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【片岡英明さんから出題!】世界初のリトラクタブル・ヘッドライトを採用した量産乗用車は?

11月27日(日)に開催される第4回「くるまマイスター検定」。過去問以外にどんな新しい問題が出るんだろう?と気になっている皆さんへ、くる検応援団の方々から毎週予想問題をいただくこととなりました!

第14回は、片岡英明さんからの出題です!

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ヘッドライトを使わないときは格納しているのがリトラクタブル・ヘッドライトです。これを世界で初めて採用した乗用車は、どこの国のなんというクルマでしょうか?ト
  • ①日本 - トヨタ 2000GT
  • ②日本 - マツダ RX-7
  • ③イギリス - ロータス エラン
  • ④アメリカ - コード モデル810/812

解答:④アメリカ - コード モデル810/812

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世界で最初に格納式のヘッドライトを採用した量産車は、アメリカから送り出されました。発売したのは、エレット・ロバン・コード率いる「コード自動車」です。アメリカの自動車史に燦然と輝く立志伝中の人物であるコードは、若い頃から敏腕実業家として名を知られました。1924年、経営不振に陥っていたオーバーン社のゼネラルマネージャーに就任して経営権を掌握し、その2年後には会社を買収します。コードが32歳のときです。オーバーン社の経営立て直しを図ったコードは、同じ1926年に倒産したデューセンバーグも傘下に収めてコード帝国を築き上げました。

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コードは買収すると高級路線への転換を図り、デザインにも強いこだわりを見せます。オーバーンの乗用車にコード社製の上質な直列8気筒エンジンを積み、エクステリアもスタイリッシュに生まれ変わらせました。V型12気筒エンジン搭載車も登場させます。この設計哲学は、自らの名を冠したコード社の作品でも変わることがありません。その筆頭に挙げられるのがコード810/812です。

1929年夏に発表して話題をまいたコードL-29と同じように、フロントエンジン、フロントドライブの前輪駆動を採用し、エクステリアも個性溢れるフォルムで登場しました。デザインを担当したのは、パッカードやゼネラルモーターズ、スタッツでデザイナーとしての腕を磨き、コードに見出された新進気鋭のゴードン・M・ビューリグです。25歳でオーバーンとデューセンバーグのチーフデザイナーに抜擢され、才能を開花させました。

コード810は、1935年秋のニューヨークオートショーとシカゴオートショーで一般公開され、1936年モデルとして発売されます。コード812は、その1937年モデルです。コード810/812は、棺おけ型の個性的なノーズデザインとともに格納式のリトラクタブル・ヘッドライトを特徴としています。独立したサイクルフェンダーの前方部分にヘッドライトを収納し、使うときは手動レバーを操作してヘッドライトを上昇させました。セダンのほかコンバーチブルも造られています。

パワーユニットはライトカミング製のV型8気筒で、スーパーチャージャー仕様も用意されていました。コード810/812はカーデザイン史に深く刻まれる意欲作でした。が、高品質にこだわったために手作業が多く、生産性が悪く、利益率も低かったようです。1937年、コード帝国は崩壊し、コード812も歴史の中に埋もれてしまいます。

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リトラクタブル・ヘッドライトも一部の乗用車が採用しただけで終わりました。が、戦後の1960年代になってアメリカで再燃し、昇降も電動式となります。1963年にはロータスエランがリトラクタブル・ヘッドライトを採用しました。これ以降、スポーツカーのヘッドライトの代名詞となっています。日本で最初に採用したのは、1967年5月に登場したトヨタ2000GTです。個性あふれるコード812は、トヨタ博物館や日本自動車博物館で観ることができます。

text & photo by 片岡英明
画像提供(1枚目のみ):日産自動車

くるまマイスター検定公式応援団紹介

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自動車ジャーナリスト: 片岡英明さん( Hideaki Kataoka )

今につながる自動車が登場して130年になります。

自動車は人類の叡智の塊です。近代史の発展に大きな役割を果たし、これからも発展が期待されています。

21世紀、自動車はますます存在感を増し、活躍の場を広げていくことでしょう。メカニズムや歴史、文化などに関する知識が増えれば、自動車はさらに楽しくなります。

この検定を通して、知識を磨くとともに人間性にも磨きをかけてほしいと思います。