空気圧ゼロ時に「速度80km/hで80kmの距離」を走れることが定められています。これ以上の速度や長距離の走行は危険がともなうので、早めの交換が必要です。ちなみに、空気圧ゼロでそのまま走行できてしまうランフラットタイヤは、空気圧低下に気づきづらいもの。そのため、ランフラットタイヤ装着車には、タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)が装備され、空気圧が低下すると警告してくれるようになっています。
ヨーロッパの高性能車を中心に採用が広がる
ランフラットタイヤは、1970年代にダンロップによって開発されていましたが、初めて市販車に搭載されたのは1980年代後半になってから。ブリヂストン製のランフラットタイヤやポルシェ959に搭載されたのが最初です。
世界で初めて採用したのは、1980年代のポルシェ959。しかし、普及が進むのは2000年代に入ってから。BMWが採用したのを皮切りに、ポルシェやメルセデス・ベンツといった、高級車・高性能車を中心に採用例が増えました。日本ではレクサスGSやLSの一部や、日産GT-Rに用いられています。
BMW5シリーズ(2003年)
メリットばかりではない?
空気圧ゼロでも一定条件下のもと走行ができることは、ランフラットタイヤの最大のメリットですが、一方で価格が高いことやサイドウォールを補強することから乗り心地に影響を与えてしまうといったデメリットもあります。コンパクトカーや低価格車にランフラットタイヤが装着されないのはそのためでしょう。たとえばブリヂストンでは、16インチ以上のサイズしかラインナップしていません。また、ランフラットタイヤを装着するホイールも、専用設計である必要があります。
BMWやMINI、メルセデス・ベンツにお乗りの方は、ご自身のクルマのタイヤに注目してみてください。もしかしたらランフラットタイヤかもしれません。
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text by 木谷宗義/Bucket
画像提供:ビー・エム・ダブリュー