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【片岡英明さんから出題!】「悪魔の爪痕」の正式名称は何でしょう?

10月31日(月)まで申込受付中の第4回「くるまマイスター検定」。過去問以外にどんな新しい問題が出るんだろう?と気になっている皆さんへ、くる検応援団の方々から毎週予想問題をいただくこととなりました!

第6回は、片岡英明さんからの出題です!

くるまマイスター検定公式応援団 片岡英明さんからの問題

011964年東京モーターショーにて 自動車工業会撮影

問題

ロータリーエンジンは理想的なエンジンと言われましたが、実用化するためには多くの難問を解決する必要がありました。最大の難関だったのが、「悪魔の爪痕」と呼ばれるエンジンの内壁面のキズです。このトラブルが耐久性を大きく損なっていました。
さて、障害となった「悪魔の爪痕」の正式名称は何でしょうか?

1.サタンネイルマーク
2.チャターマーク
3.デビルスクラッチ
4.クロスホロー

ロータリーエンジン開発の歴史は古く、16世紀後半にはイタリアでロータリーピストン式の揚水ポンプが考案されている。蒸気機関の発明で知られるイギリスのジェームス・ワットも18世紀後半にロータリーエンジンに挑戦した。それ以降も気密性を保持することが難しかったため、実用化されていない。

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今につながるロータリーエンジンが発明されるのは第二次世界大戦の後である。西ドイツのフェリックス・ヴァンケル博士は、繭型をしたケースの中を三角形のおむすび型をしたローターが回転するロータリーエンジンのアイデアと理論を発表した。そして1951年(昭和26年)に、このアイデアをオートバイメーカーのNSU社(現在はアウディグループの一員)に持ち込み、ここから本格的な開発が始まった。そして1959年12月9日、NSU社は「革新的なロータリーエンジンの共同開発に成功」と大々的に発表を行ったのである。

031965年東京モーターショーにて 自動車工業会撮影

その後、世界中の有力企業に技術提携を募り、日本では東洋工業(現在のマツダ)やヤンマー・ディーゼルなどが提携を結んだ。ロータリーエンジンは驚くほどスムーズで、動力性能も一般のレシプロエンジンを上回る。だが、実用化を阻んだのは耐久信頼性だった。まゆ型をしたローターハウジングの中で回る、三角形のローターの頂点3カ所に取り付けたアペックスシールが、内壁面にキズを作ってしまうのである。キズがつくと激しい振動は出るし、出力も大幅に低下してしまう。また、白煙を噴き出すこともある。

波状の異常摩耗によって燃焼室の気密が保てなくなるのがエンジン不調に陥ってしまった原因だ。この波状摩耗を「チャターマーク」と呼んでいる。擦りキズの発生にはアペックスシールの固有振動数が影響を与えていることが分かった。そこで共振を減らすため、シールに多くのアイデアを盛り込んでいる。そのひとつが、特殊加工を施した金属シールの先端に、縦穴と横穴をあけたクロスホロー・アペックスシールの採用である。

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アペックスシールの材料も多くのものをテストした。NSU社は金属製のアペックスシールだったが、東洋工業は日本カーボン株式会社と共同で炭素素材のカーボンに特殊処理を施したアペックスシールを開発している。これを最初に採用したのは、1967年5月に発表したコスモスポーツの10A型ロータリーエンジンだ。ちなみに世界初のロータリーエンジン搭載車はNSU社のヴァンケルスパイダーで、1964年に誕生した。搭載するのは1ローターのロータリーエンジンである。世界初の2ローター・ロータリーエンジン搭載量産車となるのは、東洋工業のコスモスポーツだ。

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text by 片岡英明
写真提供:マツダ株式会社、自動車工業会

いかがでしたでしょうか?

次週は、竹岡圭さんからの出題です!

くるまマイスター検定公式応援団紹介

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自動車ジャーナリスト: 片岡英明さん( Hideaki Kataoka )

 

今につながる自動車が登場して130年になります。

自動車は人類の叡智の塊です。近代史の発展に大きな役割を果たし、これからも発展が期待されています。

 

21世紀、自動車はますます存在感を増し、活躍の場を広げていくことでしょう。メカニズムや歴史、文化などに関する知識が増えれば、自動車はさらに楽しくなります。

 

この検定を通して、知識を磨くとともに人間性にも磨きをかけてほしいと思います。